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ララカメラ

13 プラウベルマキナW67

2023/01/30
上野修

プラウベルマキナW67:アカサカカメラ@J-カメラより(http://www.akasaka-camera.com/)

 

これまで入手したカメラのなかで、もっとも何も考えずに買ったカメラは、プラウベルマキナW67かもしれない。

 

欲しかったので即断即決だった、というわけではない。ある売店で、たしか限定10台だったか、半額くらいで売っているのを見かけたのだが、あまり売れている様子もなく、その様子を幾度となく見ているうちに、ある日つい買ってしまったのである。強いて理由をいうなら、安かったから、ということになるだろうか。
 

定価は198,000円なので、99,000円とか、98,000円とか、そのくらいの値段だったと思う。ひょっとしたら、半金を先に支払い、残りは後日払ったのかもしれない。検索してみると、プラウベルマキナW67の発売は1982年、私が買ったのは1988年か89年、1986年に生産中止になったとのことなので、在庫処分だったのだろう。プラウベルマキナW67の生産台数は約3,500台らしい。ユニークなカメラとしては、多いのか少ないのかわからないが、売れたカメラでなかったことはたしかだろう。
 

なんとなく入手したカメラなので、どういうふうに使い、どんな写真を撮ったのかも、あまり覚えてない。弁当箱と呼ばれていたように、蛇腹を折り畳むと平らになって持ち運びしやすいのだが、やはり中判なので、気軽に撮るようなカメラでもなった。
 

真っ平らな状態から、蛇腹を引き出して撮影状態になるギミックは、気持ちが切り替わる効果もあったかもしれない。ストラップをつけた状態で、カメラを覆うような形状のソフトケースもけっこう好きだった。ソフトケースを外し、蛇腹を引き出したり畳んだりするという一連の動作が、撮影の一部になっていたように思う。
 

しかし、それまで、いかにもしっかりした作りのフジカGW690プロフェッショナルを使っていたので、プラウベルマキナW67はなんとも頼りなかった。ラウベルマキナW67のWは、ワイドのWで、レンズはワイドニッコール55mmF4.5の広角である。フジカGW690のレンズは90mmで標準だった。どちらかといえばマキナも80mmの標準の方が欲しかったので、画角もあまりしっくりこなかった。

 


 

レンジファインダーなので、広角のレンズで撮った写真はファインダーで見たよりも遠近感が強調されている。6×7cm判は絵になりやすい比率であることとも相まって、ファインダーで見た光景と微妙にズレつつ遠近感が生まれた写真は、たいていうまく撮れすぎてしまっていたのも気に入らなかった。というのは、もちろんいま考えた嘘だが、不満もないが満足感もないような使用感だった。
 

ここまで、ネガティブなことを書き連ねてきたが、周知のように、プラウベルマキナ67シリーズは数々の名作を生み出してきたカメラである。これはもはや歴史的な事実といっていい。プラウベルマキナ67、プラウベルマキナW67、改良型のプラウベルマキナ670を合わせて、総生産台数は25,000台程度のようだ。けっしてメジャーなカメラではなかっただろうが、生産台数と名作の比率は、もしかしたらナンバーワンなのではないだろうか。
 

あのとき売店で販売されていた10台のなかからも、名作が生まれているのかもしれない。そう考えると、せっかく然るべきときに、然るべきカメラと出会っていながら、私はなにをやっていたのだろうと思わなくもない。

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