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推すぜ!オリンパス

第32回 ダイヤル式の速度感応型パワーフォーカスを採用した!プログラムAE一眼レフ「オリンパスOM101 POWER FOCUS」

2024/06/21
赤城耕一

OM707と比べればかなりマシなデザインじゃないですかね。プラスチックであることをおおいに生かせそうとするニュアンスを感じますが、そこそこうまくいっているようにみえます。最初はボディ左に装着するマニュアルアダプター2を取り外して撮影しようとしたのですが、ここに入れる化粧板が見つからず断念。外すと接点が剥き出しになってカッコ悪いんですよね。

 

1986年にオリンパス初のAF一眼レフOM707が登場するのですが、筆者の視界には正直入りませんでした。前年に登場した本格派のAF一眼レフ、ミノルタα7000と比較して、そのデザインやスペックなどコレジャナイ感が強かったからですね。なんかね、どこからどうみても萌えないんですよね。
 

少しだけ面白いなと思ったのは着脱タイプのグリップに仕込まれたフラッシュがビルトインされていたことかなあ。いまでは稼働する個体は少ないと聞いています。
 

ちなみにフラッシュなしのグリップもあるそうで、これを装着したOM707は、今でもほんのちょっとだけ欲しいかもしれません。いや、気のせいです。
 

ペンタプリズムの銘板位置に「OM707」と機種名表示があり、ボディ正面右に「OLYMPUS」表示があるからですね。これね、けっこう斬新な感じがしたことは確かですがAFのためにボディの質感とか感触の追求とかは全部捨てただろという感じがしました。当然、購入は見送りました。
 

で、今回はOM707のAF機構を省略し、ダイヤル式の速度感応型パワーフォーカス採用のプログラムAE露出一眼レフであるOM101を取り上げることにします。登場は1988年ですね。
 

おまえ、こんなヘンタイカメラも持っているのか。って、実際に変態ですから仕方ありませんよ。
 

単純にOM101というのは、これまでのOMの直線基調をやめて、流線形のボディーデザインにして、モーター内蔵の自動巻き上げ・巻き戻しを採用し、TTL自動調光も搭載していました。
 

デザインは好みもありましょうが、この当時としては未来志向でしたね、キヤノンT90とかを意識したのかしら。でもね、筆者はOM707よりゃかなりマシなデザインにみえました。すばらしくプラスチッキーだけどね。少し大胆なイメージでした。
 

本機はMF一眼レフなんです。使用レンズはOM707の登場と同時に用意されたオリンパスAFレンズを使うのが基本なのです。
 

 ところがですね、OM707用のオリンパスAF用交換レンズにはフォーカスリングがありません。ならOM101はMF一眼レフなのに、どうやってフォーカシングするんだよ、って疑問が出てきますね。

 


背面のパワーフォーカスダイヤル。いや、たしかによく出来てはいますけどねえ。よく出来ていても、フォーカスリングをレンズ鏡筒で回すことからボディ背面のダイヤルを回すことに移せといわれてもねえ

 

はい、答えは背面にある大きめのダイヤルを回して、フォーカシングする方法が採用されております。マミヤシックスかよ!お前は!ってくらいユニークですよこれは。
 

OM101では背面ダイヤルを回すと、連動してフォーカシングが電動で行われます。これをPF(パワーフォーカス)と呼びます。
 

ちなみにOM707もMF時にはPFだったんですが、スライドレバーでフォーカシングしたんです。もうね、死ぬほどやりづらいのです。どなたですか?こういう設計した人は?これもまたOM707の失敗要因だったんじゃないのかなあ。

 


モードダイヤルです。ボディ単体ではプログラムAEオンリーでマニュアルアダプター2を装着すると、絞り優先AEとマニュアル露出ができるわけですね。 

 

もう時効だろうから書いてしまうと、1984年くらいでしたか、新型カメラに対する意見を聞かせてほしいとオリンパスの開発陣から呼ばれて、話をしにオリンパスに出かけて行ったことがあります。その時に、開発者が「フォーカスをボディ側から行うのはどう思いますか?」と訊かれたのです。
 

