top コラム柊サナカのカメラぶらり散歩第9話雨の日は撮影日和。「王子・飛鳥山公園、飛鳥の小径のあじさい」

柊サナカのカメラぶらり散歩

第9話雨の日は撮影日和。「王子・飛鳥山公園、飛鳥の小径のあじさい」

2023/07/18

柊サナカ

写真は雨の日が一番だな、と最近よく思います。雨になると、「よしカメラを」と思うのです。なんでひいらぎは好き好んで雨の日に出かけていくのだろうと思う読者の方もいるかもしれません。わたし、人混みがどうも苦手で、雨の日の静かな街が落ち着きます。

青空は撮れませんが、代わりに濡れた地面や水たまりなどを美しく写せます。緑も雨に濡れて生き生きとしています。夕方になると濡れた路面に明かりが反射するのもいい。

あと、写真撮影に関して、こんなことがありました。写真を撮ってSNSにアップしていたら、いきなり知らない人から「盗撮ですか」と書き込みがあったのです。それはバス内の写真で、掲載したのは、もちろん人の顔の写っていない後ろ姿でした。作家ほど執念深い生き物もそうおらず、一日でだいたい原稿用紙50枚くらいは書くので、原稿用紙50枚分の反論とあてこすりと嫌みを返してやろうかと思いましたが、仕事ならまだしも、趣味の世界で揉めるのは面倒です。それからは、街の写真を撮る時には、人自体が写り込まないように、もっと気を遣ったりするようになりました。ストリートスナップをする人には、なかなかやりにくいご時世になりましたね。

でも雨の日なら――そう、みなさん傘を差しているので、ちょっと構図のアクセントに入ってもらったり、赤い傘の人を見ると撮ったり、遠慮無く撮れます。やっぱり雨の日が好きです。

ところで、王子駅の飛鳥山公園をご存じでしょうか。

徳川吉宗が桜を植え、都内有数の桜の名所として有名です。大きな滑り台のお城があるので、子が小さい時には子連れでよく行っていましたが、最近はあまり行っていませんでした。

どうやら、その飛鳥山公園の「飛鳥の小径」は、あじさいの名所でもあるらしく。どれどれ、とネットで検索して写真を見たら、その「飛鳥の小径」が、もはや道が見えないくらい何重にも人・人・人でごった返しており、（うわっ無理……）とすぐに閉じました。

でも今日は雨です。朝からずっと降り続いています。今日のような日には、あの長蛇の列のような人もいないはずです。雨のあじさいをひとりじめできる……？

カメラは安定のGR Ⅲにしました。35ミリ判換算28mmの広角があじさいの群生にはぴったりのはず。マクロ撮影は花を撮る時にも便利です。もう一台はフィルムカメラにしようかなと思いました。広角がいい、ということで、ベッサLにスーパーワイドヘリアー15mmを付けたものを持っていくことに。

^{持って行った機材はリコーGR Ⅲと最近気に入っているベッサL。スーパーワイドヘリアー15ミリをつけて。}

^{飛鳥山公園名物のアスカルゴ。この脇に飛鳥の小径があります。}

飛鳥の小径は全長約350メートルの一本道、その道に沿うように色とりどり、品種もさまざまなあじさいがびっしりと植わっており、素晴らしい眺めです。

ちょうどあじさいは見頃で満開。道に沿って歩いてみると、さすがに平日、雨の中のあじさいを、傘を差して撮ろうという人はわたし一人で――と思ったら、けっこう同じ事を考えていたカメラ好きがわたしの他にもいて、みなさんそれぞれにいいカメラを持っていました（好きですねえ……）。それでも、場所を譲り合わなければならないほどには混み合わず、お互い邪魔にならない程度にすれ違うくらいで、いい具合にばらけて撮りやすかったです。

^{アジサイが続く飛鳥の小径入口。（GR Ⅲ）}

^{GRは花接写のマクロ撮影が得意です。（GR Ⅲ）}

^{空いていていい感じです。（GR Ⅲ）}

あと驚いたのが、こんな悪天候の日でもポートレート紳士とモデル淑女の組を5組くらい見たこと。確かに雨に濡れたみずみずしいあじさいと、モデルさんの取り合わせは素敵だろうなと思います。雨の中、本格的にライティングする方もいて、（すごいなあ……）と思いました。

それでも、一本道のあじさいをバリエーションをつけてうまく撮るのはけっこう難しく、あじさい単体をGR Ⅲのマクロで、あじさいの道の奥行きを行かして撮る、など構図が2、3パターンに限られてしまって、写真のうまい人なら、あじさいでももっと構図にバリエーションが付けられるのかな、と思いました。望遠の開放でぼかすなどもできたかもしれません。このあじさいに関しては新しい株もどんどん植えているようなので、年々美しさが増すのでは、と思っています。来年は構図を練っておいて、また雨の日を狙っていこうと思います。