デザインは悪くないと思うんですよね。ただ、少しだらしないというか。デカくて運動神経が鈍い感じがします。そんなに重くないのに。
これでもね、多少は気を遣っておおよそ登場年代に沿って取り上げようと考えている本連載なんですが、目的のカメラが行方不明なんで、今回はオリンパス 35SP を取り上げることにしますね。ロッカーの扉の後ろにあったので優遇します。理由なんかそんなもんです。名前のとおり、35mm判のコンパクトレンジファインダーカメラであります。
本機はコンパクトカメラの中では珍しく、スポット測光、平均測光の2種類の切り替えによる測光をはじめて可能にしたカメラです。
絞り環もシャッタースピードもA位置にするとプログラムAEになります。大口径レンズなんで絞りをいかしたい時はマニュアル露出の方が良いでしょう。
製品名の「SP」は「スポット」の意味だそうです。なんか素直じゃない感じですね。「スペシャル」とかでいいんじゃないのかと。ペンタックスは「スポットマチック」でしたっけか。仕様とは関係ないのに名前だけ残ったわけですね。
そもそもユーザーをビギナーに向けたコンパクトカメラでスポット測光の意味や使いこなしがしっかりできる人って少数だとは思うのですが、なぜこのような仕様にしたのでしょうか。
話題のスポットボタンです。筆者は使用した経験に乏しいですね。被写体に近寄れないと露光がうまく決められないす。
これ、筆者の推測でありますが、その昔は写真は逆光ではキレーに写らないといわれておりました。だから記念写真などは逆光では撮らないのが常識で、わざわざ順光の条件に人物を立たせて撮影したりしました。露光補正みたいな概念が希薄だったんでしょうね。
逆光時にはカメラ内蔵のメーターが背景からの光を明るいものだと判断して、主要な被写体がアンダーになるということから、逆光時にはスポット測光に切り替えて、主要被写体のみを測光したほうがいいんじゃねえのか。というから開発されたんじゃないかと推測します。
つまり、往時は逆光だとうまく写らないカメラが多かったということなのですが、先に述べた理由からすれば当然でありますよね。
ボディの左方向において、フィルム感度設定ダイヤルがあります。なんか古臭い感じですよね。最高感度800ってマジか。
フツーの人は、逆光でうまく写らないのはなぜかということを研究しないので、逆光での撮影時に周りから「逆光だけど大丈夫ですか」とか心配されたりするわけです。いまだに私も言われたりします。なぜかタレントさんに言われたことあるもん。
私、これでも職業カメラマンを40年以上やっているんですけどね。一般の人の“逆光” の認識なんてそんなものです。
ガードレールの仕上げとかとてもいい感じで高級感ありますね。
本機でエラいなと思うのはプログラムAEに加えて、フルマニュアルでも使用可能であること。
だから、筆者のように基本的に内蔵メーターをあまり信用していないユーザーには良かったですね。
一時は本機をマニュアル設定して、カラーリバーサルで撮影することにハマりました。今でいえば撮影モードを変えることができるようなものですから、多機能なカメラという位置づけだったと思います。
ボディ底部です。レンズシャッターは精工舎だったとか。
もっともフルマニュアル撮影が可能なら、スポット測光に切り替えなくても、シャドー部の露出に合わせて撮影すれば、キレーに写るわけですが、普通の人はそんなこと1ミリも考えないでしょう。
ブライトフレームの採光窓もあるし、ファインダーもなかなか大きめで見やすく優れたカメラだと思います。
軍艦部はシンプルです。巻きあげレバーは1動作式ですから小刻み巻き上げはできません。
ただしですね、そのぶん大きく重くなりました。コンパクトカメラと呼ぶには苦しい感じであります。したがって、オリンパスは小型軽量であるというステレオタイプな認識を持ってみると、よろしくないかもしれません。
G.ズイコー42mm F1.7ですね。少しでも多くの光を取り入れるのは、伴わない限りしませんか。単層コートみたいです。本機の機能と矛盾しますが、逆光だと大きなフレアやゴーストが出たりします。
外装は真鍮製でそこそこには重たいでですが、筆者は一時、OMシステムと同時に使用していましたがさほどその存在は苦になりません。ただ、もう少しだけレンズの焦点距離が短かったら、良かったのにとは思います。
専用フードはプラスチック製であまり美しくないのですが、装着すると良い感じです。
デザインは厳つくて、古臭い部分もありますが、個人的には嫌いではないです。ブラックはきちんとペイントされています。レンズ性能も優秀ですが、肝心の逆光の時にすこしフレアっぽいかなあ。あたりまえですが、スポット測光で撮影してもこれは直りません。少し皮肉ですかね。
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