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エアポケットの時代 ─80〜00年代の日本製カメラたち─

第9回 ミノルタAF一眼レフ第三世代。ある意味歴史の転換点

2023/08/01
佐藤成夫

カメラの歴史を語る上で自動化(オート)というキーワードは切っても切り離せない。これまでの本稿でも述べてきた通り一眼レフカメラにおいても自動化は重要なテーマであり、露出の自動化が完了したあとにターゲットとなったのがフィルム給送とピント合わせの自動化であり、それらは概ねAF一眼レフシステムの誕生によって達成された。


AF一眼レフシステムの誕生により、一眼レフに望まれる一通りの自動化は達成されたということなのか、以降のAF一眼レフの進化はこうして自動化された個々の機能の高度化に向かっていた。


しかし更なる自動化に果敢に挑んだカメラもある。それが今回取り上げるミノルタα-xiシリーズである。この時期既に出尽くしたと思われていた自動化を更に進めたことから、このカメラはある意味で「究極の自動化カメラ」でもあった。このxiの名はEXPERT INTERACTIONから取られており、熟練者(エキスパート)の判断をカメラに取り入れ、カメラと双方向で意思疎通(インタラクション)して撮影するカメラであるという考えが込められている。


……先に言ってしまうと、xiシリーズが目指した自動化はユーザーに受け入れられることはなかった。また、様々な外的要因も相まってこの世代を最後にミノルタはかつての勢いを失ったとされており、このxiシリーズは現代では一種イロモノ的な扱いも受けている。そしてこのシリーズが残した反省は、AFカメラの操作系においても大きなターニングポイントになったとも考えられる。


α-7000をはじめとするα四桁シリーズがAF一眼レフカメラにおける表向きの転換点であるとすれば、α-xiシリーズは筆者の考える裏の転換点である。では、そんなα-xiシリーズとはどのようなシリーズであり、何を目指していたのか紹介していこう。


α-xiシリーズはこれまでのミノルタの慣例通り、7ナンバーを持つα-7xiがトップバッターとして発売された(1991年6月)。α-7000から続く7クラスを掲げた中級機であり、最も多くのユーザーにアピールする最量販機のポジションでもあった。

 

ミノルタα-xiシリーズの7番機 α-7xi。


α-xiシリーズの最大のアピールポイントは二つの自動化(オート)機能にある。一つ目がゼロタイムオートで、この機能が目指したものはカメラを構えた瞬間にシャッターが切れることを目指したものである。既存のカメラではカメラを構えたあとに構図を整えながらシャッターボタンを半押しし、それによってAFや測光などのスイッチがONになり撮影可能状態となるわけだが、xiシリーズにおいてはその暇をも無くし、構えた瞬間に既に測光やAFが動作して撮影スタンバイ状態となっているのである。ユーザーは構図を整えれば即シャッターが切れるわけで、待ち時間ゼロ……というわけである。


この機能の実現のために、カメラ本体には二つのセンサーが追加された。一つはカメラを握っているかどうかの判定用のグリップセンサー、もう一つはファインダーを覗いてるかどうかの判定用のアイセンサーである。この二つがオンになったということは「カメラを握りファインダーを覗いている」わけで、この時点からカメラはユーザーのシャッターボタン半押し操作を待つことなくAFや測光を開始するのである。


もう一つのオート機能は、同時に発売されたパワーズーム(電動ズーム)機能を持つxiシリーズレンズで動作するオートスタンバイズームである。この機能はいわゆる自動ズームとなっており、カメラを構えるとカメラの考える最適なズーム域が自動でセットされるというものであった。当然ズーミングが電動で動く必要があるので、xiシリーズレンズでしか作動しない。


このxiシリーズのレンズは全部で5本設定され、この中には当時の純正レンズとしては高倍率のAF ZOOM xi 35-200mm F4-5.6なども設定された。これらのレンズにおいては小型化を優先し、厳密な意味でのズーム(ズーミング中に焦点移動がない)ではなくバリフォーカル(ズーミング中に焦点が移動する)を採用したものもあり、この焦点移動はAFにより電気的に補正されるようになっていた。


