それにしてもコロナ禍である。
この季節、写真関係者にとって大きなできごとは、やはり2月下旬に開催される、恒例の「CP+」だろう。2020年の「CP+2020」は、2月頭には開催予定だったものの、14日に中止が決定された。2021年の「CP+2021」は、オンライン単独開催の「CP+2021 ONLINE」となった。2022年の「CP+2022」は、72時間以内に取得したPCR検査の陰性証明の提示など、感染症対策を実施した上でのパシフィコ横浜会場開催と、オンラインのハイブリッド開催を予定していたが、オミクロン株の急激な感染拡大により、2月7日、オンライン単独開催が発表された。つまり、パシフィコ横浜会場での開催は、3年連続で中止となってしまったわけだ。
ところで、コロナ禍といえば、先日ひさしぶりに映画館に映画を見にいった。事前予約で迷うのは、どこの座席を押さえるか、である。いいポジションの席は、早めに押さえられていく。ということは、その周辺は、密になっていく可能性も高い。密になりにくい、隅の席なども、早めに埋まっていく。そうしたすでに押さえられた席から距離があり、かつ、見やすそうな席はどこだろう。などということを考えていると、映画を見るより、席を選ぶことに熱心になっている自分に苦笑してしまう。
じっさいに映画館に行ってみると、心配する必要がないくらいガラガラで、いまどきのシネコンは、どの席であっても見にくかったり、足元が狭いということもない。かなり斜めの席から見ていたが、大画面なので、それもあまり気にならなかった。
その日見た映画は、暗めのシーンがけっこうあったが、暗すぎて見にくいということもなく、この時評の2回目で書いた映画の画面があまりに暗くて気になったのは、やはり映画館のせいだったのかと思った。とはいえ、こういうことを思っているというのは集中して見ていないということでもある。
もともと私は集中して映画を見ることができない。というか、集中していると、いつの間にかまったく別のことを考えてしまう。その日も、何回か腕時計を見てしまった。30分くらい経ったかなと腕時計を見ると、ほぼ正確に30分経っていたので面白くなってしまった。こういうこともめずらしい。途中で、ああ、このように大きなスクリーンを見るのは幸せなことだなと一瞬思ったが、せっかく映画館に来たのでそう思いたかったのか、ほんとうにそう感じたのか、さだかではない。
係員が定期的に会場を見に来ていた。おそらく感染対策のためだろうと思ったが、なにをしているのかわからなかった。もしかしたら、以前からそうしたチェックはあったのだろうか。今気づいたが、このチェックが30分間隔で、それが自分の目安になっていたのだろうか。
肝心の感想だが、入りこむとポヨポヨしちゃう映画、とメモってあった。ということは、私は入りこんだのか、入りこまなかったのか。きちんとしたメモより、案外こういうメモの方があとでいろいろ思い出せたりする。現にいま、思い出しているように。
あえてそこに足を運び、暗闇のなかでじっとスクリーンを見る。もともと映画館で見る映画は、儀礼的な要素(という言葉が適切かどうかわからないが)も多い。写真展はもっと自由なように思えるがそうでもない。入口も出口も決まっているし、たいていの場合、壁に沿って見ることになる。現在は、それにアルコール消毒と、ときには検温が加わり、芳名帳を工夫していたりする。
アルコールを手につけ、こすり合わせる消毒は、どこか儀礼のようでもある。これがなくなった時が、コロナが落ち着いた時ということになるのだろうが、その時、写真展はかつてと同じものに戻っていけるのだろうか。
(2022年3月記)
2020年3月上旬 浅草
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