今回から新しく「推すぜ!ミノルタ」をはじめます。
ニコンもペンタックスもオリンパスもとりあえずは終わりましたので、次はミノルタカメラということでありまして。これまで同様にフィルムカメラ中心のお話でいこうかと。
ただ、はじめるにあたり、問題があります。筆者がミノルタを使いはじめたのはそれほど昔ではないということもあるのですが、読者の皆様が満足できるだけの種類の機種は用意できないということをお断りしておきますが、思い入れのある機種は少なくありません。
本連載はカメラメーカーの歴史を見直すとか、技術を探るなど、資料性は薄いかわりに、実際の使い心地を手厚く。というか、筆者が使うとどういう気分になったか、ということを軸としており、撮影経験のあるものだけを基本的に取り上げ、ご紹介することを原則としております。レビューでもないわけです。
ご存知のとおり、ミノルタという会社はすでになく、現在はコニカミノルタとなり、しかもコンシューマ用のカメラは販売されていません。
フィルムα一眼レフは、一時、メシを食うための道具として、それなりの数を揃えて、かなり入れ込んで使用していた時代もあったのですが、コニカミノルタがカメラ事業から撤退したのちにほとんど処分をして、そのお金を住宅ローンの繰上げ返済に充てました(笑)。
そのあと、αシステムはソニーに移管され、今日まで命を繋ぐのですが、筆者は当時はこのことについて納得できなかったわけですね。
で、この時、手元にみえるだけのミノルタαシステムを大型の機材ケースにいれて、当時お願いしていたアシスタントに運んでもらい、処分に走りました。
その時は無性に腹を立てていたというわけです。もちろんこれは仕方ないことです。それに筆者ごときのチンピラミノルタユーザーより、実際にミノルタ社内でお仕事をされていたみなさんの無念を考えると、今もなお胸が痛みます。
筆者はカメラの処分に走ったとき、MFのSRやXシステムは残しました。もちろん処分してもろくな値段がつかないということもありましたけど、自分の周りから、すべてをなくしてはいけないのではないかと、この時に強く思ったからであります。でもね、いまも不人気ですよね、ミノルタのMF一眼レフは。だからこそ、廉価に入手できるわけで、筆者は狙い目だと思っています。性能は悪いわけではないし、交換レンズは「緑のロッコール」だし。もし入手してカラダに合わなくても、被害は軽微に済むじゃないですか(笑)。
シンプルですっきりした全体のフォルムで、好感がもてます。ローライフレックス系よりもおとなしいイメージがあります。
初回は取り上げるのはミノルタオートコードIIIです。時系列とかは最初から無視しております。国産の二眼レフでは長寿を誇った名機であります。III型は最終型で1970年代初頭まで総合カメラカタログに載っていました。220フィルム(現在は中国製しかない)が使用可能。Cdsメーターを内蔵したタイプもありますね。往時、筆者には本機の良さがよくわかりませんでした、と、いうより二眼レフの良さが理解できなかったんですね。
テイクレンズはロッコール75mm F3.5。特別な名玉ではないですが、絞りによる性能変化もありますし、コントロールしがいのある印象です。
いま街で撮影していて、「懐かしいですね〜」などと話しかけられたりするのは携行していたニ眼レフがきっかけであることがほとんどです。街歩きの撮影では左肩に最新ミラーレス、右肩に古い二眼レフをぶら下げて街を歩くことも珍しくはない筆者であります。ミノルタオートコードIIIは軽量なので、とても助かります。
それに街でのスナップは巾着切りのように、通りすがりに撮影をする時代は終わったのです。二眼レフは見た目が怖くないこと、街にそのまま入っていけるデザインなのですから得をすることがあります。
ネックストラップの金具はオリジナル形状で、紛失するとたいへんです。大事にしましょう。
オートコードIIIの搭載レンズのロッコール75mm F3.5の写りが、なかなか良い仕事をしてくれます。「minolta」と「AUTOCORD」のエンブレムの組み合わせの妙がなかなかよいバランスです。
ただ、オートコードは少し他の二眼レフには見られないユーザーインターフェースがあります。
多くの二眼レフではフォーカシングダイヤルは、カメラボディの側面のどちらかにあるのが普通ですが、本機はレンズ下の本来下部にあるノブを使用しフォーカシングを行うことになります。
被写界深度指標です。カメラ下部のフォーカシングノブの位置から距離を読み取り、確認せねばなりません。ないよりゃまし、くらいの感覚です。
基本的なホールディングは、左手の手のひらにカメラを載せ、人差し指をノブの下に当てて左右に動かしてフォーカシングするカタチになります。ノブがカメラの下位置にあるので、カメラを傾けないと、距離指標が見えません。ノブがちょうど真下に来た時が2mくらいの位置になるということがわかったので、それからはフォーカシングを素早く行うことができるようになり便利に使用できています。
ただしフォーカシングノブはカメラ下部で扇形に動くものですから、カメラがノブの動きに合わせて動き、斜めになってしまうことがあります。このため意識してカメラをホールディングしないと、多くのカットが傾いた画面になってしまうのです。
120/220の切り替えダイヤルです、現在、220フィルムは中国製の1種類しかないのであまり意味がるとは思えないのですが、ないよりはいいですね。
右手でシャッターボタンを押すのは、ローライフレックス3.5Fと同じです。ストロークは浅めで、スパッとシャッターが切れます。レンズシャッターはシチズンMVLが搭載されています。
各部のエッジがしっかりとしていて、手のひらに抵抗感を感じるほどです。高級感があるわけではないが信頼でます。
さらにオリジナリティがあるのはフィルムの走行する方向がボディ上から下に向かうこと。これ、ローライフレックス3.5Fと逆ですね。この理由はいくつかあるそうで、120フィルムの平坦性がこちらの方式のほうが良好になるという説が有力です。
被写界深度計算尺は、巻き上げクランクの基部という変わった位置にあります。このためフォーカシングを行い、ノブの示した位置をみて、ピントの合った距離を覚え、それを計算尺に設定し使用絞りで、被写界深度を読むという手順になってしまいます。
カメラ下部のフォーカシングノブです。扇形に動きますが、これに合わせてカメラが傾いてしまうことがあるので注意しましょう。2mのところでノブは中央に位置します。
被写界深度の効果を最大限にを生かした撮影を行うには、先に計算尺に撮影距離を設定、使用絞りを決めて、それに応じた被写界深度を確認、カメラの下部にあるフォーカシングノブで距離を設定することになりますが、これはあまり実用的なやり方ではないですね。
フィルムは上から下方向に流れます。このほうが画面の平坦性がいいとのことなんですが、本当なのでしょうか。
搭載レンズはロッコール75mm F3.5。3群4枚のテッサータイプだが、中判カメラ用レンズとしては珍しい少し乾いたような描写ですね。私見ですが、色再現もあっさりとしています。絞り込むと画面四隅までしっかりした描写になります。
ビューレンズはテイクレンズよりも少しだけ明るいですね。でもフォーカシングスクリーンのピントの切れ込みはいまひとつな印象です。
オートコードIIIは、須田一政、田村彰英、渡辺兼人などの愛機だったこともあり、日本ではローライフレックスよりも神話化されていることもあります。往時もローライフレックスよりもはるかに入手しやすい価格設定で人気だったそうです。
1970年をすぎても現役で販売が続けられたオートコードIIIですが、一度生産終了をアナウンスしたら、プロ写真家が騒いで、再生産したという話もあり、根強い人気があったわけです。(敬称略)
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