top コラム推すぜ!ミノルタ第14回 1977年発売、絞り優先とシャッター優先AEを両方搭載した「ミノルタ XD」

推すぜ!ミノルタ

第14回 1977年発売、絞り優先とシャッター優先AEを両方搭載した「ミノルタ XD」

2024/10/12
赤城耕一

機材ロッカーから出てきたのはXDじゃなくて、XD-Sでした。ノーマルのXDは何処へ?まあ、機能は同じなんで。これは1979年発売の視度補機構を内蔵した一眼レフでしたね。アイピースシャッターが省略されています。ブラックボディしかなかったはず。レンズは古いMDロッコール50mmF1.4です。そこそこにデカいが、かなりよく写ります。

 

 いまの若い人たちに「両優先AE」と言って通じるのか不安ではあります。が、年寄りには「デュアルオート」なんて言い方よりもわかりやすいんですよ。
 

1970年代の半ばまでは、絞り優先AE(Aモード) VS シャッタースピード優先AE(Sモード)のどちらが優れているかが、マジ論争になっておりましてね。カメラ雑誌なんかでもどちらがエラいかとか、特集してましたけど。
 

筆者の漠然とした記憶だと、なんだかSモードのほうが優勢っぽかったわけです。つまり手ブレの危険が少ないというかいう理由だったですね。適当な理由だよね。
 

Aモードでは、シャッタースピードが広い範囲で可変するので、低速になっても気づかず、手ブレを起こしやすいというわけのわからない理由があったのです。そんなの撮影前に確認すりゃ済むことじゃねえのかよ。
 

シャッターダイヤルの下に撮影モード切り替えレバーがあります。Sモードって使用したことがないのですが、どういう場合に向いてますかねえ。

 

キヤノンやコニカなんかは、レンズの絞り環に「A」や「AE」ポジションがありまして、ここに合わせておくと、撮影者が決めたシャッター速度に対応する絞り値が自動的に決まるんで、安心みたいなことを言ってましたけどね。
 

絞りの可動範囲って当然狭いし。土門拳は「写真は絞りだ!」って言ってましたからね、絞りをカメラに任せていいのかよって、中学生だった私も思いました。
 

あとね、Sモードは先に述べたような絞りをAE化するための仕組みが必要だったのですが、Aモードでは絞りの細工は不要だったわけです。だからAモードは普及させやすかったということはあるかも。考えてみればSモードを採用していた方が、後からAモードを加えやすいですね。
 

でもまあ、収まりをつけないとマズいんじゃねえのかということで、出てくるのが1978年登場のミノルタXDということになります。そうですAモードとSモード両方が使えます。
すばらしく画期的だったのがSモードです。

 

露光補正ダイヤルは巻き戻しクランク下ですね。ASA/ISO 感度ダイヤルを動かすのと同じ意味ですが、1EV刻みって粗くないですかねえ。

 

絞りの露出連動範囲外になると自動的にシャッタースピードを変更して対応するわけです。ミノルタはこれを「超自動露出」と呼びましたけどね、待てよ、これってプログラムAE(Pモード)の元祖じゃーん。
 

ミノルタはこのXDのためにボディ側から絞り制御を行うために新たにレンズを用意します。これは初期は「MDロッコール」と呼ばれます。後期にはロッコール名を外して、「MD」になり最小絞りにロック機構が加わります。マウント形状は従来と同じですからMCロッコールを装着した場合はAモードとMモードを使うことができます。
 

最小絞りを緑色にしてあり、それまでのMCロッコールと見分けがつくようにしてあります。Sモード時には最小絞りに合わせて使います。
 

それでもミノルタってエラいなと思ったのはXDには瞬間絞り込み測光を採用して、絞りが可動すると同時に再測光して、機械的な可動誤差をシャッタースピードを変化させることで吸収しようと考えたわけであります。そう、この仕組みならばMCロッコールのままで対応できたはずですが、ミノルタは真面目なんですよね。
 

絞り連動ピンの運動量と絞りの可動値をなるべく同じものに近づけようと考えたのかも。つまりSモード時にカメラ側が絞りF5.6で作動しますよと表示しているのだから、実際の絞りもF5.6で動かないとイヤということでありますね。
 

ちなみにSモードにしてレンズ側から絞りの駆動をみてみると、明るさは一定の場所なのに、シャッターを押すたびに絞り値が変化することがあるのがわかります。これが機械的な絞りの運動誤差ですよね。
 

この絞りの誤差に応じてシャッタースピードを変化させて対応し、適正露出にしようというわけであります。いまは絞りって、電磁絞りが主流ですから、このような問題は起こりません。メカ駆動って大変でしたよね。

 


試作機をそのまま発売したみたいな、視度補正ダイヤル。どうでしょう、視度補正レンズを使用した方が歪みが小さいように思うわけ。黎明期でしたから、ツメが甘かったのかな。

 

新機能盛りだくさんのXDですが、ボディサイズも小さくなりました。
重量は560g。すばらしい。ぐっと凝縮感が増しました。
 

ブラックボディもペイントからブラッククローム仕上げとなりまして、上品になりましたが、これは協力関係にあったライツゆずりの技術なのかな?今となってはペイントのほうがいいんじゃないのかと思うのですが、当時は塗装が剥げなくていいと喜ばれたような話もありましたね。
 

それにしても撮影の条件、好みに応じて、AモードとSモードを使い分けるとかみなさんやっているんですかねえ。しょせんは絞りとシャッタースピードの組み合わせって話です。
 

Pモードの設定にして、適宜ダイヤルを使用して、プログラムシフトさせれば済むことなんじゃねえのか、というのは今の価値観ですから念のため。後期型のXDは1/125秒の表記も緑色になりました。Sモード表記も緑色で、シャッタースピードを1/125秒の緑、絞り値も緑。3つの緑を合わせれば、あとはカメラにお任せですぜと言いたかったみたいですよ。一眼レフでそんな全てを委ねる撮影とかしていいのかとか思いましたぜ。ちなみにXDでは、撮影者側からの任意のプログラムシフト設定はできませんから念のため。

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