top コラム推すぜ!ミノルタ第2回 絞り優先AEを搭載のライカMマウント互換機「ミノルタCLE」

推すぜ!ミノルタ

第2回 絞り優先AEを搭載のライカMマウント互換機「ミノルタCLE」

2024/07/18
赤城耕一

筆者のCLEにはミノルタTC-1搭載レンズをライカスクリューマウント化したG・ロッコール28mmF3.5がつけっぱなしです。元のMロッコール28mm F2.8はレンズ内部が白濁して、お亡くなりになったためです。でもこの28mmも周辺光量の低下は目立つのですが、ものすごくよく写ります。

 

前世紀の終わりのころからでしょうか。休刊した『アサヒカメラ』で、ライカM7が明日にでも登場するぞするぞという、オオカミ少年みたいに根拠のない話を毎月のように記事を書いていました。
 

それでライカ好きの読者を引っ張ろうという当時の編集長の作戦だったわけですが、この当時、ライカブームと呼ばれる現象があったことは確かなので、それなりの意味はあったわけです。
 

なんせ、『アサヒカメラ』取材で当時のライカ本社のあったゾルムスと、ライカポルトガルのあるポルトに行ったくらいなのです。無駄にお金かけてましたよね。面白かったけど。
 

ライカM7はM6の後継になるわけですから、当然のように絞り優先AEが搭載されることが予想されたわけです。ライカM7がどうなるのかという話はライカM6が登場してすぐ出ましたね。日本のメーカーのカメラだと、メカニカルのマニュアルカメラとAE機を両方揃えるというのは当然のことだったからです。

 

ライカ社はかなり長い間、涼しい顔をして、カメラはM6のみと言ってよい商売を20年近く続けましたから、筆者自身も、ずいぶん長い間、ライカM7予想話を書いていたことになります。実際には、当時のライカ社に開発費が足りなかったのかもしれませんけど。
 

すでに1981年には今回ご紹介しますライカMマウント互換機のミノルタCLEが登場しているので、M7にAEが搭載されても、新鮮味はないし、大きな話題にはならないことが想像されましたが、それでもライカブームが隆盛を極めたころにM7が登場していれば話は変わったかなと。
 

ミノルタCLEの登場は一部では予想されていたようですが、それでも当時は唐突な感じがしました。
 

筆者はライツミノルタCLをやっとの思いで中古で入手したころでしたから、CLEをみて、けっこう悔しい思いはしました。でもライツミノルタCLを手放すことはなかったし、今も使用しています。

 


ライツミノルタCLと並べてみます。異母兄弟みたいな感じがします。ライツミノルタCLの作り込みもあまり感心はしないのですが、それでも元祖的な魅力はありますし、剥き出しのCdsをみますとこれも“ダイレクト測光” という感じはありますね。

 

ちなみに絞り優先AEを搭載したライカM7の登場は2002年とM6登場から20年以上後になってから、このころはもうデジタルカメラを使うのは普通のことでありましたから、ずいぶんと遅れてしまった感もありました。その前の1999年にはライカMマウント互換のサードパーティAE機としては二台目となるヘキサーRFが登場しています。
 

M型ライカがAE化することが至上の目標であるがごとく信じられていた時代って、デジタルM使いのみなさんには信じ難いかもしれませんが、本当にあったのです。
 

一眼レフでは当然のように備えられているAE機だから、ライカも同じようにしてくださいということですね。でもM7のAE化云々の話だけで、メディアも20年の間引っ張ってきたわけですけど、いつのまにかコンシューマ用のデジタル一眼レフカメラの影が背後まで忍び寄って、ちらちらしていた時代ですから、ライカM7を待ち続けるのは、自分を含めて、相当に時代遅れの人たちではないかと感じておりました。
 

すみません。話をミノルタCLEに戻しますね。ミノルタCLEミノルタがライツミノルタCLの製造を請け負っていたからこそできたスピンオフ企画のようなものですね。
 

当時のライツがCLEをどう捉えたのでしょう。黙認したのでしょうか。いちおうミノルタには一眼レフを含めて世話になっているから仕方ねえなあという感じだったのでしょうか、ミノルタ側もCLをAE化したのでCLEというネーミングをつけてしまうのも単純ですよね。
 

