シグマが発表した例のカメラの話題で持ちきりのところ申し訳ないが、もう10年以上前に発売されたシグマのDP Merrillシリーズの話をしようと思う。
以前、フツーの「カメラ」で撮る「写真」があり、特別な〈カメラ〉で撮る〈写真〉がある、と書いたが、ひさびさに〈カメラ〉で〈写真〉を撮ってみたいと思って入手したのがDP Merrillシリーズである。
とにかく飛び抜けて画質がすごいという噂があちこちから聞こえてきて、知人からDP2 Merrillを借りて試写したあと、3台のDP Merrillシリーズをすぐ揃えた、という記憶があるのだが、調べながら振り返ってみたらじっさいの経緯はちょっと違っていた。
DP2 Merrill(35mm判換算画角45mm)の発売が2012年7月、DP1 Merrill(35mm判換算画角28mm)の発売が2012年9月、DP3 Merrill(35mm判換算画角75mm)の発売が2013年2月。私が入手したのは、それぞれ2013年2月、2013年4月、2013年7月。つまり、一気に3台揃えたわけではなかったのである。
2013年2月から「SD/DPユーザー様スペシャルキャッシュバックプログラム」というのが開催されていて、これがDP Merrillシリーズのユーザーが新たにDP Merrillシリーズを購入すると3万円のキャッシュバックが受けられるという、なかなかの太っ腹キャンペーンだった。そして、このキャンペーンを待ち構えていたようなタイミングで、私は購入していたのである。
3台とも、店頭予想価格は約10万円、実勢価格は7万5千円程度だった。2台はカメラのキタムラネットショップで何でも下取り3千円引きを使い、1台はアマゾンで買っていた。
約7万5千円を3台買って、キャッシュバックが3万円×2、合計約16万5千円、一台約5万5千円で買えた、というわけで、あらためて計算してみて思わず安っ!と驚いた。この価格なら買うはずである、ということは価格も大きな動機だったようで、なんだかちょっと残念である。画質に惹かれて一気買いした、というのは、どうやら美化された記憶だったようだ。
DP Merrillシリーズのルックスは、ものすごく普通である。シンプルとかミニマルという形容もできそうだが、それ以上に普通で、フツーすぎるくらいフツーなのである。このいっけんフツーの「カメラ」が、じつはすごい画質の〈写真〉を生み出す特別な〈カメラ〉である、というのも私が感じた魅力だった。ギャップ萌え、といったところだろう。
そ
ういえば、カメラにも造詣が深いことで知られるある美術家が、私が持っていたDP Merrillを見てルックスをとても褒めていたので、とてもいい気分になったことがあった。といっても、DP Merrillシリーズを使っていてカメラが話題になったことは、後にも先にもこのときだけだったので、けっして目立つわけではないというのもDP Merrillシリーズのいいところだろう。
撮る道具として考えるならば、カメラは目立たないのが一番なのだが、愛好の対象として考えるならば、どういうカメラを使っているのかわかって欲しくないわけでもない、という逆説があるが、DP Merrillシリーズはこの矛盾した心情をうまく満たしてくれるカメラでもあったわけだ。
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