そんなわけで、「写真」を撮るための「カメラ」を持っているべきではないだろうか、と考えて、買ったのがリコーのGRである。
GRといってもいろいろあるわけで、どのGRを買ったのかというと、GR DIGITAL IVである。2011年発売の機種だが、2013年には後継モデルが発売されたこともあって、かなり安くなっていた。
その後継モデルの名称はGR。ややこしいのでざっくり説明すると、銀塩のGRシリーズがあり、それに対してデジタル機がGR DIGITALと言う名称になり、デジタルが普通の時代になりDIGITALがとれて、GRになったということだと思う。
1/1.7型センサーだったGR DIGITAL IVから、APS-Cセンサーに刷新したこともあって、GRはフルモデルチェンジ感があった。
で、すっかり旧機種となったGR DIGITAL IVがどのくらい安くなっていたかというと、2013年の夏頃の価格で、たぶん4万円前後だったと思う。GRと名のつく新品のカメラがそのくらいの値段で買えた時代があったのである。
これが私にとってはじめてのGRになった。といいたいところだが、そうともいいきれない。というのは、その前に、GX200を愛用していたからだ。
GX200というのは、ズーム版GRである。といいたいところだが、GRの大きな特徴は単焦点機だということなので、ズーム版GRというのは矛盾しているというか、あってはならないというか、いってはいけない感がある。
とはいえ、GX200どう考えてもズーム版GRなので、GR DIGITAL IVを入手しても、さほど新鮮な味わいはなかった。GR DIGITAL IVは28mm(35mm換算)の画角、GX200の広角端は24mm(35mm換算)の画角なので、画角がやや狭くなった単焦点という感じである。
それでも、単焦点機を使っているという分、スナップの王道寄りな気持ちにはなった。1/1.7型センサーなので、堂々と王道と主張はできないが、王道を原付バイクで走るくらいの気持ちだ(私にはこのくらいがちょうどいい)。
コンパクトデジタルカメラの背面液晶というのは、最高にスナップしやすいと思う。ファインダーを覗かなくていいので、自由度が高くなる(というのは邪道なのかもしれないが)。
写真を見返してみると、とても気分よくシャッターを押しまくっているスピード感が伝わってくる。
が、写真がかなり雑である。このくらい撮れているだろうという気分と、カメラが生み出す結果が噛み合ってない感じだ。
もっとも、これは今抱いた感想であって、思ったほど撮れていないことが続いたので、結果をほとんど見ないようになっていたのかもしれない。結果さえ見なければ、じつに気分よく撮れるカメラであることは間違いなかった。もちろんこれは、私の腕のせいであって、カメラのせいではないのだが。
GX200で撮っていた写真の方が、しっかりとカメラに合わせて撮らないといけないという意識だった分、きちんと撮れていたように思う。
しかし、「写真」を撮る目的というのは、きちんと撮ることなのだろうか。気分よく撮れていればそれでいい、という指針は成り立たないだろうか。気分よく撮っている気分というのは、「写真」についているカギカッコそのものではないだろうか。
ノってノってシャッターを押しまくっているうちに、写真が「写真」になっていく、それこそが「カメラ」の醍醐味だろう。
GR DIGITAL IVが、そんな醍醐味を味合わせてくれる「カメラ」であることは間違いなかった。
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