top コラム柊サナカのカメラぶらり散歩第5話 トプコンの生まれ故郷と、板橋区立郷土資料館

柊サナカのカメラぶらり散歩

第5話 トプコンの生まれ故郷と、板橋区立郷土資料館

2023/03/21
柊サナカ

板橋区立郷土資料館入り口。

 

カメラにまだそこまではまり込んでいないころ、ニコン大井製作所「101号館」の解体があり、別れを惜しんで、ニコンのコアなファンが集まった、という催しのことを耳にしました。
その時は、いくらカメラのファンだとはいえ、その由来の土地まで見たいものなのかな? と不思議に思っていましたが、今思えば、なぜあのときに行っておかなかったのかと、のたうち回る気分ですね……。

 

世界のカメラ産業史に残る偉大な製作所が、幕を下ろすというその光景、しっかりと見ておきたかったです。なんならドアや階段など触りたかったし、窓からの光景も見ておきたかったです。耐候試験室にも耐寒試験室にも入ってみたかったですし、通い箱を持って廊下も歩いてみたかった。

 

ところで、わたしは先日の「本日のマイカメラ」の記事でも触れたとおり、トプコンのカメラが大好きで、ベセラー・トプコン・スーパーDと、トプコン35-Lを愛用しています。写りがすごいだけではなく、使えば使うほど愛着が出てくる、良いカメラです。そのトプコンの生まれ故郷である板橋。
板橋区郷土資料館ではトプコンの展示もあると知って、これはぜひとも行かなければと思うようになりました。

 

トプコンのホームページによると、1980年7月に、まず35ミリカメラの生産を終了(大型カメラの「トプコンホースマン」のみ製造を継続)、その後1992年にすべてのカメラ事業から撤退した、とあります。

「東京光学機械株式会社」は、東京都板橋区で、新たに「株式会社トプコン」と社名を変え、三次元眼底検査の撮影装置や、精密農業機器、測量などの建設機器等を手がけています。カメラの生産は終了してしまいましたが、わたしたちの暮らしと、トプコンは意外と身近なところにあったんだなあと認識を新たにしました。そういえば、どれもカメラの精密技術や光学技術が生かされた製品ばかりです。これからは眼の検査の時に、トプコンかどうかを気にするようにします。

 

都営三田線の終点、西高島平駅から歩いて12分程度(約1キロ)、もしくはバス停、赤塚八丁目から徒歩10分ほど(約850m)のところに、板橋区立郷土資料館があります。
https://www.city.itabashi.tokyo.jp/kyodoshiryokan/
 

入り口には板橋区由来のカノン砲。

 

地図だけ見てみると、最寄り駅やバス停からずいぶん歩くんだなと、心配になりましたが、郷土資料館の近くには、東京大仏や板橋区立美術館、赤塚城跡、城址の梅林に板橋区立赤塚植物園など、いろいろな施設があり、カメラを持って散策するにはもってこいの場所でした。

 

その板橋区立郷土資料館では、いままでもトプコンに関する展示、「板橋と光学」等が度々開催されていたことは知っていました。会場が郷土資料館だからか、展示の会期が数ヶ月と長く、(これだけ長ければ、後から行こう)と思ってついつい忘れてしまい、今回こそ、と意気込んでの訪問です。

 

期間限定コレクション展として、「トプコン展示室リニューアル記念展 板橋と光学 番外編 東京光学の光学製品」が開催、トプコンのカメラや当時の「写真工業」の記事が展示されています。(会期は2023年1月31日から4月23日まで)

 

展示のトプコン。自分も提げていたので、兄弟と会った感がありました。 

 

わたしはベセラー・トプコン・スーパーDを誇らしげに提げて行きましたが、この郷土資料館、トプコン展示室の他にもさまざまな展示があります。中でも目を引いたのは、館内中庭に古民家「旧田中家住宅」がそのまま公開されていること。

 

この古民家が実にいい。江戸時代後期から明治時代初頭まで実際に使われていたとされる、茅葺き屋根に二つの座敷、土間や納戸の、なんと素敵なこと。実際に、畳敷きの座敷に、靴を脱いで上がることが出来るのもいい。

 

茅葺き、寄棟造りの古民家、旧田中家住宅。江戸時代から何度も改修がくわえられた建物ですが、実際使われていた建物の雰囲気があります

 

茅葺きの屋根には植物が生えていました。

 

中に入れるのは嬉しい。

 

江戸時代の農家の暮らしに思いをはせながら、シャッターを切りまくりました。

古い電灯、かまどに炊事場へ入る光、古びた神棚、やわらかに障子に日が差して、縁側が広がっていて……。実際の生活に使われてきた物が持つ、年月の深みに目を見張ります。
 

資料館ですから、土足禁止などの立て札や注意書きは多いのですが、うまくファインダーから外しながら写真を撮りました。

時代物の創作をなさる方などには、縁側のあたりに座ってみるだけで、良いインスピレーションを得られると思います。

板橋区立郷土資料館は無料なのもありがたいところ。陽気もいいころに、カメラを持ってぜひどうぞ。

 

 

湯たんぽの形って変わらないものですね。

 

 

かまど。

 

囲炉裏。

 

縁側からの眺め。昔も同じようにここで眺めていた人がいたことでしょう。


(すべてGR Ⅲxにて撮影)

 

  • 板橋区立郷土資料館
  • 住所:〒175-0092 板橋区赤塚5-35-25
    電話:03-5998-0081 
  • FAX:03-5998-0083
  • 開館時間:9時30分~17時 (入館は16時30分まで)
    休館日:毎週月曜日(祝祭日の場合は翌日)・年末年始
  • https://www.city.itabashi.tokyo.jp/kyodoshiryokan/

 

 

 

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