スペックはシンプルな絞り優先AE機です。受光素子はSPD。ダイレクト測光方式でシャッター幕には乱数パターンが印刷され、ここだけは先進的に感じました。もともと、ダイレクト測光はオリンパスOM-2が先鞭をつけていたわけですが、元はミノルタが考え出したものと言われております。本当ですかね。ウラとってません。でもミラーがないため、測光やファインダー内表示をするのはラクであることは素人にもわかります。

 


シャッター幕に印刷されている乱数パターンですね。オリンパスOM-2みたいですね。高速シャッター時に機能するわけですね。TTL自動調光の精度もそこそこでしたか。専用のスピードライトはGN小さかったですね。

 

ただ、シャッター機構はミノルタXG-EとかX7のものを応用したようです。けれど実像式ファインダー内の28mmフレームは今のMシリーズライカより見やすいですし、赤色LEDがシャッタースピード表示の脇をちらちらと駆け抜けて動く感じがなかなか良いのです。
 

応答速度の遅い受光素子のCdsを採用したCLやライカM5とは格段に違うのでとても心地よいのです。ただ、CLEは中央部重点測光といいながら、平均測光に近い感じがします。周囲に明るい箇所があると引っ張られるんですね。
 

惜しいのはマニュアル露出設定にするとLEDが完全消灯してしまうことです。つまりメーターは使えないのです。これには呆れるというか暴れたくなりました。

 


バッテリーはLR44を2個。横に並べます。カバーはスライド式。グレーのボタンはバッテリーチェッカーでセルフタイマーのランプの点灯で判断します。

 

シャッターは布幕、横走りですが、動作音は独自の“ジャッ” というライカとはまったく異なる品のない音がします。元のシャッターユニットがXG-Eと同じなら安っぽいのは諦めるしかないんだろうなと。
 

ただね、CLE内蔵の28mmのフレームと筆者の目玉の相性はバッチリでした。このファインダーの設計者は、のちのコシナとツァイスが協業して2005年に作ったツァイス  イコンのファインダー設計を担当したことは有名であります。
 

もっともCLEと同時に登場したMロッコール28mm F2.8はすばらしく性能は良いのですが、経年変化でレンズが白濁してしまう個体が多く、これ、けっこうがっかりさせられますね。

 


シャッタースピードダイヤルはミノルタX-GEと似てますね。マニュアル露出にするとファインダー内表示がはOFFになるという絶望的な仕様です。

 

CLEはMマウント互換ですからライカレンズを装着したくなります。ところがマウント上部にガードがあり、ライカレンズの一部は装着不可です。これは意図的な仕様でライツとの契約があったからという憶測も出ました。
 

外装はエンジニアリングプラスチックですね。筆者も還暦を過ぎてからというもの、重たいカメラが本当に苦手になりまして、機材に求めるのは小型軽量であることばかりなのです。エンプラといっても表面の仕上げは悪くありません。

 


蝶番式の裏蓋が採用されています。ライツミノルタCLは底蓋を取り外す方式で、使いづらかったのでその反省を込めて。ですかねえ。ま、当たり前の仕様です。

 

本当はプライベートに使うカメラは真鍮カバーがよいのですが、重量が増してしまうと、もうイヤなんです。ローライ35あたりも真鍮カバーなのはよいのですが、カバーの厚みが薄く、凹みやすかったりして、気をつかうことになるのです。
 

携行、収納がラクなCLEならロケの移動の合間にプライベートな写真が撮れます。この実用性を重要視したいわけです。

 


ミノルタCLEを持つ長野重一さん(1925-2019)。M型ライカよりも軽くて良いという理由で愛用されていました。名作「遠い視線」も多くがCLE+Mロッコール28mmF2.8の組み合わせで撮影されています。

 

CLEは10年くらい販売されていましたが、3万台程度しか売れていません。やはり、その立ち位置は特別なものだったわけです。

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