なお、この時期の電動によるパワーズームレンズはちょっとしたトレンドであったらしく、キヤノンはxiシリーズの登場よりも早い1990年にEF35-80mm F4-5.6 PZを発売している。これは当時のEOS 700とセットで初心者向けに提案されるに留まったが、これ以降ペンタックスも91年のFAシリーズズームレンズで追従し、こちらはミノルタ同様シリーズ化された。更には京セラもこの流れに乗り、またシグマからもこれらのメーカーに対応したパワーズームレンズが発売されていた。


とはいえ、実はこのゼロタイムオートシステムには同社内での先行例が存在する。それが1990年に発売されたAPEX105である。このカメラはいわゆるブリッジカメラであり、当時としては高倍率のズームレンズを搭載したレンズ一体型のカメラであった。このカメラにもアイセンサーが組み込まれており、アドバンスプログラムズームという名称で自動ズームが組み込まれている。更に言えば自動ズームはミノルタの専売特許というわけでもなく、これらの先行例としてチノンが同様にブリッジカメラであるスーパージェネシス等に搭載していた。


要はこうした電動化は流行の一つであり、自動ズームというのはレンズの電動化の結果生まれた機能の一つであるといえる。また、ボディ集中制御を掲げるミノルタにしてみれば、ズーミングもボディ側がコントロールする方が好ましいと考えていたのかもしれない。実際、ボディ側からズーミングをコントロールすることにより像倍率一定のズームを保つなどの機能も実現している。とはいえ、この機能がどうしても必要なユーザーがいたというよりは、出来るから付けてみたという印象は強い。意地悪な言い方をすれば、ユーザー不在で差別化の為の差別化だったとも言えよう。


さて、このようにα-xiでは高度な自動化が図られていたのだが、やはり当時の上級ユーザーには不評だった。彼らにしてみればAFや測光のタイミングやポイントといったものは半押しでスタートするのが当たり前であり、別にゼロタイムにしなくとも事足りていた。また自動ズームに関しても同様に構図は自らの手で作り出すものであり、カメラに指定されることはかえって屈辱であると考えたユーザーも多かったようだ。なお、この時期の自動ズームは現代の被写体認識ほど高度な判断はしておらず、概ね人物撮影を想定し、人物が適切な大きさに写るように制御されていた。実際、手元のα-7xiの資料にも「人物撮影に最適なサイズに自動でズーミング」とある。


そう、この当時の被写体認識というのは現代の顔/動物認識やシーン認識のような高度なものではなく、あくまでも人物撮影のための機能になっていた。多くのユーザーにとって必要なのは人物撮影だと判断されたのだろう。しかし、カメラの使われ方はもちろん人物撮影に限らない。そしてもちろん、カメラの選んだ構図が「正解」とも限らない。こうしたことから、ユーザー層を問わずxiシリーズには「なんだかよく分からない動きをするカメラ」「勝手に動くカメラ」という印象が生まれてしまったようである。


実際、このカメラにxiズームレンズを付けて構えてみるとなんだか騒がしい。ファインダーを覗くとフォーカスとズームが動作し、さらに周囲の明るさによってはストロボも自動でポップアップする。ストロボの自動ポップアップだけであれば前例もあったが、流石にここまで自動で動くとなんだか呆気に取られてしまう。その上でカメラから提示された構図が気に入らなかったら……やはり怒るか呆れるか、いずれにしろユーザーの心は離れてしまうだろう。


ところで、冷静に考えてみるとこの自動ズームによるカメラからの構図の提案というものは実はAEやAFと同じことであり、あくまでもカメラはその時カメラの考える最適な値を提示しているだけである。人々は露出が気に入らなければ露出補正するし、ピント位置が気に入らなければAFロックし直すなり測距点の切替なりMFに切り替えている。つまり、構図もそのようなものと考えれば、本来腹を立てるようなものでもなかったはずである。実際にxiシリーズにおける自動ズームは最初に一度だけ動作した後にユーザーによる変更が加わればそちらを尊重するように出来ていた。しかし、実際はAEやAFとは異なり自動ズームは存在そのものが嫌われたようである。


