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top コラム柊サナカのカメラぶらり散歩第34話 東條會舘 写真研究所 外山リョウスケ「Tempusgraph 拡張する写真の地平」展

柊サナカのカメラぶらり散歩

第34話 東條會舘 写真研究所 外山リョウスケ「Tempusgraph 拡張する写真の地平」展

2025/08/05
柊サナカ

東條會舘 写真研究所入口。看板(照明)が雰囲気ありますよね。

 

みなさんは、東條會舘 写真研究所にいらしたことがありますか。
 

もし、無いなら大変ラッキーです。なぜならあの驚きを、今から体験できるからです。

 

東條會舘 写真研究所外観。中と外との印象がぜんぜんちがうので、みなさまぜひ。

 

わたしがなぜ東條會舘 写真研究所のことを知ったかというと、わたしの知り合いに1937年にお生まれになった写真の大ベテランがいるのですが、その方は、本当に毎日のように美術展や写真展を巡っていて、一日に数カ所はしごすることも。どんな有名な作品でもダメだと思ったら遠慮なくけなすし、わりに辛口で、わたしはその方の投稿をいつも楽しみにしているのです。
 

その方が、東條會舘 写真研究所は面白かったと言い、「のぞいてご覧なさい」とおすすめしていたら、もうそれは行くしかないなと。
 

わたしはけっこうギャラリー巡りをする方なのですが、東條會舘 写真研究所に関しては知りませんでした。たぶん、行った人がみんな「これはぜひ、ネタバレ無しで楽しんでほしい!」と強く願ったからだろうと思います。わたしも個人的にはもう一切ネタバレしたくなく、「これ読んだ全員、とにかくすぐ行くといいですよ!」としか言えないのですが、記事となるとそうもいかないので、しっかりレポートいたします。
 

東條會舘といえば、明治42年創業、113年の伝統を持つ老舗中の老舗写真館で、今もTojo Photo Studioとしても営業を続けています。その写真文化を現代まで繋いできた別館としての建物を、東條會舘 写真研究所(ギャラリー・ラボ)として公開したというわけです。カテゴリーとしてはギャラリーに入るのかもしれませんが、ここにはそれだけではない魅力があります。
 

まずその佇まいがいい。築六十年のビルは、中の様子も当時の雰囲気を残しています。

 

伝統のあるビルなので中はこの通り。古い建築が好きな方はこれだけでも満足しそうですが、お楽しみはまだまだあります。

 

照明などもレトロで素敵。

 

まず最初に、”写真に詳しければ入ることができず、写真に詳しくなければ入れる”という仕掛けがあります。もって回った言い方をしてすみません。でも実際そうなのです。わたしはちなみにその場で動くことができなくなり、とりあえずまごまごしました。さあ、みなさんも試されてください。
 

今回の外山リョウスケ「Tempusgraph 拡張する写真の地平」展では、最初に順路通り、六階の<会場① 流れる光 Tempusgraph 2024ー>まで上がります。
 

ここでは、「あるもの」の中に入ることができます。その試みがあまりにおもしろく、わたしは外になかなか出なかったくらいでした。

 

外山リョウスケ氏使用のカメラ。実は後ろの部分が独特で……疑問に思ったあなたはぜひ「Tempusgraph 拡張する写真の地平」展へ。 

 

驚きはそれだけではありません。わたしは、写真ってどうやっても、そのときの”現在”しか写らないと思っていました。でも、外山リョウスケ氏は思いもよらない方法で未来・現在・過去の光を撮影します。今まで一度も見たことのない写真表現に度肝を抜かれました。
 

ここからは外山リョウスケ氏の作品とともに、写真史を現代から過去に戻っていく試みです。わくわくします。
 

次は一階降りて五階<②光の記憶 写真の隆盛 21世紀ー19世紀後半・③光の定着 科学者の夢 19世紀後半ー18世紀・④変容する光 カメラ・オブスキュラ 16世紀ー11世紀>と、時代を遡ります。
 

こちらは暗室で、わたしは暗室も好きですから、それだけで心惹かれました。外山リョウスケ氏の機材や作品がたくさんあり、ブックはめくることもできます。この東條會舘 写真研究所がなぜ金・土・日しか開館していないのかというと、なんとこの暗室、写真館の暗室としても今も実際に稼働中なのだそうです。それ風のディスプレイでは無い、本物の暗室を観ることができます。

 

実際の暗室の様子もご覧になれます。ここも展示のコース。 

 

写真だけでなく、愛機やメモが置いてあって、写真家の息遣いを感じます。

 

手に取って眺められる仕掛けも。

 

展示と共に、写真の技法もどんどん時を遡っていきます。実験室のような部屋もあり、まさにタイムスリップのよう。

 

外山リョウスケ氏使用のこのカメラ……画角におさまりきらず、わたしが中に丸ごと入れそうなほどに大きいのです。ぜひ実物をご覧になって欲しい。どんな写真が撮れるのかはお楽しみに。 

 

まるで実験室のような室内。

 

一見関係のないような楽器にもつながりが……?

 

今度はB1まで降りて、<⑤直進する光 アリストテレス 紀元前4世紀・⑥倒立する光(景)墨子 紀元前5世紀・⑦始まりの光 ピンホール 0>
 

こちらも驚いてほしいので内容の言及は避けます。いまからいきなり予言めいたことを申し上げますよ。この外山リョウスケ「Tempusgraph 拡張する写真の地平」展をご覧になった方は、必ず、来たる2035年9月2日に、東條會舘 写真研究所のことを思い出すことでしょう。
 

そして<⑧時代の光 タイムライン>の階段を上って一階へ。ここには写真の歴史のタイムラインが展示されていますが、外山リョウスケ氏だけでなく、様々な写真家が書き足していく構成により、いつ来てもこのタイムラインに変化がある展示となっているようです。ゆっくり見ながら地上に戻ると、写真に対しての壮大な時間旅行をしたようでもあり、あまりに心が動いたので、受付で写真集「導光 花は盛りに(外山亮介著)」もすぐさま購入しました。

 

<⑧時代の光 タイムライン>どんな言葉が書かれているかぜひ現地でお確かめを。 

 

写真集「導光 花は盛りに(外山亮介著)」こちらもおすすめです。

 

この「導光 花は盛りに」の写真集、被写体となった若き職人たちの写真がすばらしいだけでなく、すぐれた旅行記でもあり、自分も写真家になって、取材の追体験をしているようでした。読み物としても大変面白く、外山リョウスケ「Tempusgraph 拡張する写真の地平」展とあわせて、こちらもぜひおすすめします。展示は9月15日までです。ちなみに解説を聞きながら鑑賞すると、面白さも満足度も数倍になります。入場は無料。なんと日本カメラ博物館とは徒歩でいける範囲の距離、両方あわせてぜひ!
 

大ボリューム!

 

暗室体験やワークショップも。実は、面白いところはあえて書けなかったので、東條會舘 写真研究所、写真好きは全員行ってみてほしい。

 

「Tempusgraph_拡張する写真の地平」展

外山リョウスケ(Ryosuke TOYAMA)

会期:2025年7月11日(金)〜9月15日(月祝)

https://www.ryosuketoyama.jp

 

東條會館写真研究所

住所:東京都千代田区麹町1-6-12

時間:金・土・日・祝13:00~19:00

入場料:無料

https://photo-lab.tojo.co.jp/

instagram:https://www.instagram.com/tojo_kaikan_photo_lab/

 

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