外観はX-600に、中身はX-500近いですかねえ。シャッターダイヤルがないからスッキリはしてますが、いかにもコスト下げるために無くしましたよ、という雰囲気でした。
カメラメーカーが新製品を出す時は、少しでも世間に広く知れ渡るようにがんばろうという気概があるものですが、2000年に登場したXシリーズ最終機であるミノルタX-370sが登場した時は、そうは感じられなかったですね。
本音のところはどうなんでしょうね、たしかX-370sは『アサヒカメラ』で筆者がレビューしたのですが、当時のミノルタの広報さんは、そんなに無理して取り上げていただかなくても…。みたいな雰囲気があったような記憶があります。
いやあ、無理してないですよ。もっともこういう機種のレビュー依頼が来るのも、こんな傍流のカメラを面白がるのは筆者以外いないからということだったようです。悪かったな、ゲテモノ好きで。あ、そう、はっきりと言われてないか。
もともとはX-370sは輸出専用機だったように記憶しております。AとMモードで撮影可能です。だからメカニカルではありません。TTL自動調光機構にも対応してません。別に構いませんけどね。
ここだけを切り取るとX-600ですね。余計なことしないで、つべこべ言わないで絞り優先AEで撮れよ、って雰囲気がありますね。撮るけどね。
いうまでもなくミノルタはαシリーズを主力商品としていたわけですから、失礼ながらXシリーズには気持ちがあまり入っていないように感じていました。というか、一般のユーザーさんもXシリーズってまだあったんですか?くらいの雰囲気ありましたもん。当時の広報さんだって、こんなカメラを紹介するならαの方をお願いしますよって感じでしたね。そうはいきません。こちらは真実を追求するカメラジャーナリストですから、カメラを出したからには検証せねばと。
ニコンFマウントみたいにミノルタバヨネットマウントは強力な互換性をもっていたこともありますから、地味にこれを長く繋げてきたことは意味があるんじゃないかと。こんなことを考えたのも筆者だけなのかなあ。ごく少数なんだろうけど、全く存在していないわけじゃないわけです。
ニコンがNew FM2でメカニカルの仕様でとりあえず個性をみせてきたことに対して、ミノルタはAE機であり続けることが必須のようにみえました。
メインスイッチにはスピーカーの位置がなくなりました。本機は音は出ません。安心ですが、おじいさんは、音が鳴っても聞こえないんです。高周波ですから。悪い?
New FM2の上下カバーは真鍮、コパルの金属製シャッターを搭載しています。最高速シャッターは1/4000秒、シンクロは1/250秒ですね。X-370sの場合は外観はすべて超絶プラスチッキーなわけであります。とてもチープです。
シャッターは布幕横走りですから自社で組み込まねばならないはず。面倒ですよねえ。あいかわらず最高速シャッターは1/1000秒止まりで、最高速のシンクロも1/60秒です。この当時でもレトロ感ありましたもん。X-370sはニコンNew FM2の下位機種であるFM10とかFE10あたりと同じクラスなんですかねえ。FM10だって、コパルのシャッターを入れてましたぜ。
そういえば、この当時はミノルタにかかわらず、輸出専用機としてMF一眼レフを用意しているメーカーは他にもありました。
メモホルダーはなくなりました。直読式の窓が開いてますが、昨今の怪しいフィルムではパトローネの印字が適当ですから、種類がわからない位置になるかも。あ、DX対応してませんね。
海外のみなさんはカメラにも機能的な合理性を求める方が多いといわれています。だから手動でピント合わせをせねばならない面倒なマニュアルフォーカス一眼レフが好きなんてことは考えにくいんですが、やはり、いちばん重要なのは、とにかく廉価な一眼レフを用意しておく必要があったということなのでしょう。
そういえば、ニコンFM10も、現役時代はインドあたりでよく売れていますよと聞いたことがあります。廉価なものが欲しいのは、いまでは日本人だと思うけどね。
使い勝手は安さがバクハツしております。ファインダーの構造はX-700のころから変わっていないと思うので、フォーカスはやりやすいほうです。でも、あいかわらずシャッター音かデカいですねえ。
底部には「MADE IN CHINA」文字がデカく印字されています。「MINOLTA CO.JP OSAKA JAPAN」の文字の方が小さいですな。仕方ないんでしょうね。
真の写真表現者はカメラなんかにはこだわらねえんだよ、という姿勢を世間に示すにX-370sを使用するのもいいかもしれません。でも、ここに古いMCロッコールを装着したりすると、いきなり趣味性が強くなります。一時、筆者も本機でそんな使い方をしてたなあ。誰も振り向かなかったけど。
両機ともに、スペックを競ったり、情緒に訴えるようなカメラではないのですが、こうした廉価機でもメーカーのカメラに対する考え方を表しているように思います。
ホットシューですがTTL自動調光対応はないです。接点見ればわかります。どうせ誰も使わねえよってことでパスしたんでしょうか。ま、コストが下げられるか。
本来ならば、New FM2のようにX-370sだって、写真学校指定教材になってもおかしくはなかったはずですが、そうはなっていないようですね。やはりAE機だとダメなのかなあ。それに、この当時、MDロッコールはどのくらいの本数が用意されていたのでしょうか。今さら調べる気もないのですが。
デザイン、仕様的には、以前に紹介したミノルタX-500と同じようなX-370sですから、あえてモデルチェンジして用意した意味もよくわからないんですが、さらなるコストダウンを目指したこともあるでしょうし、先進の自動化されたα一眼レフと共に、国内向けにもMF一眼レフを新製品として用意するということも、当時のミノルタの矜持だったのかもかもしれないですね。
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