これについては筆者の私見になるが、AEやAFはある程度正解が決まっており、不正解にしても「どうしてカメラがそう判断したか」が分かりやすいのでカメラの提案を素直に受け入れられるのに対し、構図に関してはその時々での正解が一様に決められるものではないからではないかと思う。まして写真撮影の全てが人物撮影というわけでもないし、露出に関してはカメラに全てお任せという初級ユーザーであっても構図に関してはそのファインダーで判断ができる。故にこの機能はどのユーザー層にも等しく支持を得ることができなかったのだろう。


さて、こうした飛び道具ばかりが話題になりがちなxiシリーズだが、この頃になるとAF一眼レフとしての基本機能は既に成熟していたのも確かだった。既に動体予測や多点測距、多分割測光といった一昔前の目玉機能も各メーカーで標準的になっておりこれらの性能向上はもはやカタログスペック上は飽和状態だったのである。


実際、α-7xiも測距ポイントの増加、多分割測光の分割数の増加や1/8000秒の高速シャッター、4.5コマ/秒の高速連写や内蔵ストロボ等々、基本機能は前世代たるα-7700iから着実な進化を遂げていた。プログラムモードは各種情報から総合的に判断されるようになり、xiのエキスパートの部分を担っている。もちろんインテリジェントカードも引き続き使用可能であり、一部のカードはxi世代専用のものも登場した(電動ズームが必須となる露光間ズーム用のファンタジーカード2など)。ゼロタイムオートシステムという飛び道具が目立つとはいえ、機能面のスペックアップについては中級カメラとしてはいたって真っ当というか、正常進化を遂げていたわけである。


一方でα-xiシリーズの見た目や操作系はというと、これも前世代たるiシリーズからガラッと変わっていた。α-xiシリーズというと「横に長い」という印象を抱く方も多いと思うのだが、実際にα-7xiはあまり前例のない横長のフォルムと、対照的にペンタプリズムを低く抑えたデザインで登場した。ペンタプリズムが埋没したかに見えるなで肩デザインは人により好みが激しく分かれるが、このカメラはその中でも特異な印象を与えるものである。


……とはいえ、実はよくよく見てみると、xiシリーズの特徴は上位機であるα-9xiとα-7xiには色濃く出ているものの、下位モデルであるα-5xiやα-3xiは比較的コンサバなデザインにまとめられている。また操作部材もα-9xiとα-7xiが新たに電子ダイヤルを採用したのに対し、α-5xiやα-3xiは従来からのスライドスイッチを用いていた。また後述する操作系の特徴もα-9xiとα-7xiに特有のものであった。つまり、xiシリーズの中でも上と下に分かれており、いわゆるxiシリーズの個性が濃いのは上位モデルの方なのである。


さて、ではα-xi上位モデルの操作系を見てみよう。まず外見上の特徴はこれまで以上に絞り込まれた本体側のボタンと、ついに前後ダブルダイヤル化された電子ダイヤル、そしてα-xi上位機での操作のキモとなるFUNCボタンにある。α-7xiの場合、ボディ軍艦部にあるシャッターボタンを除く機能ボタンやスイッチは左手側に電源とPリセットボタン、右手側にカードボタンとワイドビューファインダーボタンのみである。そして背面側にはFUNCボタンとAELボタン、この他エプロン側にストロボボタンやAF/MF切替スイッチがあり、またグリップ側ドア内に隠されたボタンもあるが、表面に見えている機能ボタンはこのクラスのカメラとしては非常に少ない。

 

α-7xiの背面と軍艦部:ボタンの数が少なく現代の目で見ると取っ付きづらい。


そして、このうちCARDボタンはカード挿入時のみ、ワイドビューファインダーボタンはxiズーム装着時のみ動作するため、実際に使用するボタンは更に少なくなる。ちなみにワイドビューファインダーとは何かというと、シャッターボタンを半押ししていない時はズームが広角側に動きフレーム外の被写体を把握しやすくなるという機能である。半押しをする度にズームがヒョコヒョコと動作する様はなかなかシュールだが、このような機能なのでズームの広角端を使いたい場合は使用することが出来ない。


さて、ではこのカメラはこの少ないボタンでどう操作すれば良いのか。その答えはFUNCボタンであり、このボタンを押すことで各種機能の設定項目が呼び出されるのだ。しかもα-xi上位機ではファインダー内に液晶を挟み込んでおり、これらの機能をファインダーを覗きながら設定することが可能であった。つまり、常にファインダーを覗きながらカメラを操作できるのである。


