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カメラガガ

30 コロナカカ

2026/03/23
上野修

2020年2月、とあるQRコード決済で、「誰でも!毎週10億円!もらえるキャンペーン」という景気のいいキャッチフレーズの企画が開催されていた。
 

開催当初は、最大20%で上限30,000ポイントをプレゼントというルールだったが、2週目からは上限6,000ポイントに引き下げられた。それ以前にも、キャンペーンが想定以上の人気で、しばしば還元上限が引き下げられることが起きていたので、こうなることは想定の範囲内である。
 

シグマのdp0 Quattroを、ビックカメラの店舗受け取りサービスで注文しておいて、キャンペーン開始から1週目くらいに取りに行った。店員さんがカメラの特性をよく知っているらしく、予備の電池はどうしますか?と聞かれて、いらないです、と一度は答えたものの、やっぱり1個お願いします、というやりとりをしたことを覚えている。
 

もちろんビックカメラのポイントも付いたし、翌週には還元上限が変わったので、してやったり、だ。こういうゲーム性は、ちょこまかセコセコしている方が愉しいのである。
 

さて、2020年2月といえば、いうまでもなく、新型コロナウイルスの影響が広がっていった時期であった。dp0 Quattroを注文したのは、CP+2020の中止が決定したタイミングだったし、受け取りに行ったのは、東京マラソン2020の一般ランナーによる参加の中止が発表されたタイミングだった。
 

にもかかわらず、予備の電池で迷ったり、してやったりと満足していたりするのだから、呑気なものである。
 

購入してから一週間後くらいに、外出がてら試写しようとdp0 Quattroを持ち出した。このときには、すでに街にもなんとなく緊張感が漂いはじめていた。どんより曇った重たい空から、時おり陽が射す不穏な天気が、そう感じさせたのかもしれない。新型コロナウイルスの影響がじわじわ忍び寄る街で、シャッターを切っているという感触があった。

 


 

3月に入ると、どんどん状況が深刻化していった。11日には、世界保健機関(WHO)がパンデミック(世界的大流行)を表明した。大ごとにはならないだろう、すぐに収束するだろう、といった楽観的な見通しが急速に消えていった。
 

3月末に、仕事のついでに千鳥ヶ淵周辺を歩いたときには、そういう時期の桜と人を撮ってみようと、はっきり意識していた。
 

それを最後に、しばらくdp0 Quattroで撮影することはなくなった。振り返ってみると、6月に近所を数枚撮り、9月からは少しは運動しようと散歩をしたときに撮るだけであった。
 

超広角レンズで旅先のあのモチーフを撮ってみよう、そのためにdp0 Quattroを入手しよう、キャンペーンを利用してお得に購入できてしてやったり、などと浮ついていた自分が愚かに思えた。dp0 Quattroを見ると、苦々しい気持ちになるので、まったく触らなくなっていった。
 

新型コロナウイルスの感染拡大による社会への影響、と書くと長くなる。それを短く表現できる「コロナ禍」という言葉がじょじょに浸透していった。初期には状況下という意味を含ませた「コロナ下」という言葉も使われていたが、どちらもコロナカという読みになってしまうので、こちらはあまり使われなくなった。さらに、両方の意味を含ませた「コロナ禍下」という言い回しも登場したが、コロナカカという読みになるせいか、ほとんど使われることはなかった。
 

コロナ禍のタイミングで入手したdp0 Quattroは、私にとってコロナ禍のカメラ、略してコロナカメラになった。心の中ではそう呼ぶようになったが、いささか不謹慎で、まったく面白くもない語呂合わせなので、いまここではじめて文字にした次第である。

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