top コラムララカメラ2 リコマチック 110X ポケットデラックス

ララカメラ

2 リコマチック 110X ポケットデラックス

2022/01/10
上野修

リコーオートハーフのシリーズは、売れに売れたのだろう。家にもあって、ゼンマイを巻いて、遊んでいた記憶がある。昔はゼンマイが身近にあって、用もなく巻いていたものである。あの感触は気持ちいい。


そんな記憶はあるのだが、撮った記憶がまったくない。ファインダーを覗いた記憶もない。撮られた記憶もない。あのカメラはなんだったのだろうか。

 

リコーオートハーフSL

 

その次に触れたカメラもリコーだった。これは、はじめての自分のカメラだったのでよく覚えている。


カンガルーの緑の革のケースも気に入っていた。私は、ケースという物体は大好きなのだが、ケースを使うのは大嫌いという、自分でもよくわからない嗜好がある。にもかかわらず、このケースは愛用していた。首にかけられる長いストラップを通す穴が空いていて、ケースを外しにくいということもあったのかもしれない。

 

それは、ほんとうにカンガルーの革だったのだろうか。今の時代、検索してみると、いろいろな画像が出てくるのがすごい。ケースの画像も見つかった。緑の革のケースには、オレンジ色のカンガルーが刺繍してある。たしかに、カンガルーの革のケースに違いはないが、カンガルーの革ではない。そういうことだったのか。

 

画像を見ていて、使い勝手を思い出す。底部の巻き上げレバーの感触。巻き上げレバーを動かすと、上部の凹みが回転する。この凹みは、マジキューブを差し込む部分。マジキューブというのは、立方体の4面にフラッシュバルブが組み込まれ、撮影後に回転させると4回フラッシュ撮影ができるもので、ギミックとして最高に楽しい。楽しいけれど、けっして安くもないので、無駄遣いはできず、発光させたくてうずうずしていた。巻き上げレバーと連動しているというのは、記憶違いなのかもしれない。いずれにせよ、マジキューブの部分は、好きなギミックだった。

 

この部分に挿す、スティックの画像もあった。スティックを挿すと、少し高い位置から発光させることができる仕組みで、これも楽しかった。実用性はともあれ、合体ロボ的なギミックは魅力的なのである。

 

三脚穴とレリーズ穴もある。これは使った覚えがない。家には三脚がなかったのか。当時の私なら、レリーズ穴があるという理由だけで、使いもしないレリーズを小遣いで買いそうな気もするが、その記憶もないので、これらの穴の意味がわかってなかったのかもしれない。

 

距離設定のダイヤルには、CLOSE-UPの文字があるけれど、これも使った覚えがない。1.5m、4m、∞という文字もあるが、これすら意識していたかあやしい。適当でも、それなりに写ったのかもしれない。前面についているBACK LIGHT +1 -1という、露出補正にいたっては、いまはじめて知ったという感じだ。

 

リコマチック 110X ポケットデラックス

 

110と書いて、ワンテン。別の名をポケットカメラ。語感も未来でカッコよかった。135やら120やら126やら、フィルムの規格に番号が用いられていることも知らなかったので、110だけが特別だと思っていた。なんといっても、日本で110は、そもそも特別な番号だし。
 

規格としても110は、長く使われた方ではないだろうか。初代の写ルンですにも使われていた。110を使うキーホルダータイプのトイカメラが流行り、何回か使ったこともある。


海外のホテルのプールで、キーホルダータイプの110カメラを使っていたら、女性の従業員に声をかけられ、そのカメラを譲ってくれといわれたことがあった。20ドルくらいの値段を提示され、数枚撮影していたフィルムもつけたまま、通路の影でこっそり譲った。なぜこっそりだったのか。日本での値段は、フィルム込みで数百円くらいだったので、儲かるということより、このシチュエーションが面白かったのだろう。

 

これがおそらく、私が撮影した最後の110フィルムとなった。

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