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推すぜ!オリンパス

第27回 宣伝のキャッチは「逆光強」! ESPとプログラムAEを同時搭載した「オリンパスOM40」

2024/05/16
赤城耕一

この角度から見ると、おとなしくてけっこういいヤツじゃないかと思うのですが、手にすると加水分解でベタベタしており、拭くのが大変で、疲れてしまいました。減点です。本機は海外仕様で「OMPC」というネーミングになっています。

 

OMの二ケタシリーズをはじめてしまったので時系列とか無視して、1985年に発売されたOM40の話をします。
 

これもまた日本国内では不人気カメラのようです、製造台数もですが、それでも完動品って年々少なくなっている印象です。
 

OM30でフォーカスエイドだの、ゼロインフォーカスだの、専用レンズでのAFだのと、新しい方向を目指したようにみせたOMですが、OM30の次は単純にOM40になりました。

 

プログラムAEポジションがあります。絞り環は最小絞りにセットします。あとは絞り優先AE(AUTOポジション)とマニュアル露出も可能です。デュアルなんとか一眼レフとか言いませんでしたか?

 

そのセールスポイントは多分割測光の一種、ESP(エレクトロセレクティブパターン)測光とプログラムAEの同時搭載ですね。
 

本連載ではまだ紹介していないのですが、1983年にOM-4というマルチスポット機が年に登場したわけです。詳しくは本連載でOM-4を取り上げる時に述べますが、ファインダーの画面内の被写体の何点かを任意にスポット測光(最大8点)して、演算すれば、難しい光線条件でも適正露出になるんだぜ、的な仕様でした。本当か?

 


ESP(多分割測光)と中央部重点測光の切り替えできますね。何も信じることができない場合はマニュアル露出で撮影します。

 

OM-4と同年に発売されたニコンFAが登場してから、多くのAE一眼レフは多分割測光が主流になり、今日に至るわけですが、筆者はですね、スポット測光、マルチスポット測光をウリにしていた、オリンパスOMが、多分割測光を安易に採用してしまったとことに当時けっこう失望した記憶があります。
 

それはなぜか、1984年の第一回のカメラグランプリはオリンパスOM-4とニコンFAの事実上の一騎打ちだったからです。つまり、マルチスポットVSマルチパターン(多分割測光)になり、FAが勝利したからではと勘繰ってしまいます。
 

ワインダー2を装着。なんだか一連のシーケンスがよろしくなくて、巻き上げ速度が遅く感じるんですが、これは筆者の気のせいではないと思います。

 

早いところ、多分割測光を採用した一眼レフを作れとか、営業方向から言われたんじゃないのかなあ。想像ですが。
 

でもね、不人気なOM40ですが、見る角度によっては意外にバランスとれたデザインですね。
 

外装のプラスチッキーさも、少し軽減されたような…。気のせいか。グリップのウレタンみたいな感触も当時としては良かったのかも。でもね、さすがにうちにあるOM40くんは加水分解が進んでいて、手に取るとベタつきまして、絶望感しかないですね。今回の連載にあたり、必死に拭きましたけど、お願いだから忙しい筆者の時間を返して欲しいです。

 

フィルム室の電子接点です。美しくないんですよね。

 

あとの特徴はOM二桁機で、TTL自動調光ができるのも本機のみという。いわば露出関連には、高いこだわりをみせていますが、例のごとくでスローシンクロはできません。いい加減せえと思いましたけどね。
 

一方のプログラムAEはどうでしょうかねえ。もともとOMズイコーレンズは絞り環に「AE」のポジションがないので、プログラムAEで撮影するには、絞り環を最小絞り値に回してセットしておかねばなりません。絞り環にはロック機構がありませんから、最小絞りから外れてしまうことがあるわけです。これは気に入らないですな。初期のMDロッコールとかライカRレンズみたいですね。なんだかわからない人は調べてください。
 

それまで絞り優先AEを主に採用してきたカメラメーカーの多くは、両優先AEを搭載するにあたり、ボディ側からレンズの絞り連動ピンを動かすというコントロールをせねばならなくなりました。
 

機械的な絞り連動には誤差はつきものなのですが、これを避けるために採用されたのが「瞬間絞り込み測光」であります。

 

OM40もそのようで、実際に動作した絞り値がフィードバックされて、シャッタースピードが決まるわけですね。実絞りでの測光ですから正確だとは思います。

 

DXポジションがあります。対応しているフィルムならばISO感度が自動セットされます。ISO AUTO SETと書いてありますが、ISO感度AUTOとは違います。気をつけて。ちなみにDXに合わせると露光補正できないんじゃないのかこの人は。ESPだから露光補正するのは矛盾しちゃうということでしょうか。

 

でもね、本機にもダイレクト測光が採用されていますが、これって、リアルタイムで測光するということですから、やや矛盾を感じませんか。
 

なぜなら瞬間絞り込み測光を採用すると一連のシーケンスのタイムラグが大きくなりますよね。さらにESP測光で露光値を分割して測光して演算しているわけですから、なんだかOM-2の頃と測光に対する思想が違うんじゃねと思うわけです。実際に撮影すると、このタイムラグは感じてしまいます。OM-1の方がいい写真撮れそうだぜ。

 

実際にOM40に限らず黎明期の多分割測光を採用した一眼レフって、デフォルトでも露光がオーバー気味設定のものが多いように思えますが、このあたりはどうなのかなあ。多分割でカメラにお任せするような撮影をする人はカラーネガフィルムを使用することが多いということなのでしょうか。

 


セルフタイマーレバーが巻き上げレバーの基部にありますね。この位置にあるのはどうなんだろうか。キヤノンA1のパクりですかね。

 

OM40登場当時は筆者はすでにプロとして仕事をしてました。だから実際にはカメラ任せのAE撮影するとかありえなかったですね。使用するのはラチチュードの狭いカラーポジフィルムがほとんどで、仕事では失敗が許されないのでカメラ任せなどできるわけがないわけです。
 

したがってOM40にはあまり関心もありませんでした。たしかOM40の宣伝のキャッチは「逆光強」(ぎゃっこうつよし)と記憶しておりますが、はたしていかほどの効果があったのかと疑念をずっと持っておりました。
 

このキャッチコピーにもなんだかイラっとしますが、筆者の撮り方にクセがあるのか、思ったほどの効果をあげることができなかったような記憶があります。本当のところはどうなんだろう。今度時間ができたら一度試してみたいと思います。

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