top コラム推すぜ!オリンパス最終回 OM-3をチタン外装にして、1994年に復刻されたMF一眼レフ「オリンパスOM-3Ti」

推すぜ!オリンパス

最終回 OM-3をチタン外装にして、1994年に復刻されたMF一眼レフ「オリンパスOM-3Ti」

2024/07/05
赤城耕一

いよいよ本連載「推すぜ!オリンパス」の最終回。最後の機種を紹介することになりました。
 

それはOM-3 Tiでございます。1984年に発売されたOM-3をベースにした復刻的な扱いであります。OM-3は前年に発売されたOM-4から一年後の登場でした。本当はこんなの売りたくなかったんじゃねえのかな。どうなんですかね、当時の商品企画のみなさんに本音をお聞きしたいところであります。
 

このOM-3Tiの発売は1994年であります。元のOM-3はメカニカルカメラでかつ、マルチスポット測光可能という風変わりなカメラでした。内部の構造も似ているのではないでしょうか。

 

本原稿書くので引っ張り出しました。なかなか綺麗なカメラだと思うのですよ。装着レンズはカメラとともに奥から出てきたOMズイコー24mmF2.8です。レンズ前面が銀枠の初期型であります。素晴らしくよく写ります。

 

筆者はOM-4やOM-4Tiのように、絞り優先AEを装備しているからこそ、マルチスポット測光って役立つんじゃねえのか。と思ってましたから、OM-3は正直、変態カメラ扱いでありましたね。
 

メカニカルカメラなんだから、露出が不安なら、ちゃっちゃっと絞りか、シャッタースピードをバラして設定すりゃいいじゃんと思うじゃないですか、フツー。でもまじめなオリンパスはOM-4と同じスポット機能、マルチスポット機能を持たせたという。ごくろうさまです。

 


スポットボタンとか、ハイライト、シャドーボタンとか。メカニカルのマニュアル露出カメラにしては凝りすぎであります。フィルム巻き上げは最後の最後までギクシャクしてましたねえ。残念です。
 

OM-4とOM-3は外観的にはセルフタイマーあるなしでわかります。漢はセルフタイマーなど軟弱なものは使わないから装備していません。あとTTL自動調光もできません。漢はスピードライトの調光をカメラ任せになどしないからであります。セルフタイマーがないって、なかなかカッコいいですよね。カメラ前面に空き地ができて。

 


TTL自動調光撮影を行うには、専用のスピードライトを用意して、ISO感度ダイヤル基部にあるレバーを「TTL AUTO FLASH」

の位置にします。

 

それに真の漢になるとOM-3にバッテリーを入れないで使います。OM-4Tiの紹介の時にも述べましたが、マルチスポットで被写体のあれこれを測光して、演算している間に、被写体はどこかに行ってしまうからですね。さようなら。
 

バッテリーを使う場合はマルチスポットなど、ややこしいことはあきらめて、スポット測光の一眼レフだと割り切ってお使いになったほうがいいんじゃないかと。
 

そういえば筆者が熱烈に尊敬する写真家の柳沢信さんは、自身でOM-3の上部カバーをあけて、マルチスポット機能の配線を切断して、スポット専用機にしたという都市伝説が残っております。実際に柳沢さんにお会いした時におそるおそる、これが事実かをお聞きしたのですが、なんだか笑いながらはぐらかされてしまった記憶があります。
 

OM-3は一時、うちにお越しいただいていたのですが、気づいた時にはいなくなりました。
 

ファインダー内の液晶表示がお亡くなりになったからだと記憶しています。もちろんバッテリーを入れなくても機能するわけですが、筆者の性格をご存知の方はもうおわかりでしょう、カメラはどんなものでも本来動くものが動かないとつまらないのであります。ええ、これは精度とかは求めないのであります。だから故障したOM-3への魅力は急激になくなってしまいました。
 

OM-3は事実上、OLYMPUSの機械式一眼レフの最終モデルとなるはずでしたが、製造終了後に中古市場で注目されることになります。
 

例によって、売れないカメラ、イコール製造台数が少ないカメラは、中古市場で希少種扱いで注目されるからであります。
 

オリンパスは何を勘違いしたのか、この売れないOM-3をベースに、OM-3Tiを作り上げました。ごくろうさまです。
 

OM-3 Tiは名前のとおりOM-4 Tiと同様にチタン外装になりましたので「Ti」ロゴが付けられました。外装の仕上げはガンメタリックみたいな渋い感じであります。これはいいよね。しいていえば、コンタックスS2bのそれに似てます。
 

筆者が非常に感動したのは、OM-3TiにTTL自動調光機能が追加されたことです。機能的にはOM-3には採用されなかったのですが、これは不思議でした。OM-3Tiはマニュアルカメラですから、TTL自動調光時にも撮影者は任意にシャッタースピードを選べるようになったわけです。
 

