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カメラガガ

20 壊れるまで

2025/06/16
上野修

シグマのDP Merrillシリーズを、3台揃えて買ったときに決めたことがある。それは、この3台は壊れるまで使ってみようということである。
 

DP Merrillシリーズの電池と充電器は共通だから、カメラが壊れても、それらは有効に活用することができる。壊れていない残りのカメラで撮影する場合でも、1日で撮影する枚数は変わらないので、むしろ3台分の電池と充電器がないと不便だともいえる(じっさい、電池の劣化に応じて、何回か電池を買い増ししてきた)。
 

以前書いたように、私の場合、持ち歩くのは2台か1台である。ということは、もし1台壊れたら、2台の組み合わせが決まることになる。広角と標準、標準と中望遠、広角と中望遠の3パターンだったのが、どれか1つのパターンのみになるので、これはこれで考える必要がなくなって楽である。
 

2台壊れた場合、持ち歩くカメラが残りの1台になる。どれを選ぶか、まったく考える必要がなくなるので、これはこれで面白そうだ。
 

このように、壊れるまで使ってみようというのは、とことん付き合ってみたいという積極的な選択ではなく、どんどん更新されていくデジタルカメラというガジェットを使い続けてみたらどうなるのだろうという、ただそれだけの発想にすぎなかった。
 

それは固い決意というわけでもなかった。DP Merrillシリーズの更新は意外と早く、後継機のdp Quattroシリーズのdp2 Quattroは2014年6月発売なので、ほぼ2年で新機種が登場したことになる。もちろん私も購入を検討したのだが、買い替えか、買い増しか迷っているうちに、買い時を逃してしまった感じだった。
 

というのも、dp Quattroシリーズは、DP Merrillシリーズとは真逆の、ユニークで目立ちまくるルックスだったからである。DP Merrillシリーズのルックスが、フツーすぎるくらいフツーで、ものすごく普通だとするなら、dp Quattroシリーズは、スペシャルすぎるくらいスペシャルで、ものすごく特別だった。
 

ということは、いっけんフツーの「カメラ」が、じつはすごい画質の〈写真〉を生み出す特別な〈カメラ〉であるというDP Merrillシリーズの魅力と、dp Quattroシリーズの魅力はまったく違うということでもある。いってみれば、dp Quattroシリーズは、スペシャルで特別な異端の《カメラ》だったのかもしれない。
 

 

dp Quattroシリーズには、広角のdp1、標準のdp2、中望遠のdp3に加え、超広角のdp0もあった。両方の魅力を味わうには買い増しになるが、シリーズを揃えると固定焦点のカメラが7台ということになる。
 

7台を使い分けるというのは、いくらなんでも私には複雑すぎる。DP Merrillシリーズとdp Quattroシリーズでは、カメラの形状も違うし、バッテリーの互換性もないので、持ち歩き方も悩ましい。こう書いていても、混乱してくるくらいである。だったら、思い切って買い替えればいいのだが、DP Merrillシリーズの魅力も捨てがたい。なによりも、DP Merrillシリーズを使っていて、とくに不具合も不満もなかったので、買い替えという気持ちにはならなかった。
 

けっきょく、買い替えも買い増しもせず、DP Merrillシリーズを現在まで使い続けることになった。
 

オチがなくて申し訳ないのだが、幸い1台も故障することがなかったのである。もともと故障しにくいカメラなのかもしれないが、こういうのを相性というのだろうか。
 

と、書いた途端に壊れたりするのがカメラというものなので、油断はできないのだが。

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