top コラム推すぜ!ミノルタ第21回 AF一眼レフなのにフィルム巻き上げレバーが存在した「ミノルタα-9000」

推すぜ!ミノルタ

第21回 AF一眼レフなのにフィルム巻き上げレバーが存在した「ミノルタα-9000」

2024/11/30
赤城耕一

コニカミノルタが2006年にカメラ事業から撤退するということになったことを知った瞬間に、筆者は裏切られた思いになり、αのことがイヤになって、発作的にαシステムをすべて中野の有名カメラ店に運んで、手放しました。
 

時代が時代だけに、大した価格もつかないと思ったのですが、一時はαシステムは筆者のメインの“仕事カメラ” だったこともありましたから、交換レンズも16mmから300mmのレンズ、関連アクセサリーまで揃えていました。
 

かなりの機材の数がありましたので当時のアシスタントに頼み、店まで運んで処分してもらったのです。このお金で住宅ローンの繰上げ返済を実行したことをよく覚えています。

 


アベレージのほかスポット測光も選べますね。ハイライト基準とシャドー基準も選択できたりね。凝ってますけどね実際は使わないよね。さすが単体メーターを発売していたミノルタだけありますが、こんなことするならボディを金属製にしてくれ。言っても無駄だけどさ。

 

でもミノルタXシリーズとSRシリーズは残しました。特定の機種を除けば、ミノルタのこれらの機種は価値が低く、お金にならないこともあったけど。でも残ったから本連載も開始できたというわけですね。まあ、どうでもいいけど。
 

ただね、カメラとして、MFシステムとAFシステムの違いだけではない魅力あるニュアンスをXやSRには感じたのです。
 

そう、カメラ事業撤退の報を聞いたときにも、キミたちは何も悪くないよなと思ったもん。あ、αが悪いことしたわけじゃないですよ。あくまでも時代背景を考慮した印象で、それによる評価です。

 


どこかで見た形のフィルム巻き戻しクランクですねえ。あそこのカメラからパクってますよね。型もユニークですが、意外と回しやすいんですぜ。

 

すべて処分したつもりでいたαはカメラのトランクやら、防湿庫やらに分散して保管していたために一部残ってしまったものがありました。意図的に残したんじゃなくて、ほんとに奥底にしまってあり、処分し忘れてしまったのです。その一部がα-9000であります。登場は1985年ですかね。

 


全体のデザインはオーソドックスというかよくまとめてきています。個人的には美しいと思っています。この後に各社のAF一眼レフは溶けたチョコレートが再度固まったみたいな感じになってゆくのです。この個体も経年変化と加水分解でグリップ周りはボロボロですが、なんとかごまかしてます。

 

αシリーズ初のフラッグシップですが、かつてのX-1と同じ立ち位置になります。ただ、1と9という数字の違いというか現在のαにもみる、それぞれの立ち位置があったのかと。フィルム時代のαには1の称号のついたフラッグシップモデルはありませんでしたねえ。
 

筆者は個人的にα-9000のデザインが好きですね。クラシックといえばそうなんだけど、どこかX-700のオマージュ的な雰囲気もあるかも。ペンタプリズムあたりの処理はシャープでなかなかよいと思いますよ。今も見ても古くないもん。

 


シャッターボタンも丸くないぜと。いいのかこれで。こんな台形みたいな形していて。指が触れるとAFが動作し、半押しでAFロックです。やりづれえよ。隣はシャッターロックスライドか。

 

α-9000のAF動作はシャッターボタンに指を触れるだけでAEとAFが作動。シャッターボタンの半押しでフォーカスロックします。現代のカメラを使用している身からすれば違和感あるのは、AFのモード切り替えがないからですね。基本はAF-C、すなわちコンティニュアスAFの動作ですから。のちにAF-Aと呼ばれる自動選択モードもできましたが。ミノルタαは登場からかなり長い間、自動選択でやってきましたね。AFに自信あったんでしょう。
 

筆者が本気でαを使用しはじめたのはAF-SとAF-Cの切り替えができるようになってからです。この切り替えがないと、筆者のカラダにミノルタαのAFは合わなかったのです。


