はじめて雑誌の図版に使われた、iPhoneで撮影した写真がなかなか見つからなかったのは、思ったより早い時期のものだったからである。
それを撮ったのは、2011年10月下旬で、発売されたばかりのiPhone 4Sを入手してすぐのことだった。
iPhone 3GSから、2010年6月発売のiPhone 4に買い替える気満々だったのだが、ホワイトモデルは、製造上の問題により発売が何度か延期され、結局発売されたのは、大幅に遅れた2011年4月だった。だったら、新モデルを待とうということで、iPhone 4はスキップしたのである。
結果として、解像度もiPhone 3GSの2048x1536から、iPhone 4Sの3264x2448へと一気にアップすることになったのだった。というのは、いま調べて整理したことで、買ったばかりのiPhone 4Sで、何の気なしに試用機を撮ってみたら、仕事にも使えてしまった、というのがじっさいのところだろう。
記憶では、もう少し後のモデルのiPhoneでのできごとだと思っていたので、見つからなかったというわけだ。
ところで、カメラを写真で紹介するときには、当然ながらカメラがもう一台いる。鏡を使ってセルフポートレイト風に撮る方法もあるが、毎回その手を使うわけにもいかないだろう。
紹介するカメラと、それを撮影するカメラは、どちらがメインになるのだろうか。
紹介するカメラが試用機の場合は、それを撮影するカメラがメインに決まっているようにも思えるが、撮影するカメラが姿をあらわすことはないので、撮影されたカメラがメインのような気もする。
紹介するカメラが愛機の場合はどうだろう。それを撮影するカメラを実用機と呼んでみよう。撮影されるが撮影に使われることが少ない愛機、撮影されることはないが撮影にいつも使われている実用機。どちらがメインか。
と考えてみると、カメラ愛にもいろいろあることがわかる。愛機、愛玩機、鑑賞機、趣味機、実用機、乗用機。こうしてカメラ愛は変奏され増殖していくのかもしれない。
しかし、増殖していいものだろうか。
増殖させないための、もっとも簡単な方法は、カメラを一台に絞ることであろう。そうすれば、愛機も愛玩機も鑑賞機も趣味機も実用機も乗用機も同じカメラになる。
それを撮影するカメラは、どうするか。同じカメラにするのである。いわゆる、同機種二台主義である。愛が半分に薄まるような気がするが、二倍になるような気もするので、そこは気にしないことにしよう。
話を戻すと、カメラを写真で紹介するときに、iPhoneで撮った写真が使えるとなれば、この愛機問題の解決策にもなるように思える。
じっさい、ソーシャルメディアでは、そのような使い方がごく普通になっている。カメラの写真がどんどんアップされるのは、インターネット時代のソーシャルメディアならではであろう。
そうしたときに、つねに手元にあり、つねに撮影に使っているiPhoneこそが愛機ではないのか、とはならないのは、iPhoneがカメラのようでカメラでない、というか、カメラでないわけではないけれど、カメラだというわけでもないデバイスだからだろう。なかなかよく撮れるカメラが付いているネットにアップするのに便利な機器、くらいの気分だろうか。
雑誌の図版のような仕事に、iPhoneのカメラが常用できるとなれば、その気分も違ってくるだろう。メインのカメラに昇格しかねないのだから。
そうなると罪悪感のようなものを感じてしまう、というわけなのかどうかはわからないが、当時の写真を見返してみると、iPhone 4Sで撮った写真が仕事に使えてしまってからしばらくは、iPhoneのカメラで撮った写真を雑誌の図版用に使うことがなかったようだ。
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