若造だった筆者は「??」でしたね。つまり、OM101のこのPFは馴染めるのかという意味であったわけだけど、実際に試作機を見たわけでもなく、その意味がわからなかったので、なんでそんなことせねばならなんのかと強く反対した記憶があります。もっともそのころにはOM707やOM101の試作機は出来ていたんでしょうけどね。

 


カメラの正式名称は「OM101 POWER FOCUS」ですね。軍艦部が空いていたから書いたんですかね。セルフタイマーボタンも味気ないですね。

 

オリンパスの名誉のために言っておきますけど、このPFはカラダに馴染めるかどうかは別として、一連のシーケンスはなかなかよく出来ていました。
 

基本的には右手親指で背面のダイヤルを回すのですが、その速度に応じて、フォーカスもするすると動くのです。遅ければ遅く、速ければ速くと粗動と微動に応じてフォーカスの速度も可変します。
 

あたりまえといえばそうなんですが、その反応の良さには驚きます。もっとも自分でそれが便利と思うかどうかはまた別の話ですけどね。もちろんユーザーには馴染まないということも一つの理由として、後継機種も登場しないということもあるかもしれません。

 


マウント部の電子接点です。なんでもかんでも電子化すりゃいいってもんじゃないよと言いたくなるけど、カメラの未来志向はね、製品の性格からしてあたりまえで。

 

さらに、本機にはマニュアルアダプターが用意されています。ボディ単体ではプログラムAEオンリーのカメラなんですが、アダプターを装着すると、マニュアル露出とか絞り優先AEを可能とします。
 

思い出すのは、OM10のマニュアルアダプターですけど、これって、米谷イズムが入っているのでしょうかねえ。米谷さんに訊いておけば良かったですねえ。

 


OMマウントということで旧OMズイコーは装着できるみたいですが、装着したことないですね、怖くて(笑)

 

MFのOMズイコーレンズもOM101に装着できるんですが、とても使いづらいものになりますが、その逆は装着不可と言われています。もっとも装着したところでフォーカスリングのないレンズをMF一眼レフにつけても意味ないんですが。
 

このOM101。内部構造をみるとミラーボックスの下部に、AFセンサーや機構を入れるスペースがあります。
 

将来的にはAF一眼レフになる予定だったのかもしれないし、ハネウェルの特許問題でモメたので、AF一眼レフにする予定から急遽MFに変えたのかもしれないですね。用意された交換レンズにも「AF」と「PF」があって、後者はPF専用のレンズということになり、AFができないわけです。

 


ボディ前面にある、逆光補正ボタンですね。単独での露光補正ダイヤルとかないわけですよ、このカメラ。困るよね。文句言われるほど、OM101は世の中にはないのかもしれないけど。

 

結局は特許問題と、カメラが不人気であることで、オリンパスはAFを諦めたのかもしれません。ま、ヒットしていたら、裁判だろうが賠償金を多く払おうが、そのまま続けたのは間違いないでしょう。
 

と、いうことでOM一眼レフのAF化はOM707の一機種のみで終了してしまいます。このOM101もPFをウリにしたけど、本来はAF一眼レフになる予定だったのかもしれません、まさに悲劇の一眼レフであります。
 

再び、その後のオリンパスOMはMF一眼レフであり続けることを決心したようにみえましたが、実態はそうじゃないですよねえ。悲劇だよなあ。

 


ボディ前面にある、逆光補正ボタンですね。単独での露光補正ダイヤルとかないわけですよ、このカメラ。困るよね。文句言われるほど、OM101は世の中にはないのかもしれないけど。

 

結局はオリンパスはどうあれ、レンズ交換式のAF一眼レフ路線に乗ることに大失敗したわけです。でもその頃はね、MF一眼レフであり続けるOMは孤高の存在にもみえたし、それはそれで主張を感じたような気もしたのですよ。オリンパスユーザーは我慢強くて、優しいんだよね。

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