α-9000登場時には筆者は目もくれませんでした。AFが本当に実用になるかどうか不透明だったということもありますが、駆け出しのころでしたし、カメラの機能にすべてを頼って撮影するなんてことはありえなかったからです。仕事ではAE設定でも撮らなかったですからねえ。というか仕事の撮影では、当初は35mmカメラの使用頻度はすごく低かったですから。
 

上部の液晶表示ですね。まず間違いなく液晶が漏れております。材料をケチるからこういうことになるとか、いじめられていました。40年近くを経過してもネチネチ言われるのは仕方ないでしょう。フラッグシップなんだから。フィルム巻き上げレバーはね、感触は悪いけど、小刻み巻き上げできたりしますからね。これは素晴らしいですね。設計した人に一杯奢りたいです。

 

リアルタイムでα-9000で撮影したのは発売からそれなりに時間を経てからでしたが、AFのスピードが今から比べるとえらく遅くて、これなら自分の指と目でやるわと思ったくらいです。
 

とても興味を惹いたのは。AF一眼レフなのにフィルム巻き上げレバーが存在したことです。しかも縦走りシャッターなのに小刻み巻き上げもできます。これはすばらしい。
 

これはニコンF3 AFと並んで、かなり珍しい仕様で、モータードライブを装着してはじめて自動巻き上げができます。とはいえ、ボディ単体ではMF一眼レフ的な使い方ができるわけですからこれは面白いですね。

 


AF/MF切り替えスイッチですね。AF-SとかAF-Cとか選べないですから。自信あったんですかねえ。でも使うには覚悟が必要です。ピントがあわないのに普通に合焦マークが点灯します。おじいさんなんで騙されてしまいます。ピントが合わなかったら、MFに切り替えればいいんですよと言われているみたいです。ざけんな。

 

測光は中央部重点のほかにハイライトとシャドー重点の測光ができ、最高速1/4000秒、シンクロ速度は1/250秒でした。
 

フォーカシングスクリーンも交換可能で、MF用のスプリットマイクロ方式のものまで用意したということはベテラン勢も取り込もうという考え方だったんですかね。でもスクリーンの性能は悪くないと思いますね。
 

AF一眼レフだけど、先の巻き上げ機構なども含めて、カメラとしての操作の魅力がありますから、スペックを超えた魅力がありますね。巻き戻しクランクなんてアルパのパクりじゃんとか思いましたもんね。
 

つまり、プロも使える自動化を目指したAF一眼レフだから、道具として手を抜けず操作感にも気を遣ったんだと思います。
 

これで外装の仕上げにもう少し気配りがあればなあと思いますね。とにかくプラスチッキー感が辛い。それに液晶表示がまともに残っているα-9000の個体ってあるんですか?お願いしますよ。

 


裏蓋に指当てがあるのは素晴らしいですが、これも液晶やグリップ同様に経年変化でボロボロです。指に欠片が貼り付いていたりすると、気分悪いですね。どなたですか?この材料選んだ人は?許すから、今度奢ってください。

 

しかも、いま、現存しているα-9000って、グリップや裏蓋の指当て部分がみんな加水分解して悲惨なことになっています。グリップ部分はカビが生えたみたいに真っ白になり、指当てはボロボロになってゆきます。
 

うちにある個体は、時間があればグリップを磨き倒しているので、かろうじてグリップの状態は保たれていますが、それでも背面の指当ては使うたびにぽろぽろと崩壊します。すべて失くなるのは時間の問題ですね。
 

昔からカメラ外装は金属であらねばならんと強く主張してきた筆者ですが、そんなに間違ったこと言ってないと思うぞ。だって、先日とあるベテランのカメラエンジニアに訊いたら、開発当時、加水分解が起こるとはわからなかったとか、無責任なこと言うんですぜ。
 

カメラを長く使用してもらうために、操作性や仕上げなどスペックとは関係ないところまで気を遣ったというのならば、どうもツメが甘いとしか思えないのであります。ちなみに9の称号がつくαが次に登場するのは、α-9xiでしたかねえ。

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