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第2回 森山大道も使用した「オリンパスPEN W」

2023/11/23
赤城耕一

うちにあるPEN Wくんです。外装の程度はまずまずです。今日から持って歩いて自慢しようとしたらレンズがまた曇り始めていました。購入時には注意が必要です。すげー曇りやすいんですよ、このタマ。

 

オリンパスPEN Wは、EズイコーW25mmF2.8( 3群5枚構成)を搭載した広角専用機。1964年発売ですが、PEN初号機は28mm F3.5を搭載、前回紹介したPEN Sは30mm F2.8を搭載していますからその焦点距離の差、画角、被写界深度の差は言われるほど大したことないように思います。フォーマットはハーフサイズですから画角は35mm判換算で35mm相当くらいです。だいたいですけどね。定価は1万円だったそうです。当時のPENシリーズの中ではいちばん高いですね。
 

広角には違いありませんが、35mmフルサイズ用のレンズでも焦点距離10とか12mmという超広角レンズが出現しているいまの時代からみると、インパクトが弱いですねえ。強いパースペクティブで相手をねじ伏せてやろうという気持ちが薄いレンズですね。スナップ用としては適していますがフツーです。

 


EズイコーW25mmF2.8です。けっこうよく写ると思いますが、この個体は曇り始めています。泣きたいです。またメンテ出すのかよ。ったく。

 

でもね、専用機って、なんだか惹かれませんか。ブラックボディしかないということもポイント高いですよね。目立たないように考えてあるってちょっと陰湿ですけどね。でもPENシリーズの広角専用機としては後継機もないし、これで行くしかないわけです。
 

PEN Wはいまでもかなり高い価格で取引されているのですが、理由は単純です。性能が高いというわけではなくて、現役時代に売れなかったので、生産数が少なく、いまでは現存数が少ないから珍しく高価なカメラになったというだけであります。
 

基本的にはPEN Sのレンズを取り替えてブラックペイントにしただけですから、そのスペックもどうということはありません。それでも往時でもプロに向けたものみたいな扱いだったと何かに書いてありました。筆者はそんなこと言ってませんので念のため。
 

ただ、とある新聞カメラマンがPEN Wを使ったと実際に話したのを聞いたので、報道畑では使われたのでしょう。正確にウラはとれてないけど。PEN Wで撮影された報道写真の名作ってあるんでしょうかね。
 

外観がキレイなPEN Wって、この30年の間に見たことがないくらいですからそこそこのベテランに使われた個体が多いということかもしれません。現役当時はコレクションしようという奇特な人は少なかったんですかねえ。

 


筆記体の「W」のデザインにシビれますね。そういうことが理由でカメラ買ってはいけません。塗装の質が悪くて泡みたいなのが浮いてます。初期のライカM2のブラックペイントみたいですな。

 

外装がみんなボロいということは、もしかすると使い込まれていたというより、大きな声では言えないけど塗装が粗悪だったのかもしれないですね、それで剥げやすくなってしまったと。塗装の表面をみますと、個体によっては小さく泡立っているようなものを見たことあります。キタネー。こんなカメラ欲しいんですか?
 

しばらく使ったけど、やがて他のカメラに目移りして飽きてしまい、そのまま部屋の隅にぶん投げ、悲しくヤレていったという感じもするのですが、当たってませんか?カメラに愛がないよなあ。
 

フルメカニカル、フルマニュアルで、距離計も内蔵されず、目測であり、メーターも内蔵されていませんから、PEN Sと同様に撮影時には勘を働かせねばなりません。このあたりが不親切でとてもいいですね。
私がミラーレス機のレンズに距離指標がねーじゃねえかよと騒ぐのはPENシリーズを今も使っているからかもしれません。

 


シリアルNO.イカしてませんか。初期のロットなんですかね。どのくらい製造されたかは謎ですが、PENシリーズの中ではハズしたカメラなんだろうなと。

 

35mm判相当35mmの画角は筆者は大好きなんですが、先に述べたように、とりたてて広角というイメージはありませんよね。
 

だから至近距離で撮影するような場合はフォーカシングは慎重にしたいですが、距離計がないわけですから頼れない。だから、レンズのポテンシャルを引き出すために距離指標のあるカメラを別に用意してフォーカシングを行い、その距離をPEN Wのに移し替えたりもします。涙ぐましい努力です。
 

PEN  Wの距離指標の2mと5mが赤色に塗られクリックがあるので、ここに設定して、絞り込んで目測で撮影してねということらしいので潔くいきましょう。なんだか矛盾したことを言ってますが、この種のカメラに細かい設定を考えるのは野暮というものであります。ああ、少しくらいピンボケだからこの写真はいいんだとか言ってみたい。

 


最高速シャッター速度は1/250秒ですね。α9Ⅲは何秒でしたっけ? 2mと5mところが赤数字です。この辺りに設定しておけば、おおよそ写るだろという投げやりな感じが伝わってきます。

 

PEN Wでいつも思い出すのが、『アサヒカメラ』1972年4月号に掲載された森山大道さんの「ニューヨーク・シチー」(タイトル原文のママ・念のため)の作品です。やれやれもう半世紀だぜ。
 

手元にあるはずでしたが、今、この原稿書くために探したけど見つからないです。うちから持って行った人、速やかに返却お願いします。繰り返します。1972年4月号です。「森山大道その映像のナゾ」という大特集でした。特集のアンケートで土門拳が「アレブレは大嫌いです」と発言している問題の号です。
 

そんなことは関係なく例によって、モリヤマのニューヨークはアレブレボケで、なんだか少しダルいような疲れたような街角が、ぼーっとした感じで描写されています。森山さん真骨頂の作品かもしれませんね。でもこの時に森山さんとニューヨークに同行した横尾忠則さんの文章には、「(森山さんは)こちらから誘わないと外に出かけない」みたいなことが書いてあったような記憶があります。手元に実物がないから確かめようがないなー。
 

筆者に言わせると本来はこのズイコー25mmレンズはもっと性能がいいはずなんだけどなあとちょっとだけボヤきたくなりましたけど、世界のモリヤマはレンズ性能を気にするのは引き伸ばし用のレンズだけですので念のため。
 

このズイコー25mmF2.8は実際には線が太めで、しっかりとした描写をします。もう、こんなことを言うことすら野暮な気がしてまいりました(笑)。
 

PEN Wを手の中に包み、ニューヨークの街角で“擦過”する人を 撮影する森山さんを想像すると興味深いものがあります。
 

ええ、でもオリンパスPEN Wを頑張って入手しても、モリヤマダイドーになれる確率はかなり低そうですからヤメた方がいいです。他の道を探しましょう。

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