正式なボディ名はオリンパスOM10 クォーツでしたっけ? 忘れました。平凡な容姿ですが、そんなに悪いデザインでもなく。どこかオリンパスFTLにも似ているような。左にあるセルフタイマーの時のスピーカーの前面の処理が甘いよね。
OM-2の次はOM10であります。1979年発売ですから、New OM-1とNew OM-2と同年の発売年です。
本機はとくに北米向けの低価格普及機として設計されたようです。日本の販売価格は4万円ほどでした。発売は海外が先だったかも。
OM-2は生産効率がいまひとつだったといわれました。つまり組み立てが大変という事らしいです。
OM-2は部品点数が700点と多かったのですが、OM10は400点というふうにアナウンスされていました。あ、筆者が部品を数えたわけではないので、そのまま信用しないでください。でも製造ラインはOM-2のものを流用したとのこと。横走り布幕の乱数パターンが印刷されたシャッター幕も工場で組んでいたはずです。
OM10全体から漂う雰囲気はなんとなくチープですねえ。上部カバーはプラスチック製、底板は真鍮製です。このころのカメラって、こうしたカバーの仕様も共通してますね。全体のデザインはOM-2の良さには及びませんが、そんなに悪くはないと個人的には思います。これは好みです。アクセサリーシューも取り外し式から固定式になりましたが、デザイン処理で、うまく突出をごまかしています。
メインスイッチは、フィルム巻き戻しクランクの基部に移りました。セルフタイマーも電子式になりました。LEDがパカパカ光りますね。スピーカーの溝がデカすぎじゃないですかねえ。
メインスイッチです。フィルム巻き戻しクランクの下部に位置しております。視認性はいいんですが、なんかね、面白くない位置ですね。
フィルム感度ダイヤルはあいかわらずフツーのカメラのシャッターダイヤル位置にありますね。露出補正ダイヤルも兼ねていますが、ものすごく見づらいですね。OM-2と同じデザインにできなかったのかしら。
フィルム感度ダイヤルです。設定範囲が狭いねえ。露出補正ダイヤルを兼用にしているから煩雑ですな。たとえばASA(ISO100)設定で+1に設定したら、白い指標はASA50を指すという、あまりにも当然な表示になるのです。右の指標はBとマニュアルアダプター装着時に動かします。前者はメカニカルシャッターなのかな。
モータードライブは装着できませんが、ワインダー1とか2は装着できます。前者は1コマ撮り、後者は連続撮影可能です。でも巻き上げ動作音がデカすぎてイラつきますから使うのはオススメしません。
ワインダー2を発掘したので装着、連続撮影できます。モータードライブ1は使うことができません。耐久性の問題かな?ワインダーが大好きなキミは見過ごせないですよね。でもねカン高い音でフィルムが巻き上がるのは問題ですね。本体の動作音は静かなのに。
いや最初にクォーツで騒いだのはニコンF3だったか? OM10についたクォーツ名は、裏蓋のデータバック内蔵の時計の意味が由来か。本機でシャッタースピードをクォーツ制御したということはないですよね。
発売年は若干違うようですが、ライバルに当たるカメラにニコンEM、キヤノンAV-1、ミノルタX-7、ヤシカFRIIなどがあります。いずれもマニュアル露出を省略、絞り優先AE専用という仕様です。一眼レフもビギナーに使わせるのだというコンセプトですね。すごい割り切りですよね。
この時代の少し前は、一眼レフはある程度知識がある人のためのカメラだったはずなのですが、AEオンリーの一眼レフが登場してからはサルでも撮れるんじゃないか的な勢いで喧伝しとりましたね。
ファインダー関連は、ファインダースクリーンが交換式ではない以外はOM-2と同じ見え方ですね、倍率もかなり大きいのでよいと思います。
ただしですね、OM10に限らず周辺のマットのシャープネスがいまひとつなのは、この当時のOMに共通していますが、筆者の勝手な考え方としては、カメラの背を低くするためにコンデンサーレンズを省略し、ペンタプリズム下部を凸状にしてごまかしたからではないかと推測しとります、あるいはスクリーンの特性か。でも視度補正レンズを用いて自分の視力に合わせるとかなり改善されます。
で、測光はお得意のダイレクト測光であります。だからAEロックはありませんね。フィルム面を測光して露出に反映させるわけですから。でものすごくヘンなのは、本機はダイレクト測光なのに、スピードライトの制御ができないのです。一度死んでみるか的な勢いの仕様じゃないですかね。
ダイレクト測光のアドバンテージはスピードライト撮影の時に最も有効になったんじゃないかと思うのですが、でもその機能を省略するというのはねえどうなんですかね。いくらこの当時のTTL自動調光の精度が大したことなくても、コストを下げるためとは言ってもね、ヘンですよね。ちなみにダイレクト測光の受光素子SPDは1個になり、内蔵メーター表示用の受光素子のCdsも1個になり、ファインダーの光路に仕込まれています。
ファインダー内は指針表示から赤色LEDに進化しましたので、暗い場所などでは視認性はよいのですが、なんか視野のはじがうるさい感じもしなくはないですね。
おじいさんはね指針表示が好きなんです、暗くてよく見えなくても、フラフラ動いてもね、こちらのほうが目に優しい感じがしますね。
あと、OM10にはかなり変な仕掛けがあります。それが「マニュアルアダプター」と呼ばれる本機専用のアクセサリーの存在であります。
マニュアルアダプター。こんなキャラメルみたいなオプションのダイヤルがきちんと機能するのだから驚きです。ただ、OM-2みたいにファインダー内に定点指標があるわけではないから内蔵メーターは適正露出読み取り式です。頑張ってください。
ボディ左上にイヤホンジャックみたいなアナボコがありますね、ここにマニュアルアダプターを装着すれば、マニュアル露出に切り替えて使うことができます。
これ、米谷さんの仕事ですよね。とにかく取り外し式になるものは、みんな取りハズせるようにせよというのは米谷イズムでありますし、先に紹介した他社機との差別化ができるわけです。一時のことですが、このマニュアルアダプター中古で高価だったことがあります。そうです、装着率があまり高くなかったんでしょうか。
マニュアルアダプターをつけた時の勇士。少しメカメカしくなるよなあ。デザインの根幹は変わりませんので特に許しましょう。これ一度つけたら外さないよね。
個人的には、このマニュアルアダプターの装着方式というか、このやり方は嫌いじゃないですね。でも、一度つけたら外さないんじゃないですかね、外す理由ないもんね、ふつうの人は。邪魔にもならないですし。
最近はマトモに動いているOM10の個体がかなり減少してきたせいか、マニュアルアダプターの相場も下落しましたね。当然です、OM10って登場から45年を経ておりますよ。OM10もOM-2と並んで、よほどの思い入れがある人なら別ですが、購入はおすすめしません。でもね、とても不愉快なのは、OM-1のプリズムが腐食した場合、ドナーとしてOM10が使われて、プリズムだけが移植されるケースがとても多いという話を聞いたことがあります。
当然、プリズムをとられてしまったOM10は不燃ゴミ行きですね。もちろんOM-1は間違いなくOM10よりも長生きをしますので、それは仕方ないと言ってしまえば話はおしまいなのですが、不可逆の改造をすると、バチが当たるんじゃないかと考えるのは、筆者が年寄りだからでしょうか不憫に思います。地球上のどこかにOM10の墓場とかあるかもしれん。
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