今さらながらだが、シグマのDP Merrillシリーズを形容しようとすると、適切な表現が見つからなくてとまどう。
まず、レンズ交換ができないことを、どう表現すればいいのか。レンズ非交換式という言い方がないわけではないが、あまりポピュラーではない気がする。その交換できないレンズは、ズームではなく固定焦点で、35mm判換算画角28mm(広角)・45mm(標準)・75mm(中望遠)の3種類。
店頭予想価格が約10万円だったので、高級コンパクトの価格帯だろうが、いわゆる高級コンパクトのルックスではない。コンパクトに強いて何かつけるとすれば、高画質だろうか。いや、そもそもこのカメラはコンパクトなのか。コンパクトと呼ぶには、若干大きい。
やや妥協しつつ、まとめてみると、高画質固定焦点コンパクトカメラということになるだろうか。しかし、そう呼んでしまうと、DP Merrillシリーズの特徴とズレてしまう気もする。
このように書いてみると、DP Merrillシリーズは特殊なカメラだったのだと、あらためて思う。
この特殊なカメラを3台揃えて撮影するというのは、どのような行為なのだろうか。
私の場合、3台持ち歩くことはなく、2台を選ぶか、1台のみにするかである。
2台の場合は、広角と標準、標準と中望遠、広角と中望遠の3パターン、これに加え、1台の場合の3パターンを加えると、計6パターンなる。迷うのを楽しむのに、ほどよいパターンではないだろうか。
もしこれが、レンズ交換式カメラの場合だったらどうか。ボディ1台と単焦点レンズ2本か単焦点レンズ3本、ボディ1台とズームレンズ1本、ボディ2台にそれぞれ単焦点レンズ、ボディ2台に単焦点レンズ3本、といった、より細かいパターンの分岐が生じてくる。ボディの種類が違ったら、その使い分けも考えることになるだろう。
うまく説明できてないかもしれないが、DP Merrillシリーズのどれを使うかを決めるのは、選択肢を狭めて撮影を明確化していくプロセスであるのに対し、レンズ交換式カメラの機材選択は、可能性を広げてさまざまな撮影に対応できるようにするプロセスであるように思うのである。
というのは、いささか屁理屈かもしれないが、DP Merrillシリーズは高感度に弱く、手ぶれ補正もついてないので、撮影シーンを広げたかったら、そもそも選択肢に入らないような仕様である。あれもこれも撮りたいし、こういうシーンにも対応したい、と考えるのではなく、あれやこれは撮らなくていい、こういうシーンだけでいいと限定していくのが、私にとってのDP Merrillシリーズで撮るという行為なのだと思う。
以前、少し触れたが、DP Merrillはかなりの電池食いで、1台に電池2個が付属していた。ということは、3台購入すると、電池6個と充電器3個が手に入ることになる。同時期に、電池に非公式の互換性があるリコー GR DIGITAL IVも買っていたので、合計、電池7個と充電器4個になった。
DP Merrillを1台か2台、気分でGR DIGITAL IVを加えたりして、電池をすべて持ち歩くと、だいたい1日撮影できる。電池の残りが少なくなって不安になることがないわけではないが、これはこれで電池を何本も使ったという充実感が残る。
撮影から帰ると、パソコンにファイルを読み込み、RAW現像をはじめながら、バッテリーを充電していく。こんな流れが、私のルーティンになっていった。
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