かつてのMF一眼レフ時代にも絞りリングの値を光学的に読み出すことでファインダー内表示を充実させ、ファインダーを覗きながらカメラの露出設定が行えるようにしたものがあったが、α-xiでは露出設定以外の機能設定も含めてファインダー内に表示可能になっている。このファインダー内表示と対話型でカメラの設定をすることができるわけで、つまりこれがxiの意味するうちのインタラクションの部分というわけである。


このFUNCボタンで設定可能な内容は、一度押しで露出モード変更と露出補正、二度押しでAF測距点の選択と測光モード切替となっている。それぞれ前ダイヤルと後ダイヤルに割り付けられており、呼び出した状態で各ダイヤルを回すことでセットができる。これらの操作はファインダースクリーンに挟み込まれた液晶によってアイコン表示され、設定が終われば透明化して構図決定の邪魔をすることはない。またマニュアルフォーカス状態では左下にM.FOCUSの警告表示が点灯する。もちろんこれらの操作はこれまでのようにファインダーから目を離し、ボディ上面の液晶を見ながらセットすることも可能である。


また、α-7xiではファインダー下部にイメージインジケーターなる機能があり、これは被写体がどのように写るのかを山と人のアイコンで表示する機能になっていた。それぞれ絞りの開け閉めによる被写界深度とシャッタースピードによるブレ表現をアイコンとバーグラフで示しており、F値やシャッタースピードの概念がない初級ユーザーにもその効果を伝えるものとなっていた。このようなことからも、α-7xiはスペック的には完全に中上位機でありながら、その想定ユーザー層はこれまで同様初級ユーザーをもカバーしたものとなっていた。故にさらに上位モデルで中上級からプロまでを想定したα-9xiではこのインジケーターは露出補正バーグラフへと変わっている。


とはいえ、EOS 1000の登場で初級ユーザー向けモデルでさえPASMのフルモードが当たり前になった以上既に初級ユーザーはより廉価なモデルに目を向けており、中級機の価格帯で全てのユーザーをカバーするというα-7000以来の7番機の立ち位置は、この世代においては少しずつ世間とズレはじめていたようにも感じる。もっとも、コストも相応に高かったであろう当時としてはリッチな情報表示や高機能は、コストダウンを求められる下位機種では実現できなかったというのもまた確かである。


さて、xiシリーズの最上位モデルはトップナンバーである9番を掲げたα-9xi(1992年)があり、こちらは世界初の1/12000秒・シンクロ1/300秒シャッターを搭載したカメラとして有名である。内蔵ストロボがないせいかデザインはさらに低く構えてボディラインも曲線的となっており、それでいてクラシック感のある貼り革表現も復活している。個人的にはデザイン面でのxiシリーズの象徴はα-7xiではなくこちらの方ではないかと思っている。

 

ミノルタα史上二機種目の9番機となるα-9xi。


操作系の面ではα-7xiをベースにしながらもより上級ユーザー向けとなっており、特にユーザー側で機能を割り振れるQボタンはその後の操作系カスタムの流れの第一歩とも考えられる。もっとも、操作が複雑化したが故にこうしてユーザーに委ねるようになったという見方もできるだろう。


α-9000から数えて7年振りの9番機ということでメーカー側としてはプロの使用も見据えたモデルであるとアナウンスはしていたが、一方でミノルタ最上位機らしく各種の機能やデザインは7番機の延長線上にあり、もちろん当時のニコンやキヤノンのプロ機のような報道やスポーツ撮影を主眼としたカメラでもなかった。そういう意味では、それらのいわゆるプロ機と真っ向勝負するモデルではなかったと言える。


そしてもう一方の下位機であるα-5xiとα-3xiについてはターゲット層となる初級ユーザーがあまり奇抜な外観は好まないということなのか、ペンタプリズム部が飛び出たいわゆる一眼レフらしい外観をしており比較的コンサバなデザインを纏っていた。


