top コラムもう単焦点レンズは捨てなさ、い?第19局 身近な高倍率ズームの圧倒的な先駆者は「ビデオカメラ」だった

もう単焦点レンズは捨てなさ、い?

第19局 身近な高倍率ズームの圧倒的な先駆者は「ビデオカメラ」だった

2023/11/30
落合憲弘

今も我が家に残るVHSビデオ関連のブツたち。皆さんも、よーく知っているハズだ(若者は見ていないと決めつけている)。

 

「身近な高倍率ズームレンズ」というくくりにおいて圧倒的に先行していたのはビデオカメラだ。ワタシが初めてビデオカメラを手に入れたのは、今からちょうど40年前。そのカメラは、当時すでに6倍程度のズームレンズを搭載していたように記憶している。写真の世界では得ることのできなかった画角変化(ワイド側には弱いぶん望遠側に強かった)はジツに新鮮だった。


VHSテープに記録するビデオデッキのポータブルタイプ(バッテリー駆動で持ち運びできる)が一般人でもなんとか手に入るようになった頃の話である。カメラと記録部は、ケーブルで繋がれる別体スタイルだ。カメラはデカいしデッキもデカい。マッチ箱の親玉みたいな(という例えも40年前レベルだが)動画撮影用カメラがフツーに存在する現代の感覚からすると、考えられない位の大荷物で動画を…いや「ビデオ」を撮っていた、いや「録っていた(っていう表現・記述も最近、見ませんねぇ)」のである。

 

何はともあれ高かったっす。カメラ部とビデオデッキ部は、コンビを組む組み合わせがキッチリ決められていいたもののナゼか別売の扱いで、各々ザックリ25万、合計およそ50万円っ!! それを金利バリバリの60回ローンで買っちゃうなんて、学生にしちゃイイ度胸をしていたと自分でも思いますわ。


まぁ、そのおかげで当時の貴重な映像が今も残っているワケで、あのときのムボーな決断は決して間違ってはいなかったと強く思い続けてきているところではあるのだけど、同時に月々の支払いが続く長く苦しい5年間に得た教訓を、深く深く胸に刻み続けてきた40年間でもあった。

 

「オリンパス」ブランドのVHSビデオテープ。カメラメーカーやフィルムメーカーブランドのビデオテープが普通に売られていた時代だった。多くがOEMだったのだろうけど。

 

コチラは、フルサイズのVHSテープよりもグーンと小さな、APS-Cならぬ「VHS C」テープ。「富士フイルム」ブランドだ。一体型ビデオカメラの小型化に迫られ、ナンとかヒネり出されたVHS互換製品なのだけど、小型ビデオカメラの世界では、VHS勢はソニー陣営の「8mmビデオ」に完敗だった。まぁ、8mmビデオってのも結構トリッキーな規格だったけどね。


「発展途上にある(さらなるスペックアップや良い意味でのコストダウンが期待できる)工業製品は、どんなに魅力的でも絶対に長期ローンで買ってはイケナイ」


身に沁みての貴重な気づきだったと思う。ヒィヒィいいながらローンを支払っているうちに、ビデオカメラはどんどん小型化し、その後それほど時間を経ずにカメラと記録部は一体化され、そして一体化されたビデオカメラはさらに小さくなっていった。巨大なカメラと別体のデッキを肩に提げてビデオを録っている人なんて、あっという間に世界でワタシひとりになってしまった(と思うほどの孤独と屈辱を感じることになった)のだ。


と、ここまで書けば、ワタシがカメラを含む現代のデジタル製品を分割払いで買ったことが一度もない理由をあえて語る必要はないだろう。んもう、おっかなくてそんなことできませんって! でも、最先端の機能を有する最新のデジタルカメラは相変わらずとんでもなく高価だし、今は残価設定ローン的な「買い替え」をスムーズに進められる(かも知れない)分割払いも存在。そういうモノを上手に利用してこそ、デジタル時代に即した感覚を持つ現代人といえるのではないかとの思いも当然あるワケなのだけど、なんか、どうもね…。

 

もう、最新スペックを躍起になって追い続けるほど若くはナイということなんだろう。確かに、いい加減、息切れしそうだし。「最新・最強」よりも「ちょうどいい」。そういう最適な落とし所を見つけられるか否かが、たぶん運命の分かれ道になるんじゃないかな。”物“付き合いだけじゃなく人付き合いだって、「ちょうどいい」のが結局ちょうどいいんだよね。

 

「パナソニック」ブランドの「カセットアダプター」。VHS CテープをVHSビデオデッキで再生(録画)するときに使うアダプターで、中に乾電池が入っているのは、VHS Cテープをセットしたときにモーター駆動でウニョニョニョ〜っとテープを引き出す動作が必要であるため。電動ではなく手動のアダプターもあったかな? まぁ、いずれにしても、開発者の気迫を感じずにはいられない歴史的逸品ではある。

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