OM-2からの最大の問題点がOM-3Tiでついに解決されることになったわけですよ。このことに意味を見出したOMユーザーはどのくらいいらしたのでしょうか、正確にはわかるはずもありません。筆者は、ったく、これを採用するまで何年かかったんだよ。っていう印象を持ちました。
 

でもね筆者はOM-3TiのTTL自動調光で、任意のシャッタースピードを選択できるようになったことに対して、感動して『アサヒカメラ』であれこれレビューした記憶があります。とはいえ、『アサヒカメラ』でもOM-3Tiは評価されてなかったなあ。
 


TTL自動調光である証がアクセサリーシューの接点ですね。だからどうしたとか言わないでください。スローシンクロ撮影できるだけでも喜ばしいですね。

 

たしか作例はスローシンクロして撮影しました。当時のズイコークラブ向けに発行していたオリンパスフォトグラフィー誌にもOM-3Tiの紹介を書いたなあ。当時は今より忙しかったのに、筆者も余計なことをしてエラかったよね。それだけ思いがあったというわけですし、OMに対する思いだけは誰にも負けない気概があったのかもしれませんね。

 

とはいえ、本連載で何度も述べておりますが、プロはTTL自動調光など、絶対に使わないのであります。OM-3TiのTTL自動調光の露出精度的な部分については忘れました。
 

おそらく問題はないフツーの精度だったかと。距離情報を応用しているわけでもなく。専用のスピードライトT32とかT20にはTTL自動調光時に単独で光量調整できる機能はありません。OM-3TiにはISO感度ダイヤルのところに、露光補正ダイヤルがあるので、スピードライトの光量調整はこれを使えばいいわけですね。
 

筆者もTTL自動調光はプライベートな撮影で、ほんのお遊びで使うくらいでしたから、すでにOM-3Tiの機能的な発展による感動は薄くなっておりました。
 

それでもね、OMでTTL自動調光でスローシンクロできるっていう事実は、OM-4Tiが出たときのフルシンクロフラッシュ機能なんかより数倍感動しましたけどね。使わないのにね。
 

オリンパスが事実上の復刻モデルにメカニカルのOM-3を選択したということにはこの当時でも驚きでありました。
 

正直、これは商売を捨てた、期待していない感があったからです。OM-3は売れないカメラの代表格みたいなものでしたので。時代はとっくにAF一眼レフ時代でしたし、おまえはライカR6の真似するのかよ?あ?みたいに思ったもん。でも、ライカとはステータスが違いますわ。
 

誰に向けたものかがよくわからないカメラって、今もあるのですが、筆者にとってはOM-3Tiは筆頭格でしたし、今もこれは謎ですね。
 

この当時、たしかオリンパスに話を伺った記憶があるのですが、OM-3Tiを作るにあたり中古市場を調査してOM-3人気を見直したとか、実際にOM-3を中古で入手して分解して分析した、みたいな話が出てきた記憶があるのですが、今だから言いますけど、これ本当なのかなあ。盛ってないよね。
 

自社で製造したカメラって図面とか、製造した実機って数台程度は残してないのか。税金がかかるから捨てちゃうとか?ニコンは全部あるよね。このあたりに温度差を感じるよなあ。

 


OM産みの親、米谷美久さんのサインです。ダイヤモンドペンで削られております。2002年1月18日に取材でお会いしていたようです。筆者もやることがミーハーです。OM-3Tiにサイン書くのは、米谷さんには不本意だったかもしれません。

 

で、OM-3Tiも売れなかったわけです。標準価格は20万円くらいでしたよね、OM-4Tiブラックよりも高かったんじゃなかな。そういえばOM-3Tiのファインダースクリーンは明るい、切れ込みのよいタイプになったんですよね。型番は「2-13」だったかな。

 

OM-4Tiもこれにあわせてスクリーンが取り替えられて販売されるのかなと思ったら、そのままで売られてましたね。こういうところに当時のオリンパスのOM一眼レフ販売のやる気のなさが見て取れますね。筆者なんか、単体でスクリーンを入手して、うちのOM-4TiやOM-4Tiブラックに入れましたもん。
 

当然、現在ではOM-3Tiも希少モデルとして、中古市場でも高価だけど、よほど惚れ込まないかぎり、無理して買うことはありませんよ。
 

同じレンズとフィルム使えば、写りはOM-1と写りは同じですから、正しい写真表現者はOM-1とかOM-1Nを入手し、これからもOMズイコーによって、名作を制作し、その写りについてお互いに熱く語り合おうではありませんか!

関連記事

PCT Members

PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。

特典1「Photo & Culture, Tokyo」最新の更新情報や、ニュースなどをお届けメールマガジンのお届け
特典2書籍、写真グッズなど会員限定の読者プレゼントを実施会員限定プレゼント
今後もさらに充実したサービスを拡充予定! PCT Membersに登録する