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ララカメラ

8 キヤノンオートボーイ

2022/08/08
上野修

キヤノン AF35M(オートボーイ)

 

何度目かのカメラブームのきっかけになったのは、「ピッカリコニカ」と「ジャスピンコニカ」の登場かもしれない。
 

「ピッカリコニカ」とは、1974年に発売された、世界初フラッシュ内蔵カメラ、コニカ C35EFの愛称であり、「ジャスピンコニカ」は1977年に発売された、世界初オートフォーカス機能内臓カメラ、コニカ C35AFの愛称だ。
 

1976年に、フジカラーF-II 400が発売されるなど、この時代は、フラッシュ内蔵、オートフォーカス、フィルムの高感度化によって、一気に失敗写真が少なくなっていった。家庭でのサービスサイズの写真が増加したのも、おそらくこの頃ではないだろうか。
 

暗いところでもピントが合う近赤外発光ダイオードを使用した三角測量方式と、自動巻き上げを採用し、1979年に発売されたキヤノン オートボーイことAF35Mは、そんな時代の全自動カメラを象徴するようなヒット商品だったように思う。だから、ウチにも一台、という感じで、私の家にもあったのだろう。
 

ちなみに、1979年は、ソニーのウォークマンが発売された年でもあり、ウォークマンは携帯型音楽プレーヤーの代名詞になっていった。オートボーイはそこまでにはならなかったが、ひとつの時代を作ったシリーズだとはいえるだろう。
 

公式サイトを見ると、日付け同時写し込み装置のクオーツデート、望遠レンズを組み込んだ2焦点のオートボーイテレ、ズーム搭載のオートボーイズームスーパー、パノラマ画面対応のニューオートボーイパノラマ、斬新な円筒形デザインのオートボーイジェットなど、時代を反映したカメラを展開しながら、2005年まで新モデルが登場している。
 

ウォークマンでお気に入りの音楽を聴きながら、オートボーイで気の向くままに日常を撮る。1979年には、そんなゴキゲンなライフスタイルが可能になっていたはずだが、そんなボーイズ&ガールズを見かけたことはなかった。もしかしたら、都会にはいたのかもしれないが。
 

オートボーイは、いろいろなところ、というか、どこにでも持っていったような気もするが、まったく記憶に残っていない。どんな写真を撮ったのかも覚えていない。これは、全自動カメラによって、カメラが完全にコモディティ化したことの証でもあるだろう。全自動といっても、高級感はまったくなく、自動巻き上げなどは、なんともチープな音がした。そんなことだけが、記憶に残っている。
 

この時代以降、各家庭で大量に撮られたはずのサービスサイズの写真は、いったいどこにいってしまったのだろう。そもそも、どのくらいの写真が撮られたのだろうか。フィルム販売量から、ある程度類推することができるはずだが、いずれにしても、残っているのは、ほんのわずかだろう。
 

家にあったオートボーイは、初代オートボーイで間違いないように思うが、その後、ズーム機に買い替えたりしたのだろうか。買い替えたとしたら、それはキヤノン機だったのだろうか。ソニー製でなくてもウォークマンと呼んでいたように、この頃には、メーカーもさほど意識しない時代になっていたのかもしれない。
 

そういえば、私が持っていた携帯型音楽プレーヤーは、アメリカで買ったアイワのHS-F1だった。帰国してからもずっと使っていたのだが、ある日、なくなっていることに気づいた。おそらく、熟睡してしまった地下鉄銀座線のなかに置き忘れたのかもしれない。
 

写真や音楽がコモディティ化した時代は、カメラや音楽プレーヤーの忘れ物も、さぞかし増えていった時代だったのだろう。

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