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ララカメラ

9 オリンパスワイドスーパー

2022/09/12
上野修

スナップショットを撮るようになると、レンジファインダーのカメラが欲しくなる、というわけで、あれこれ調べてみたものの、1980年代前半には、あまり選択肢がなかった。

 

当然、ライカが買えれば一番いいのだが、並行輸入品という聞きなれない言葉が登場して、もしかしたら買えるかもという値段になってきたのは、1980年代後半だったように思う。
 

と、書いたところで、たまたま手元にあった1983年のカメラ雑誌を捲ってみたら、アンチック舶来専門店と称する店で、並行輸入新品ライカM4-Pボディ215,000円という広告があった。記憶というのは、当てにならないものである。ともあれ、その頃の自分にとっては、そのくらいの値段が、まったく手が届かないものだったということだろう。
 

反核運動が世界的に高まった1984年、渋谷公園通りの東京山手教会だったか、その周辺だったか、半地下のような場所で、写真関係者による反核チャリティーバザーのようなイベントがあった。

 

夕方訪れてみると、ほとんど売れてしまっていたが、台の上にまばらに置かれているカメラのなかに、オリンパスワイドがあった。あの作品はオリンパスワイドで撮られたものだ、というような話は聞いたことがあったので、ほんとうにこのカメラが、かのオリンパスワイドなのかと思いつつ、3000円か4000円だったか、4000円のものを3000円にしてくれたかのか、そのくらいの値段で手に入れたのだった。イベントでは、高名な写真家も売り子をしていて、ちょっと緊張したように思う。

 


オリンパスワイド(1955年発売)

 

やけにディテールが鮮明なこうした記憶も、全然あてにならないだろうが、渋谷のイベントで買ったことは確かなはずだ。
 

手元にちょうど使えるフィルターがあったので、それを付けて試写したところ、四隅がケラレてしまった。操作感もなんだか頼りなく、これでほんとうに撮れているのだろうか、ほんとうにこれがかのオリンパスワイドなのかという感じだった。とはいえ、レンジファインダーでスナップショットを撮る感触、一眼レフとは違った感触は味わうことができた。
 

バッグにメインの一眼レフとサブのオリンパスワイドを入れて撮っていると、あまりに感触が違いすぎて集中できない。オリンパスワイドは頼りないし、一眼レフは重厚すぎる、と感じるようになってしまった。けっきょく、オリンパスワイドを使っていたのは短期間、というか、フィルム数本くらいしか撮っていないように思う。とはいえ、一眼レフでスナップショットを撮る違和感が拭い切れなくなってしまったので、もう少ししっかりしたレンジファインダーのカメラが欲しいと感じる、大きなきっかけにはなった。

 


オリンパスワイドスーパー(1957年発売)

 

当時はオリンパスワイドが何種類もあることすら知らなかった。検索してみたところ、たぶん手に入れたのはオリンパスワイドスーパーだったのだと思う。これは、かのオリンパスワイドなのだろうか。
 

どうも話が雑然としてきた。
 

スナップショットとはなにかと考えつつ夕暮れの渋谷を歩いていたら、たまたま開催されていた反核チャリティーイベントで、高名な写真家から、かのオリンパスワイドを数千円で手に入れた。そのカメラがスナップショットを教えてくれたのだった。——この話はいずれこんな話として書き直そうと思う。

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