本日のレンズ〈ジュピター8M キエフマウント〉
わたしはロシアのカメラが好きで、主にキエフ60などを使っています。どこか絵画的な、独特な写りになるような気がして、インダスターなどのロシアレンズもとても好きです。
いつもはフィルム機のキエフ4aで使っているジュピター8Mを、本日はソニーのα7Ⅱにつけて、一人で散歩に出てみました。
どんなジャンルにも言えることですが、初心者に厳しい場所って、実際、ありますよね。(ここはお前が来るところじゃねえ)(勉強してから来い)(陰の者立ち入り禁止)というオーラを放つ場。怖くて入れません。今後、わたしがコラム内で紹介する場所は、全部、初心者フレンドリー、かつ一人でも入りやすい場所なのでご安心ください。コミュニケーション能力ゼロの陰気な作家が勧めるお店やギャラリーです、それはそれは初心者にも優しかろうというものです。
まず神田駅からスタート。本日は小伝馬町・馬喰町のギャラリー街に行くのですが、その前に絶対に寄りたいところがあります。
神田駅から徒歩5分のTHE BASE POINT。こちらは、黒白銀塩写真製品の専門店です。
神田駅すぐのTHE BASE POINT。(絞りF5.6・ 1/320秒・ ISO200)
店内はイルフォード・フォトのフィルムだけではなく、現像薬品なども揃っています。印画紙もそれぞれに見本があるので、仕上がりの質感などが、とてもわかりやすいのもおすすめ。わたし自身、暗室に入ってプリントするのは好きですが、体系的に学んだわけではないので、いろいろ疑問に思っていることがあります。店長の神谷さんは、撮影のこと、暗室のこと全般に詳しいだけでなく、初心者にも優しいので、質問しやすく、とても助かっています。
THE BASE POINT内部。イルフォード・フォトの製品がそろいます。(絞りF5.6・ 1/30秒・ISO200)
店内にはフィルムカメラもあります。レンズ付きフィルム等も販売中でしたので、今この瞬間、いきなり思い立ってカメラを始めてみたいと思った方も安心です。現像サービスもあり、身一つで行けますよ。モノクロ写真、楽しいのでぜひ。
レンタル暗室もあって、初心者向きのプリントワークショップも開催されているとのこと。詳しくはホームページをどうぞ。
本日わたしは、イルフォード・フォト デルタ3200のフィルムを2本買いました。これも、併設のギャラリーで展示していた夜の作品がとても気に入って、「いいなあ、あんな風な作品をわたしも撮ってみたいです」と、店長の神谷さんに聞いて、教えてもらったフィルムです。超高感度フィルムのため、夜も手持ちで撮れるという面白さ。バライタの一番マットな、イルフォード・フォト マルチグレードFB クラシック マットと、イルフォード・フォト デルタ3200はわたしの、「トンカツとご飯」みたいな最強の組み合わせです。
THE BASE POINT公式ツイッターでも暗室の面白さや、プリントのコツを伝える動画などがよく公開されていますので、ぜひチェックしてみてください。
https://twitter.com/basepoint4696
購入したフィルム、イルフォード・フォト デルタ3200 プロフェッショナル
それから小伝馬町方面へ。カメラを持って、途中気になったものを撮りながら徒歩でぶらぶら10分。路地に入ってみるのも面白いですね。まず最初に、いつも気になって撮ってしまう、見事な緑のおうちのすぐそば、アイアイエーギャラリーへ。本日はたまたまお休みでしたが、路地に面した大きな窓のある、とても入りやすいギャラリーです。初心者からでも気軽に始められる公募展企画やワークショップなどが頻繁に企画されていて、活気があります。わたしも「フォト茶展」や「駄カメラグループ展」などに、たびたび参加しました。ふらりと訪れるのも楽しい。ホームページはこちら。
https://www.facebook.com/iiagallery/
アイアイエーギャラリー。(絞りF2・ 1/320秒・ISO200)
アイアイエーギャラリーのすぐ先、角を曲がったビルに、ルーニィ247ファインアーツがあります。
本日の展示は、櫻井朋成写真展「パリの青空 et バカンスの緑」。
フランス在住の写真家である櫻井さんの、エリオグラビュールの作品は、毎回楽しみにしています。今回の「パリの青空 et バカンスの緑」も、パリの一瞬の時間が、銅版に封じ込められた魔法みたいで素敵でした。エリオグラビュールとは、銅板を凹版にしてプリントするという古典写真技法のひとつで、独特な味わいがあります。スマートフォンごしの画像ではわからない質感だと思うので、ぜひ直に、プリントでご覧になっていただきたい(櫻井さんの作品はルーニィにて保管中。事前に連絡していただくと、エリオグラビュールの作品がご覧いただけるそうです)。
ルーニィ247ファインアーツ入口。(f2, 1/40, ISO200)
櫻井さんのベビーローライも、触らせていただきました。櫻井さんが持つといっそう可愛いですね。撮影時の話や、活版の話などを伺いながら作品を見るのも楽しく。
来年に行われる展示は、あのベルサイユ宮殿を貸し切りにして撮影予定とのこと。マリー・アントワネットの「食」をテーマとする作品展は、宮殿の関係者の方々もはじめてだということで、珍しい、面白そうだと話題になっているとか。次回もとても面白い展示となりそう。2022年4月「マリー・アントワネットは何を食べていたか(仮題)」、今から楽しみです。
