マミヤRB67プロフェッショナルSで撮ってみたものの、やはり外での撮影には向いていない。手持ちでも撮影できるような中判のカメラはないだろうかということで買ったのが、フジカGW690プロフェッショナルである。
アメリカの写真家が使っているのを知ったのか、先輩が使っているのを見たのか、アメリカの写真家が使っているという話を先輩から聞いたのか、そんなきっかけだったと思う。
フジカGW690というのは、観光地などでの集合写真を撮るための専用機といってもいいようなカメラだ。ということは、使い潰すまで使われるということなので、中古でなかなか見かけることがなかった。見かけても、かなり使い込まれたものだったように思う。
ライツミノルタCLのときと同じく、新宿の中古カメラ店で、見つけ、ちょっと迷ってから買った記憶がある。価格も、ライツミノルタCLと同じ、7万円台だったのではないだろうか。
フジカGW690のレンズは90mm、35mm判換算で39mm相当の画角、ライツミノルタCLは40mmレンズ付き、どちらもレンジファインダー機で、フィルムの縦横比が3:2だったということもあって、すべてが大きくなったような感覚で使うことができた。もっとも、フジカGW690はレンズシャッターだったので、シャッターの感触はかなり違っていたけれど。
このカメラで撮りたいテーマははっきりしていたので、ほぼ一年間ずっと使っていた。マミヤRB67をメインで撮っていた下北半島への旅行へも持って行っていたようだ。縦横比が違う中判カメラを2台持って行くというのは、どういう目論見だったのだろうか。
シンプルなメカニズムのカメラなので大きな故障はなかったが、フィルムの巻きムラが出ることがあり、数寄屋橋のサービスステーションに何度か持って行ったことがある。前に、HD-Sフジカの話で書いたように、このサービスステーションには思い出がある。
ところで、検索してみると、私が入手したちょっと後に、フジカがフジになり、アクセサリーシューがホットシューになった、後継機のフジGW690IIプロフェッショナルが出たようだ。フジカGW690にクリップオンストロボを付けて撮影した写真は、今でも残っている数少ない写真だが、あれはクリップオンストロボにシンクロケーブルが付いていたので撮影できたのか、と今わかった。
さらにモデルチェンジした、フジGW690IIIプロフェッショナルは、かなりスタイリッシュなデザインになり、6×8cm判のフジGW680IIIプロフェッショナルなども出たり、もう少しして、マミヤ7が出たり、中判カメラ市場も少し賑やかになった。
集合写真などの業務用だけではないとすると、ほかに使っていたのは、風景写真の愛好家などだろうか。いわゆる作品撮りのために使った人は多いだろうが、全体のなかでは微々たる数だったに違いない。
カメラのサイズは大きいが、中身が詰まっているわけではないので軽く、シャッターを押したあとの2回巻き上げといった動作もやりやすかった。カメラが大きいというだけで、なにか特別なことをしている満足感があった。この満足感に惹かれて中判カメラを使っていたのは、私だけだろうか。
デジタルカメラ時代になって、シグマのDP Merrillシリーズを使うようになったが、満足感が似ているような気がする。押しごたえのないシャッター、軽いボディ、よく確認できないファインダーやディスプレイ、それでいて、高い描写力。
フジカGW690を手放したのはいつだっただろうか。まったく覚えていない。もともと、あるテーマのために買ったカメラだったので、撮影が終わってしばらくして売ったのだろう。
カメラがあってテーマを考えるのではなく、テーマが先にあってカメラを選び、区切りが着いたらカメラも手放す。明確にそういう使い方をしたのは、フジカGW690がはじめてだったかもしれない。ちょっとしたスノビズムを、ここで覚えたというわけだ。
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