フジのティアラというカメラを持っていた、ということを思い出して、検索してみた。
正式名称というか、フル名称はCARDIA mini TIARAらしい。CARDIA(カルディア)は、コンパクトカメラのシリーズ名称、miniはいうまでもなく小さいという意味で、TIARA(ティアラ)は愛称といったところか。
1994年の発売で、28mm F3.5の単焦点レンズを搭載し、小型ながら写りがいい。と書いて思い出すのは、1989年に登場して、単焦点・小型・高画質カメラブームの火付け役にもなったコニカBIG miniシリーズである。CARDIAのminiはBIG miniにちょっとあやかったりしたものだったのだろうか。1994年というと、ブームのなかではかなり後発のようにも思えるが、リコーの単焦点・薄型・高画質カメラ、R1の発売も1994年なので、じわじわ広がったブームだったのかもしれない。
当時、ティアラを選んだのはなぜなのだろう。アルミの外装の質感とデザインが気に入った記憶がある。オリンパス XAと同じように、レンズカバーをスライドさせて撮影するギミックも好きだったように思う。だったらすでに持っていたオリンパス XAやXA4でいいような気もするが、少しは流行に乗ってみたかったのだろうか。
単焦点・小型・高画質カメラブームというのは、気軽にパチパチ作品ブームに重なるわけだが、気軽にパチパチというのは、自動巻き上げ、フラッシュの自動発光といった機能とセットになっていたので、手動巻き上げ、手動発光のオリンパス XAではそうならない、という理由だったのかもしれない。
自動巻き上げといえば、ティアラにはフィルムを装填すると一気に巻き上げて、巻き戻しながら撮影するプリワインディング方式が採用されていた。撮影途中で誤って裏蓋を開けてしまっても、撮影済みのカットは助かるというコロンブスの卵的なこのアイデアもけっこう好きだった。ちなみに、カメラ底部を半分開き、そこにフィルムを入れるとフィルムが装填されるドロップインローディング(DIL)機構も採用されていたが、この機構は富士フイルムが開発したものだそうだ。
ティアラを、いつごろ、どのくらいの値段で買ったのか覚えていないが、おそらく価格が下がってきて、3万円を切ったあたりで入手したのではないだろうか。後継機のTIARA IIが1997年に出ているので、1995年か1996年に買ったのだろう。
カメラを買ったものの、撮るものがないというのはよくある話だが、そもそも気軽にパチパチ撮るような生活をしていなかったので、パチパチ撮った記憶がない。当時は、フィルムも安く、36枚撮りネガカラーフィルムがワゴンやカゴで500円以下で投げ売りされていた気がする。フィルム、現像、サービスサイズのプリントで合わせて1000円くらいで済ませることも可能だったかもしれない。ちょっといいフィルムやプリントでも2000円以下で済んだのではないだろうか。
カメラ店や量販店だけでなく、コンビニやクリーニング店など、街のあちこちでDPE(現像・プリント)を受け付けていた時代である。現在と比較すると夢のようなフィルム全盛時代だが、もちろん当時はそう思っていなかったわけで、目的もなく写真をパチパチ撮ってかかる金額としては、1000円でも高く感じていたように思う。
というか、それまでそうした行為がなかったからこそ、気軽にパチパチ日常を撮ることが注目されたのだから、それに馴染めなくても、当然といえば当然である。気軽さや日常が詰まっているはずのティアラを見ると、いささか気が重くなるのは、場違いの所に来てしまったような感触が蘇ってくるからかもしれない。
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