リコーオートハーフのシリーズは、売れに売れたのだろう。家にもあって、ゼンマイを巻いて、遊んでいた記憶がある。昔はゼンマイが身近にあって、用もなく巻いていたものである。あの感触は気持ちいい。
そんな記憶はあるのだが、撮った記憶がまったくない。ファインダーを覗いた記憶もない。撮られた記憶もない。あのカメラはなんだったのだろうか。
リコーオートハーフSL
その次に触れたカメラもリコーだった。これは、はじめての自分のカメラだったのでよく覚えている。
カンガルーの緑の革のケースも気に入っていた。私は、ケースという物体は大好きなのだが、ケースを使うのは大嫌いという、自分でもよくわからない嗜好がある。にもかかわらず、このケースは愛用していた。首にかけられる長いストラップを通す穴が空いていて、ケースを外しにくいということもあったのかもしれない。
それは、ほんとうにカンガルーの革だったのだろうか。今の時代、検索してみると、いろいろな画像が出てくるのがすごい。ケースの画像も見つかった。緑の革のケースには、オレンジ色のカンガルーが刺繍してある。たしかに、カンガルーの革のケースに違いはないが、カンガルーの革ではない。そういうことだったのか。
画像を見ていて、使い勝手を思い出す。底部の巻き上げレバーの感触。巻き上げレバーを動かすと、上部の凹みが回転する。この凹みは、マジキューブを差し込む部分。マジキューブというのは、立方体の4面にフラッシュバルブが組み込まれ、撮影後に回転させると4回フラッシュ撮影ができるもので、ギミックとして最高に楽しい。楽しいけれど、けっして安くもないので、無駄遣いはできず、発光させたくてうずうずしていた。巻き上げレバーと連動しているというのは、記憶違いなのかもしれない。いずれにせよ、マジキューブの部分は、好きなギミックだった。
この部分に挿す、スティックの画像もあった。スティックを挿すと、少し高い位置から発光させることができる仕組みで、これも楽しかった。実用性はともあれ、合体ロボ的なギミックは魅力的なのである。
三脚穴とレリーズ穴もある。これは使った覚えがない。家には三脚がなかったのか。当時の私なら、レリーズ穴があるという理由だけで、使いもしないレリーズを小遣いで買いそうな気もするが、その記憶もないので、これらの穴の意味がわかってなかったのかもしれない。
距離設定のダイヤルには、CLOSE-UPの文字があるけれど、これも使った覚えがない。1.5m、4m、∞という文字もあるが、これすら意識していたかあやしい。適当でも、それなりに写ったのかもしれない。前面についているBACK LIGHT +1 -1という、露出補正にいたっては、いまはじめて知ったという感じだ。
リコマチック 110X ポケットデラックス
110と書いて、ワンテン。別の名をポケットカメラ。語感も未来でカッコよかった。135やら120やら126やら、フィルムの規格に番号が用いられていることも知らなかったので、110だけが特別だと思っていた。なんといっても、日本で110は、そもそも特別な番号だし。
規格としても110は、長く使われた方ではないだろうか。初代の写ルンですにも使われていた。110を使うキーホルダータイプのトイカメラが流行り、何回か使ったこともある。
海外のホテルのプールで、キーホルダータイプの110カメラを使っていたら、女性の従業員に声をかけられ、そのカメラを譲ってくれといわれたことがあった。20ドルくらいの値段を提示され、数枚撮影していたフィルムもつけたまま、通路の影でこっそり譲った。なぜこっそりだったのか。日本での値段は、フィルム込みで数百円くらいだったので、儲かるということより、このシチュエーションが面白かったのだろう。
これがおそらく、私が撮影した最後の110フィルムとなった。
PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。