パッと見は意外と悪くないACEですけどね。実際に見て触れてしまうとね、真実があからさまになるというか。お見合いを持ちかけながら中座したくなるというか。それは失礼なので、筆者はお持ち帰りしたわけです。自分で言っておきますが、責任を取りました。えらいよなあ。
うちにはまだ他にもPENはあったように思うのですが、機材ロッカーの中では現時点で見当たりませんので、次いきますね。またなんか出てきたらご紹介することにします。
で、次に目についたオリンパスのカメラなんですが、「オリンパスACE(エース)」というのが出てきました。登場は1958年です、筆者より年寄りなのです。
これ、購入前に姿写真だけをよくみる機会があり、レンズシャッター内蔵のレンジファインダー機としてはなかなかよい顔立ちをしておるではないかと個人的に高めに評価していたのです。
広角レンズのズイコー3.5cm F2.8です。そこそこよく写ります。軽量です。専用フードとかあるのでしょうかねえ。
オリンパスACEは国産のレンズシャッターカメラでは、初のレンズ交換可能なカメラということらしく交換レンズは35mm、45mm、80mmが用意されているというシステム性のある意欲作であります。
ならば、もっと高く評価されていいと思うのですが、先達のカメラ好きの誰もが、詳しくは知らないというのが謎でした。筆者は大好きな35mmレンズが用意されているということだけで購入対象になりましたけれど。
このレンズはメートル指標なんで使いやすいんですよ。おそらくフィート表示のものもあるんだろうなあ。被写界深度数値は混み合ってます。上はシンクロセレクターで「X」はスピードライト使用時に合わせます。SNSのX(旧Twitter)のシンボルマークみたいな感じです。
某カメラ店でみつけたオリンパスACEでしたが、実際の入手価格は、昨晩、赤提灯にお支払いしたお稽古代に多少小銭を足したくらいで、入手できました。カメラ店でも評価低いんですね。廉価でいいのですが。
で、実際に手にして操作してみると、すばらしく…操作性に手応えがないカメラなのであります。なるほど、なんとなく全体の評価が低い理由がわかり始めてきました。
レンズの裏です。REトプコールの広角レンズの後ろみたいな印象です。ちっこい後玉ですね。ビハインドシャッターのためにむりしたんじゃないのかな。
外装はなんとなくボコボコというか滑らかなメッキではありません。仕上げが悪い、安っぽいんですね。巻き上げは軽いのは評価したいのですが、先端 が鋭角で続けて操作しますと指が痛い。小刻み巻き上げもできませんぜ。うーむ。しかも動きがチャチであります。ファインダー周りの額縁は、まさかと思いますがライカM3を意識したとか。300年早いですよ。ったく。
シャッターのストロークはそこそこの長さがあるのに、指先に荷重のフィーリングが伝わりづらいのも問題です。つまりシャッターボタンをじわじわ押し下げても、切れるタイミングがわからないので難しい。これは鍛錬あるのみです。
レンズを取り外すと、レンズシャッターがボディ側に見えます。
おいおいレンズシャッターじゃねえのかよ、と思ったら、これはビハインド式と呼ばれるものです。
レンズを取り外して、ビハインドシャッターを見てみます。思い切りレンズシャッターですね。レンズ側のフォーカス連動ピンが5時方向の穴に入るみたいですね。9時方向にあるのはレンズ着脱金具。やりづらいです。最初は壊れているんじゃないかと思いました。
このためレンズ交換を容易にしたものであります。レンズシャッターはコパル製です。COPAL-SVというレンズシャッターのようであります。
「COPAL-SV」のレンズシャッターは、メーカーにかかわらず、多くのレンズシャッター方式のコンパクトカメラに採用されています。優秀な性能だった証ですね。右側のギザギザしたプレートはフォーカスリングの指当てですね。
絞りはレンズ側にありますけど、ものすごく簡略化したという印象はありません。けど、しつこいようですが全体が安い雰囲気で、ブリキの玩具を想像してしまうくらいです。でも重量はそこそこあるのがなんだか許せないのです。
こういう仕上がりって、この時代の独自のものなのか、コストのためなのか、今となってはよくわかりません。
カメラ底面。シンプルすぎて言葉がありません。特別の仕上げがいいわでもないし。少し錆びてますね。ピカールで磨きたくなるのを我慢しています。
もちろん露出計は内蔵されておらず、フルマニュアルです。シャッタースピードはB、1~1/500。メーターがないので故障の心配をしなくても済みます。兄弟機にはメーター内蔵のものもありますな。けど、それは興味はないので、知りたい方はさくっと調べてください。
ファインダーは予想よりも意外に良かったです。うちにある個体は、距離計像のコントラストもまだ強くて十分に実用になるのは救いでした。
ただ、ブライトフレームは3種の交換レンズのもの全て出現したままでにぎやかです。
スプロケットギアは立派であとは安っぽいです。雑駁な仕上げのフィルム室ですね。これはカメラ全体の印象としても言えます。アパーチャー部分の奥がビハインドシャッター。ユニットをコパルから買って、はめ殺しにするイメージでしょうか。
ニコンS3とかキヤノンPほどじゃないですが、邪魔くさいですね。フレームは微妙にタル型に湾曲しておりますが、実用にはなります。パララックスは自動補正方式ですから、前出2機種よりも優れていることになります。視野率は低いですね。パララックス自動補正の意味はあるのかしら。
肝心の写りはどうかというと、光線状態が良い場合はなかなかシャープでコントラストが高い写りであります。とはいえ筆者が試したのは3.5cmと4.5cmだけですけど。
巻き戻しクランクなんですが、そこそこ大きくて、不思議なことにここだけOM-1っぽいですよね。影響は与えてないと思うけど。大型で使いやすいです。
ただ、逆光には弱いですね。最近のACE用交換レンズは曇っているものとかキズだらけとか程度が良くないものが多くなってし待ったようです。このため、メンテナンスされていないレンズですと、その真の実力は発揮させることができずホワホワに写ります。あたりまえです、私より年上のレンズなんですから。
でも、この写りが古いズイコーの味わいだぜとか思われると困るのですよね、筆者としては。いや、実際に筆者は何も困りもしないのですが、寝食忘れてレンズ設計したエンジニアに申し訳ない気持ちになります。
「ACE」って当時のアニメのタイトルみたいな感じしませんか?あるいは風邪薬とか。こうして立派なカメラのネーミングとして採用されたのだから、全体にもう少し高級感を出せなかったのかね、という思いはあるのです。1950年代はまだ生活も厳しく、カメラどころではなかったんでしょうか。
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