カメラガガ

15 悪癖

2025/01/27
上野修

NEX-5シリーズのオリジナルコンセプトは、「板」と「円筒」だという。
 

板と筒というフォルムを活かそうとするなら、余計な出っ張りはない方がいいということになる。NEX-5Nは、フラッシュとEVF(電子ビューファインダー)が外付けになっている。フラッシュは付属品で、EVFは別売だ。それらを接続するコネクターは、NEX-5Nで新たに採用された独自規格の「スマートアクセサリーターミナル2」である。
 

さて、これはどういうメッセージなのだろう——、などと難しく考える必要もないのだが、こういうところからあれこれ考えるのもカメラに触れる楽しみのひとつなのである。
 

フラッシュが付属品だということは、無くていいものではないということだろう。ふだんは外しておいて、必要なときだけ付ければいいものなのかもしれない。ではどのようなときが必要なときなのだろうか。感度不足のときに消極的に使うのか、効果として積極的に使うのか。
 

外付けフラッシュというのは、何かとトラブルの元でもある。接点不良の可能性があるし、引っ掛けて破損する可能性もある。忘れてしまうこともあるし、紛失の危険もある。必要性が高いものなら内蔵にすればいいのだが、外付けになっているのは、スペースの都合か、デザイン上の理由か、遊び心か。そうであって欲しくないので、必要性は低いものなのだと思いたい。
 

付属品のフラッシュで、これだけややこしく考えることができるのだから、別売のEVFならなおさらである。
 

そもそも初代のNEX-5で用意されていたのは、E16mm F2.8レンズ専用の別売光学ビューファインダーのみであった。これは専用かつ光学ビューファインダーなので、使用シーンは限定的であり、メッセージはかなり明確だろう。
 

二代目のNEX-5Nになって外付けEVFが登場したのはなぜだろうか。コネクターも新たな規格だということは、はじめから予定されていたわけではないのだろう。とすると、やはりビューファインダーも必要だよね、ということになったのだろうか。
 

ここで、板と筒の話にちょっと戻ってみたい。デジタル一眼カメラの要素を極限まで研ぎ澄した結果が「板」と「円筒」であるのなら、それをさらに洗練させることはできないのだろうか。いうまでもなく、そのひとつの回答は板だけであり、もうひとつの回答は筒だけということになる。
 

この時代、板だけの方は、すでにスマートフォンとして登場していた。筒だけの方も、レンズスタイルカメラ(ソニー)やオープンプラットフォームカメラ(オリンパス)として登場することになる。
 

したがって、レンズ交換式デジタル一眼カメラならではのアドバンテージとなると、やはりシステムとしての自由度、それも一眼レフを超えるようなポテンシャルの自由度ということになるだろう。そのなかで、外付けEVFの位置付けはどのようなものになるのだろうか。

 


 

個人的には、こうした外付けガジェットは、合体ロボのようで大好きである。しかし、それを使うことは好きではない。なぜそうなのかはよくわからないが、可能性を手にしてる感じが好きなのかもしれないし、たんなる悪癖なのかもしれない。
 

いずれにせよ、私としてはNEX-5Nをできるだけそのままで使ってみることに興味があったので、サードパーティ製の高倍率ズームレンズを、あえて背面液晶モニターで使ってみたりもした。もちろん、とくに望遠側は外付けEVFの方が見やすいに決まっているだろう。
 

しかし、見やすくなくてもいいのである。見やすくないからこそ、なにか新しい写真が出てくるのでは、と期待することができる。なにせよく見えてなのだから、どうにでも夢想できるのだ。

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