フィルムやイメージセンサーは平面で、レンズは筒状である。例外もあるだろうが、カメラという言葉から思い浮かべるのは、箱型のボディからレンズが出ている形状であろう。
一眼レフの場合には、さらにペンタプリズムの突起が加わる。かつて木村伊兵衛が「亡者の三角布」「パラペット式バラック建築の店屋」と揶揄した部分だが、その後、本格的なカメラのシンボルになっていった。かならずしも突起が必要ないはずのミラーレス機でも、ファインダー部に突起が残っていることはめずらしくない。
こういったデコボコは、無いなら無いに越したことはない、と私は思う。だいたい、バッグのなかで収まりが悪いし、持ち運びにも気を遣うではないか。フラットな形状が理想だろう。
カプセル型のオリンパス XAシリーズ、板状のカシオ初代EXILIMなど、記憶に残っている好きなカメラも、突起を無くす方向のデザインが多い。歴史的にも、ポケットカメラ(110カメラ)、ディスクカメラなど、気軽に持ち歩けるフラットな普及機が開発されてきた。大成功を収めたレンズ付きフィルムの「写ルンです」も箱型だ。
だが、iPhoneのような、まさしく板としかいいようがない形状のカメラ(としても使えるデバイス)が登場すると、それはそれで味気ない。逆説的だが、デコボコしたカメラが恋しくなってくるのである。
とはいえ、伝統的な一眼レフの形状のカメラでは、やはり面白くない。
どうせ入手するなら、できるだけユニークなルックスのカメラはないか。と考えて、思い浮かんだのが、シグマのdp Quattroシリーズであった。

バッテリーのスペースとなるグリップ部のみが膨らんでいる薄い板状のボディ、そこに筒状のレンズが付いた単焦点機は、省略できない要素を研ぎ澄ましたようなルックスである(以前話題にした、ソニーのNEX-5Nのコンセプトと共通するものがあるともいえよう)。ものすごく普通なルックスの前モデル、DP Merrillシリーズとは対極的だ。
なかでも異様だったのが、シリーズのなかでもっとも大きなレンズを搭載した、14mm(35ミリ判換算で21mm相当)の超広角レンズ機、dp0 Quattroである。一般的には望遠にしか見えないようなレンズだというのも面白い。
2015年7月の発売当時は、酔狂なカメラだなというくらいの印象しかなかったのだが、シグマの単焦点機シリーズの後継機が出そうにない雰囲気になると、だんだん気になるようになってきた。入手困難になると欲しくなる心理である。
そのときちょうど、超広角レンズで撮ってみたいモチーフもあった。35ミリ判換算で24mmから28mm相当の画角の広角で撮影してみたのだが、もう少し広角で撮ってみたかったのだ。
これだけでは、入手するには至らなかったかもしれないが、当時は、QRコード決済の何とかPayが続々登場し、キャンペーンを展開していた時期でもあった。それを上手く使えば、かなりお得に買えそうだと思った。
そんなゲーム性が加わったこともあって、モチベーションも高まり、なかば衝動的にdp0 Quattroを買ってしまったのであった。
いまから6年前、2020年2月のことである。


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