α-3xi(1991年)では前モデルであるα-3700iの世界最小最軽量(当時)という特徴を引き継ぎ、ストロボ内蔵一眼レフとして世界最小最軽量のモデルとなっていた。実際、質量は435gとストロボは別体式であり本体のみで420gだったα-3700iに迫っている。また、EOS1000のような高機能廉価機が登場した以上、もはやシリーズのボトムを担う機種であってもフルモードは必須のものとなり、プログラム専用機だったα-3700iから大きくスペックアップしている。そしてもちろんこのα-3xiもゼロタイムオートシステム搭載である。ただし、最も初心者向けということもありインテリジェントカードには非対応となっている。


同様にα-5xi(1992年)もポジションは初中級者向けであったが、α-3xiに対してスポット測光の搭載、イメージシフト(プログラムシフト)の実装、ファインダー内への情報表示、インテリジェントカードへの対応など、順当な上位モデルとして差別化が図られていた。

 

α-7xiに比べるとオーソドックスなデザインのα-5xi。


さて、本稿の冒頭でxiシリーズの実現した自動化……具体的に言えばオートスタンバイズームはユーザーに受け入れられなかったと書いたが、このことがハッキリとわかる動きがある。それは、1992年から1993年にかけてα-9xi以外の3,5,7番機がパノラマ対応モデルへとマイナーチェンジを受け、その際にオートスタンバイズームをオフにするスイッチがボディ背面に設けられたことである(なお、パノラマモデルではない初代xiシリーズでも所定の操作をするとオートスタンバイズームをオフにすること自体はできた)。そして、これらパノラマシリーズのカタログではオートスタンバイズームを始めとしたゼロタイムオートシステムの扱いは非常に小さくなり、代わってパノラマ機能が前面に押し出されるようになった。構図の自動化はユーザーからNOを突きつけられ、xiシリーズ自体も方向転換を余儀なくされたのである。

 

α-7xiパノラマのカタログではこの機能がオフにできることが謳われている。出典:α-7xiパノラマカタログ


というわけで、α-7000から続いてきたミノルタにおけるAF一眼レフの自動化はここで一旦待ったがかかり、また全てのユーザーをターゲットとしたこれまでのミノルタ7番機の姿も行き詰まりを見せることとなった。そういう意味で、α-7000から続いた一連の流れに対する転換点がこのxiシリーズであり、筆者が裏の転換点であると考える所以である。


ただ、xiで提案された個々の要素を見てみれば現在では当たり前になった要素も多い。電動ズームはフィルム時代は花開くことはなかったがミラーレスではもはや当たり前であるし、ファインダー内に液晶を組み込むことはその後各社の上位機では標準的になった。グリップやアイセンサーなどの各種センサーも同様に現代のカメラでは必須装備である。とはいえ、この時代には受け入れられることはなかったのはこれまでに述べた通りである。


また、これらの動きと並行して起きた様々な外的要因もある。その一つがブリッジカメラやコンパクトカメラの高機能化である。この時期になるとブリッジカメラやコンパクトカメラにも3倍程度のズームレンズ搭載モデルが増えており、かつて一眼レフの専売特許であったズームレンズはもはや差別化要素ではなくなっていた。これらは一眼レフよりも廉価だったことから、数の多い初級ユーザーはEOS 1000のような高機能廉価機だけではなく、そちらにも流れていくこととなった。


そして、かの有名なAFの基本特許を巡るミノルタ・ハネウェル特許訴訟が結審し、ミノルタ側敗訴により当時のレートで約165億円もの巨額の和解金を支払うこととなったのもこの時期(1992年2月結審)である。この判決により、ミノルタ以外の各メーカーも同様に巨額の和解金を支払うことになったのだが、もちろんこの訴訟で矢面に立っていたミノルタが最も高額の請求を受けたことは言うまでもない。


ただ、ではこの訴訟でAF一眼レフカメラの進歩が止まったのかといえば、全くそんなことはなかった。そもそもハネウェルは既にAFセンサーから撤退して久しかったし、既に世界中見回してもAF一眼レフシステムを構築できるメーカーは日本以外に存在しないに等しかった。各社は淡々と和解金を支払うと、また何事もなかったかのようにAF一眼レフカメラの開発競争へと戻っていった。

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