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時評

7 身振りと音

2022/06/20
上野修

コロナ禍であり、半導体不足であり、円安であり、値上げラッシュである。
 

アップルの開発者向けイベントWWDC 2022の基調講演が、日本時間6月7日午前2時から開催され、そのなかで新チップM2搭載のMacBook Airが発表された。価格は、アメリカで1199ドルから、日本で164,800円(税込、以下同様)からということで、円安を反映した価格改定も行われた。併売されるM1搭載のMacBook Airは、アメリカでは1099ドルから999に値下げされたが、日本では115,280円から134,800円への値上げとなった。ちなみに、7日の東京外為市場では、円相場が一時1ドル132円台まで値下がりし、20年2ヵ月ぶりの円安水準だった。


この傾向が変わらなければ、9月発売が恒例のiPhone新モデルも、かなり高くなるだろう。現在の価格は、iPhone SE 64GBモデルで57,800円、iPhone 13 Pro Max 1TBモデルで194,800円である。
 

展覧会入場料も、2,000円超えがめずらしくなくなってきた。東京国立近代美術館の『ゲルハルト・リヒター展』(6月7日~10月2日)の一般入場料が2,200円。東京国立博物館の『沖縄復帰50年記念 特別展「琉球」』(5月3日〜6月26日)が2,100円。三菱一号館美術館の『ガブリエル・シャネル展 Manifeste de mode』(6月18日~9月25日)が2,300円。
 

写真関連の展覧会では、アーティゾン美術館の『写真と絵画−セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策』(4月29日〜7月10日)がウェブ予約チケット1,200円、当日チケット1,500円。神奈川県立近代美術館葉山館の『アレック・ソス Gathered Leaves』(6月25日〜10月10日)が1,200円。東京都庭園美術館の『蜷川実花 瞬く光の庭』(6月25日〜9月4日)が1,400円。東京都写真美術館の『アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真』(5月20日〜8月21日)が700円、『TOPコレクション メメント・モリと写真』(6月17日〜9月25日)が700円、『岩合光昭写真展 PANTANAL』(6月4日〜7月10日)が800円で、3展のセット券が10%引の1,980円。カメラ雑誌では、5月19日発売の『CAPA』6月号が特別定価で税込1,100円。コダックのフィルムは、7月出荷分から一律20%値上げとのこと。
 

参考までに、ほかの価格をいくつか参照してみよう。東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの1デーパスポートが7,900円〜9,400円の価格変動制。価格変動制は2021年3月から導入され、8,200~8,700円の料金が同年10月1日に改定され現在の価格になっている。大手シネコンでの映画鑑賞料金が1,900円。これは、2019年に1,800円から変更されたもので、26年ぶりの値上げだったとのこと。ネトフリことNetflixの料金は、ベーシックプラン990円、スタンダードプラン1,490円、プレミアムプラン1,980円。アマプラことAmazonプライムは、月間プラン500円、年間プラン4,900円。
 

ところで、そうしたサブスクリプションでアメリカのドラマを見ていると、気になることがある。刑事物などで潜入取材しているのに、iPhoneのシャッター音が鳴りまくるのだ。よく知られているように、日本と韓国以外では、iPhoneをマナーモードにするとシャッター音が鳴らない。なぜマナーモードにしないのか、と思ったが、音が鳴らないと写真を撮ったことがわからないという演出上の理由だろう。
 

同じように、iPhoneの着信音が鳴っているのも、演出上の理由に違いない。デフォルト設定は、初期は「マリンバ」、2013年のiOS7からは「オープニング」、現在はモデルによって「反射」になっているらしい。らしいというのは、考えてみると、もう何年も着信音を気にしたことがないからである。人が集まる場所はもちろん、街中などでもいつの間にか着信音を聞かなくなっている気がする。ドラマに登場するのも「マリンバ」と「オープニング」が多い印象があるのは、そのあたりが着信音として認識される共通の音だからだろう。
 

現実の世界では、シャッター音も着信音も、オンオフできる電子音になって久しい。写真を撮る身振り、電話に出る身振り、そしてそれにまつわる音は、消えつつある、とまではいかなくても、誰もが認識できる共通のものではなくなってるのかもしれない。

(2022年6月記)



2020年10月上旬 撮影地不明

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