櫻井さんのベビーローライ。
お隣の部屋では、北尾辰也写真展「COSMIC EYE」を。
ギャラリーの部屋が変わると、一気に空気が変わるのも面白いですね。
一面、海がありました。ギャラリーでは、居合わせた方と一緒に鑑賞することで、新たな楽しみや見方が生まれるのも面白いなと思います。ちょうど居合わせた方から「歩くと波が動いて見えますよ」と言われて、一緒に部屋を行ったり来たりしました。本当に作品の中の波が打ち寄せているように見えて面白く、何度も作品の前を行ったり来たり。ドローンで撮影されたという、ものすごく精細な海と波。それでいて、地球の外の海にも見えてくる、不思議な存在感の作品でした。
じっと見ていると、波が岩に打ち寄せる音がしてこないのが、不思議なくらいでした。ドローンで撮影された海を見ているうちに、なんだか海の中に飛び込んでみたくなったのです。わたしの中にもある、太古の海の記憶に響くみたいな……。
今後もルーニィでは素敵な展示の予定がぎっしりと。こちらのホームページで、ぜひチェックしてみてください。
ところでみなさん大切な絵や写真、絵はがきや思い出の布、ポスター、その他諸々の作品を手に入れた時って、どうやって飾っていますか。もちろんそのまま壁にピンでとめてもいいですし、自分で買った額に入れて飾るのもいいですが、一度、プロにお任せしてみるのも素敵かと。
ルーニィ247ファインアーツ公式ツイッターでは、「額は”納めるための枠”というだけではもったいない」と、額装についてもたくさん紹介されていて、額装って本当に奥が深いんだなと、見るたびに思います。額一つで雰囲気ががらりと変わったりする額装のたのしさ、ぜひ、公式ツイッターものぞいてみてください。
https://twitter.com/roonee247fine
ルーニィはギャラリーですが、作家もののアクセサリー、小物や雑貨、額などの常設展示もあったりして、ふらりと寄ってみるのも楽しいです。(わたしはスヌードとかピンとか、てぬぐいとか、かわいいものがいつもたくさんあるので、行く度にちょいちょい買っちゃいます。どれも愛用中。今度は宮井譲さんの、かっこいい額を狙っています)
ルーニィを出てひと休み。すぐ前の竹森神社でお参り。
カフェ「BUTTERFLY effect」で飲んだ、アイスコーヒーがとても美味しい。カフェですがいろんな種類のこだわりタオルが販売されていました。
カフェBUTTERFLY effect。(f5.6, 1/40, ISO200)
その先徒歩1分、KKAG Kiyoyuki Kuwabara Accounting Galleryに到着。
KKAGはビルの佇まいもとても好きで、レトロビル好きなわたくし、行く度にわくわくします。
KKAG Kiyoyuki Kuwabara Accounting Gallery
楽しみにしていた、田川清美写真展「素顔の夏目雅子」へ。夏目雅子さんが綺麗だということは知っていましたが、写真家の田川さんが撮られた夏目雅子さんは、レンズ越しなんですけど、目が合って胸がぎゅっとなる感じがしました。
きょうびのアイドルや芸能人の方も、それぞれみなさんとても綺麗だったり、可愛かったりします。でも、彼女らには東京のどこかで出会えるような気がするのに対して、何というか、夏目雅子さんは、生前でも、どこを探しても絶対出会えないような気がするタイプの美しさだなと。田川さんの写真によって、こうして作品として後世に残っていて、今回KKAGで観ることができ、本当にいい機会だったなと。
ああ、この世にはもういないんだ、という切ない感じが、いまも胸に残っているのですよね。
KKAGでは今後もいろいろな展示があり楽しみです。水・木・金・土の午後3時からと、オープン時間が独特なので、行く前にはホームページでチェックを。
(KKAGは会計事務所と融合したギャラリーであり、代表の桑原清幸さんは会計・税務の専門家でもあるため、この時間帯のようです。)
ところで、桑原清幸さんが執筆された、クリエイター向けの本「令和版 駆け出しクリエイターのためのお金と確定申告Q&A」は、わかりやすくおすすめです。税金のあれこれの計算が大嫌いなタイプは、わたし含めフリーランスに特に多いと思うのですが、避けては通れない申告、独立前にぜひ一読を。
https://honto.jp/netstore/pd-book_30004848.html
KKAGでは、DMが普通のはがきサイズより一回り大きくて、質感もおしゃれ、家で鑑賞したり飾ったりするのにも、とてもいい感じのDMであることも好きです。
田川清美写真展「素顔の夏目雅子」DM
昼過ぎから出て、夕方までのたっぷり5時間のこのコース。日常を忘れてカメラを持ち、ひとりでぶらぶらするのは本当に楽しいです。
カメラを持っていない方も、THE BASE POINTでレンズ付きフィルムを調達→小伝馬町・馬喰町でギャラリー巡り→戻って現像をTHE BASE POINTへ、というコースで、たっぷり一日楽しめるかと。
今後も「一人で行く、オールドレンズの散歩道」、ぼっち作家が、これからいろいろなところにひとりで巡ってまいります。お楽しみに!
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