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カメラガガ

10 たのしい詭弁

2024/09/09
上野修

カメラに対する愛着というのは、どこから湧いてくるかわからない(こともある)。
 

リコー GR DIGITAL IVを買う少し前に、シグマ DP Merrillシリーズを買っていた。そして両者のバッテリーには互換性があった。もちろん公式な互換性ではないので、よいこは真似してはいけないけれど、自己責任で使えてしまう、というやつである。
 

DP Merrillは電池食いなので、1台に電池2個が付属していた。しかも、追加購入する場合でも、GR DIGITAL IV用より、DP Merrill用の方がずっと安かった。
 

ということで、GR DIGITAL IVとDP Merrillの両方を持ち歩いていても、予備バッテリーの心配は半分でよくなったのがうれしかった。この偶然の合理性によって、GR DIGITAL IVへの愛着が、ぐっと増したのである。
 

もちろん、これは詭弁である。正確には、持ち歩くバッテリーが半分ですむわけではない。同時に2台で撮ることはないにせよ、バリバリ撮っていたら、念のためそれぞれの分のバッテリーを持っておきたいところだろう。せいぜい、8個持ち歩くところが、6個でよくなるくらいではなかろうか。しかし、こういう詭弁はたのしいし、愛着の源泉になるのである。
 

いよいよバッテリーがなくなってきてピンチのときには、GR DIGITAL IVから取り出してDP Merrillに入れる、あるいはその逆をやる。といったことをしていると、なかなか通な気分になれたりもする。
 

GR DIGITAL IVのサイズは幅108.6mm×高さ59.8mm、DP Merrillのサイズは幅121.5mm×高さ66.7mmで、ボディのサイズが似ているのもよかった。DP Merrillを入れているバッグの隙間にスッと入れておくことができた。
 

このころは、新しいデジタルカメラを入手すると、その機種ならではの機能をいちおう使ってみたりもしていた。GR DIGITAL IVでは、ハイコントラスト白黒、クロスプロセス、ブリーチバイパスといった撮影モードがあり、それらのモードを切り替えつつ撮った写真があったが、どうやら一度撮ってみただけで満足して(飽きて)しまったようだ。
 

インターバル合成モードも実験してみている。これは、一定の間隔で連続撮影しつつ、各画像の明るい部分を残すように合成してくれるモードで、要するに星や月の光跡が撮れてしまう機能である。撮影間隔は1秒~1時間で設定できるのだが、データを見ると、このときは4秒で設定していた。なぜ4秒だったのだろう。理由はわからない。

 

月の位置を予想したのか、たまたま目が覚めたらちょうどいい位置に月が出ていたのか、午前5時少し前に撮影をはじめ、午前6時半頃に撮影を終えている。最終的な合成画像のみを保存するのか、一枚ずつすべて保存するのかを選べるので、後者を選択した結果、背面液晶で送っても送っても終わらない量が撮れてしまって、唖然としたのを覚えている。
 

合計枚数はなんと1490枚。しかし、これは計算すれば簡単にわかったはずなので、それもせずに設定した自分が愚かだということだろう。大量の写真が残ってしまい、どうしたものかと思ったが、どうもこうもどうしていいのかわからないので、とりあえず保存だけしておいた。今こうしてその一部を披露しているので、保存しておいて少しは役に立ったということか。

 

 

星や月や太陽の光跡といえば、いくつかの名作が思い浮かんだりもするが、それらは銀塩の作品である。それに比べて(そもそも比べるものではないが)、GR DIGITAL IVで撮影した月の光跡は、いかにもデジタルな画像でチープである。もっとも、今の時代のデジタルカメラなら、銀塩作品とは次元の違った光跡すら簡単に撮れてしまうだろう。
 

そう考えると、これはこれで味になっているのかもしれないし、さらに寝かせれば、なにかに熟成していくのかもしれない。などともっともらしいことを思いつつ、1490枚のチープな画像が表示されている画面を、そっと閉じた。

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