動かなくなったリコーのGR DIGITAL IVのことを振り返りながら眠りについたある夜、同じ時期に買っていた別のカメラのことを、夢のなかで唐突に思い出した。
夢に出てきた、というより、夢とは思えないほどはっきりと思い出したそのカメラとは、ソニーのNEX-5Nである。
NEX-5Nを買ったのは、池袋東口のビックカメラだった。といっても本店の方ではなく、駅から向かうとその手前にある店舗の方である。本店で価格交渉をしてみて、けっきょく手前の店舗で買ったのかもしれない。
カメラを衝動的に買うときは、なぜか池袋のビックカメラに行くことが多い。はるか昔にパスポートサイズのビデオカメラ、ハンディカム(CCD-TR55)を買ったときもそうだった。あ、ハンディカムもソニーである。いや、買ったのは、ハンディカムのOEMで本家より若干安くなっていたリコーのビデオカメラだったのだが。あ、リコーとも昔から縁があったのか。
話を戻そう。その日狙っていたのは、キットレンズのE 16mm F2.8とE 18-55mm F3.5-5.6 OSSが付属した、NEX-5NDである。ズーム一本付きのキットより、このダブルレンズキットがお買い得だったのだろう。もう一本が、単焦点レンズだというのもいい。買う気満々で行っていたので、価格交渉もそこそこで妥協したに違いない。長期保証も付けた気がする。
さて、なぜ衝動的に買ったのか、である。
衝動的、というのは、つまり、理由を飛ばして、ということだ。
ハンディカム(というかOEMの、なんちゃってハンディカム)を買ったときも、とにかく欲しくなってしまって、ビデオなんてほとんど使ったこともなく、使い途も考えないままに買ったのだった。当時としては超小型サイズのビデオカメラが、何か未知の未来を見せてくれるような気がしたのだろう。私に限らず、当時パスポートサイズのハンディカムに飛びついた人の多くがそうだったのではないだろうか。
何を撮ったのかほとんど覚えてないが、展覧会に持って行ったことなどもあったはずなので、今も映像が残っていれば、それなりに貴重なものになったかもしれない。もっとも誰が撮ったものであれ、残っていれば貴重な当時の映像は少なくないだろうが、今でも見ることができる状態で持っている人はごくわずかだろう。
NEX-5Nが欲しくなったのは、やはり未知の未来感だったことを思い出した。キーワードは、ミラーレスである。今ではミラーレスというまでもないくらいミラーレスな時代になってしまったが、私が買った2012年の初夏には、ミラーレスという言葉には新鮮な響きがあったように思う。
公式サイトに残っているNEX-5Nのページを見ると、その新鮮さが伺われる。
“心が動いた瞬間を、一眼クオリティーで。スタイルと先進機能に磨きをかけたデジタル一眼カメラ”
一眼レフカメラではなく、一眼カメラ、ということは、つまりミラーレスということだ。ミラーレスが新たな未来を切り開くとしたら、まず、従来の一眼レフと同じような形態でいいはずがない。
では、どのようなカメラであるべきなのか。NEXシリーズの、ペンタプリズムの突起部がなく、薄いボディのフォルムは、その回答であるように思えたのだった。
ちなみに、NEXは、New E Mount Experienceの略で、エヌイーエックスと読むそうである。今までネックスと読んでしまっていたが、ネックスといえば、成田エクスプレスである。こちらは、N'EXとアポストロフィが付いていることにも今気づいた。
成田エクスプレスといえば、登場したてのころにその語感に惹かれて新宿から乗ったら、山手線ルートを走り出して、全然エクスプレスではないことに驚いたことがある。
さて、エヌイーエックスの方は、新しいエクスペリエンスに誘ってくれただろうか。
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