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ララカメラ

7 オリンパス XA

2022/07/04

上野修

オリンパス XAを手に入れたのは、いつ頃だっただろうか。
　

欲しいと思いつつ、買うきっかけがなく、広告やカタログを眺めていた期間が長かったような気がする。本体が32,800円、エレクトロニックフラッシュA11が6,000円、セットで38,800円という価格が高かったせいかとも思うが、当時のカメラとしては普通というか、超コンパクトサイズに仕上げたレンジファインダー機としては、むしろお買い得な設定だったかもしれない。
　

つねに手元にある超コンパクトサイズのカメラというのは、スマートフォン時代の現在ではただの現実でしかないが、フィルムカメラ時代には夢だった。そうした夢が、スパイカメラと呼ばれたミノックスなどを生み出してきたのだろうが、特殊すぎるカメラだったため、存在自体が夢のようなものだったともいえよう。
　

XAは、もっとも普及している35mm判フィルムを使用しつつ、その夢をある程度現実化したカメラだった。35mm F2.8のレンズ、絞り優先AEといったスペックも本格的、赤いフェザータッチのシャッターボタンや、引き出すとカメラが安定するセルフタイマー用のレバーなどの、ギミックもよかった。

1979年5月の発売からしばらくして入手して、けっこう長い間持っていたと記憶している。しかしながら、例によって、このカメラで撮った記憶がほとんどないし、撮った写真もほとんど残っていない。
　

周辺光量が落ちる、やや甘めの描写が気に入らなかったからかもしれないが、それだけではないだろう。評価が高かったカメラにもかかわらず、このカメラで撮影された作品をあまり見たことがない。XAだけで撮影された写真集などもあっていいように思うが、それも見たことがない。これは私が無知なだけで、あるのかもしれないけれど。
　

ふりかえって考えてみると、コンパクトカメラで気軽にパチパチ作品時代がまだ到来していなかったというのが、もっとも大きな理由なのかもしれない。気軽にパチパチ時代の代表的なカメラである、コニカのBiGminiシリーズが登場するのが、1989年。XAは10年ほど早すぎたのだろう。
　

XAの完成度は圧倒的なものがあるが、なかでもすばらしいのが、ケースをスライドさせると撮影可能になるバリアー式レンズカバーである。持ち歩くには欲しいが、撮影には邪魔になるケースとレンズキャップを不要にしたアイデアは見事だ。
　

アメリカでジャケットに入れていたXAを失くしてしまい、翌日に落としていそうな草むらで発見したことがある。まったくどこも壊れていなかった。運もよかったのだろうが、バリアー式レンズカバー、プラスチック素材のボディの強さのおかげだったとも思う。

^{オリンパスXA4}

オリンパスのサイトを見たら、「カプセルカメラXA」という名称でシリーズが掲載されていた。この名称はなじみがないが、発売当時もこの名称で呼ばれていたのだろうか。シリーズは5機種あり、XAのほかに、XA4も入手したことがある。28mm F3.5のレンズを搭載したワイド機で、パリ取材のために買ったのだった。
　

こちらは、フラッシュとのセット価格は47,300円だったが、高いと思った記憶がないのは、1985年の発売からしばらくして買ったので、割引率が高かったのか、仕事用だったので価格を気にしてなかったのか。当時は28mm搭載のコンパクト機が少なかったので、選択の余地がなかったということもあるだろう。

28mmは会場写真を撮影するのにぴったりで、XA4なら大げさにならないのもよかった。最短距離30cmのマクロ撮影も可能で、付属のストラップで距離を測るギミックは、楽しいだけでなく、実用的でもあった。
　

XA4で撮ったパリの写真は、なぜかすべて傾いていた。しばらく理由がわからなかったが、なんのことはない、ファインダーが曲がっていたのである。新宿5丁目の野村證券ビル9階にあったオリンパスのサービスステーションで修理してもらった記憶がある。たしか、写真誕生150周年で盛り上がった1989年のことだったと思う。