top コラム推すぜ!オリンパス第4回 電子シャッター、自動巻き上げ、自動巻き戻し機能を初搭載した「オリンパスPEN EM」

推すぜ!オリンパス

第4回 電子シャッター、自動巻き上げ、自動巻き戻し機能を初搭載した「オリンパスPEN EM」

2023/12/07
赤城耕一

なかなか良い顔立ちをしていると思いますがどうでしょうか。ボタンやレバーなどあまりボディから出ている部分はなく、すっきりしています。

 

筆者くらいの変態ジジイカメラヲタク写真家になりますと、コンパクトカメラのPENシリーズでは超絶評判の悪いオリンパスPEN EMまで持っていたりするわけです。でも実機をご覧になった方は少ないのではと推測します。製造上の問題がたくさん発生して、1年くらいで製造打ち切りになったみたいです。
 

PEN EMの登場は、昭和40年(1965年)であります。コンパクトのPENシリーズの絶望的にイヤなところは、背面の半月形のグリグリを行うフィルム巻き上げです。写ルンですかよおまえは。と思いませんか?いや、この巻き上げ方式はPENのほうがはるかに早いですよね、あたりまえだけど。

 


軍艦部ですが、ここもすっきりとしています。この当時でホットシューの採用は進んでいたと思いますよ

 

EMはオリンパス初の電子シャッター、自動巻き上げ、自動巻き戻しという3つの新機能を搭載した画期的なカメラです。しかも絞り優先AEを搭載しとります。発売時の価格は21,500円だそうです。たけー。
 

シャッタースピードのレンジは30秒の長時間露光から1/500秒までをカバーするという素晴らしさであります。1965年にこれをすべて実現しているのですからもっと高く評価されていいはずです。

 


経年で色が変わってしまったのですが、絞り刻印の数値。2-2.8が黒色、4-8が赤、11-16がオレンジに見えるんですが、被写界深度指標はないですよね。絞り優先AEオンリーのカメラですね。

 

普通に考えると、とてつもなくすばらしいスーパースペックハーフサイズコンパクトカメラということになりますが、残念なことに、構造上の欠陥があるとかないとか、とにかく実際に稼働している個体が少ないのです。うちにある個体はいちおう稼働している珍しいものであります。
 

電動巻き上げ巻き戻しの絞り優先AE機でありますから、バッテリーが必要です。単3を2本収納します。当時の単三乾電池の規格と、いまのそれは若干違うらしく、現行の電池は若干長いみたいです。このためバッテリー室の蓋は、親の仇を討つくらいの勢いで、思い切り強く押さないと閉まりません。

 


電源は単三電池2本です。どこでも入手できますが、旧来のものと比べると長さが違うらしく圧が強いです。無理やり閉めています。

 

動くといってもモーター巻き上げのスピードは、おまえさ、わざとやってねえか。あ?ってくらい遅いですね。
 

しかも運動能力が低くものすごく低いようで、苦しそうな動作をします。見ていても頑張れと声をかけたくなります。しかも時々フィルムが途中停止したりしますから、循環器内科を紹介したいくらいです。ちなみにシャッターボタンから指を離さないとフィルムは巻き上がりません。連続撮影は当然できません。
 

なんのための自動巻き上げなんだよとインネンをつけたくなりますが理由はあります。
 

指で72枚を連続して連続して撮影しますと、私のデリケートな薄い親指の皮は剥けて、血まみれのPENになる可能性がありますね。巻き上げの遅さは我慢せねばならないのかもしれません。

 


Rはリワインドボタンです。フィルム巻き戻し時には押し続けねばなりません。めんどうです。フィルムカウンターも底部にありますから時折カメラをひっくり返す必要があり、かつ残数式です。ある程度カウンターを進めておかないとモーターは動かない仕組みのようです。

 

ウソです。ハーフサイズカメラで一気に72コマの撮影を連続して行うなんてことがあるわけがなく。巻き上げがカッタルイ。だからモーターを仕込んでやれという単純なことでしょうね。
 

とはいえ、お正月と海水浴の記念写真が1本のフィルムに収まっているといわれるハーフサイズカメラですから、モーターが内蔵されると、少しはコマが進むんじゃないですかね。え?フィルムが高いし、大事に撮りたいからモーターで巻き上がらなくてもいい?

 


A/M切り替えスイッチ。巻き上げを自動化するかマニュアル化するかという意味か。でも。マニュアル時には巻き戻しクランクもない。

 

理屈はわからなくもないですが「量のない質はない」と森山大道さんも発言しております。フィルムをケチりたい人はデジカメにして、うそっこ粒子とラフモノクロームのエフェクトを載せることで“らしく” 見えます。ぜひお試しください。

 

話を戻します。EMもフォーカシングはあいかわらずの目測です。ガタイはそこそこデカいくせに。レンズの焦点距離は35mmと長いです。ピンボケのリスクはますます増大いたしますね。距離を測れるカメラを同時携行してきちんと撮影いたしましょう。
 

おそらく被写界深度をちゃんと応用して撮影するように、ということからEMは絞り優先AEを選んだということなのかもしれません。
 

例によって1.2と5mにクリックストップありますが、だからどうしたという感じであります。でもこの距離での画角を見極め、記憶しておけば、自らが動いてフレーミングすることで、スムーズに撮影することができるでしょう。
 

なんか、EMを褒めているのか貶しているのかわからない感じになってきましたが、筆者はプライベートで使うカメラに対してはワガママですから、ブスには手を出しません。好きなデザインのものしか使いたくありません。

 


ガタイはデカいのに、ASA(ISO)の窓が小さすぎです。老眼なんで見えないです。こっちは老眼なんだぜ。

 

先日も本連載を読まれた読者の方からPENはEEシリーズが代表格なんだから早く取り上げてくださいといわれましたが、ムリです。筆者はあのレンズ前面のセレン光電池がキラキラするのが見るのがイヤなのであります。個人の感想です。なので所有しておりません。借りてまで取り上げようとも思わず。
 

筆者はEMのデザイン好きなんですよね。つるんとした顔立ち、軍艦部はなにもないシンプルさ。少し重たいけど、外装は真鍮のカバーですよね。出来損ないの息子のほうがかわいいというやつであります。
 

繰り返しますが、EMはとにかく壊れることで有名だったらしく、登場してから1年くらいの販売で製造が中止されたようです。良い子は買ってはいけません。
 

うちにある個体はこのまま動体保存し、後世に伝えるため、これからも大事に使っていきたいと思っておりますが、現代ふうにアレンジしたEMって作ってくれたら、少々高くても間違いなく買いますけどね。
 

地球が割れても無理ですよね。

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