top コラム一人で行く、オールドレンズの散歩道第3話 五時間コース 上野動物園・85ミリレンズ一本しばり

一人で行く、オールドレンズの散歩道

第3話 五時間コース 上野動物園・85ミリレンズ一本しばり

2022/01/25
柊サナカ

ソニーα7Ⅱにジュピター9をつけたところ。このアダプターはmukカメラサービスで購入したマウントアタブターで、接写もできるすぐれもの。

 

本日のレンズ<ジュピター9 M42マウント>


毎度毎度すみませんが、やはりロシアレンズが好きですね。巷ではロシアのゾナーとも言われているらしいジュピター9、いつもはペンタックスSPにつけて愛用していますが、本日はソニーのα7Ⅱにつけて、上野動物園に行ってみることに。
なんで動物園にジュピター9、しかも85ミリなんだとお思いかもしれません。本来ならもっと望遠レンズを準備するべきなのでしょうが、本日は子連れ。レンズ性能と機動性とをてんびんにかけると、コンパクトなものが、とりまわしも良いだろうと判断しました。さて、本日85ミリ一本しばりで、どんな写真が撮れるでしょう。

 

ジュピター9 2/85

 

上野動物園は久しぶりでした。密を避けるために、土日は入場制限がかけられ、予約も数秒のうちに埋まってしまいます。
しかし、この上野動物園に来てびっくり。上野動物園こそ、カメラの聖地ではないかと思うくらいのカメラ率だったのです。コロナ禍以前に来たときには、みなさんスマホやタブレットをあたりまえのように掲げていて(ああ、カメラ持ってる人、なんだか少ないよなあ……)と、業界の行く末を思い、寂しい気持ちになっていました。それが嘘のようなこのカメラ率。このカメラ勢揃いの景色を、カメラメーカーの方や、関係者のみなさんにもお見せしたかったくらいです。


小ぶりなミラーレスカメラにズームレンズを付けた奥様、600ミリほどもある超望遠を二三台首から提げているベテラン勢、三人連れのカメラ女子が、揃ってバリアングルで腕を伸ばし、柵の上からヤマアラシを狙っていたり。コンパクトデジタルカメラのお父さんも。(さすがにフィルムカメラはあまり見かけませんでしたが)
よくよく考えてみると、動物園の動物ほど、スマホやタブレットでは満足に撮れない被写体もありませんよね。コロナ禍以前は人も多すぎて、なかなか大きなカメラを構えて撮影、というわけにもいかないような混み具合だったのが、入場制限のおかげでそれほど混まず、見物人の数も以前よりも少ないせいか、心なしか動物たちものびのびと動いているようでもありました。

 

写真撮影は、個人の利用範囲内の撮影ならご自由に、というところが多いですが、写真撮影に許可がいる場所もたくさんあります(美術館など)。わたしもこの連載を始めるまで知らなかったのですが、特に商用撮影の場合は、事前に企画書を提出し、その建物以外に、敷地の管理者にも話を通す必要性がある場所も。

 

上野動物園外観

 

さて、上野動物園に写真撮影の許可を申請しようと思って調べてみると、「各公園への申請が必要となるのは、撮影目的が営利・非営利に関わらず、公園の一定の場所を一定の時間、排他的、独占的に使用するような場合です」とありました。なるほど、人の流れを邪魔しない撮影なら、自由に撮影してもいいということのようです。そういう点でも上野動物園は、カメラ・写真好きに優しいですね。
ただ、上野動物園ツイッターでも、動物へのフラッシュは強いストレスとなるので、絶対に禁止ということでお願いがありました。調べてみると、フラッシュが嫌なあまり、観客につねに背を向けるようになってしまった動物もいたとか。気の毒に……。
入り口入ってすぐが東園パンダ舎で、並ばずに見られますが、「カメラは撮影できません!」と警備員の方が声を上げておいででした。(11月20日から写真撮影ルールが変更になったようですので、詳しくはHPを。「西園パンダのもり」はパンダ撮影OKのもよう)。というわけで、ルールを守って存分に写真を撮ろうではありませんか。

 

小象のアルン。よく動きます。(ソニーα7Ⅱ、ジュピター9、f5.6、1/2500、ISO100)

 

まずアジアゾウから。子象アルンちゃんがとても可愛い……。可愛いのですがやはり子供、奥へ手前へ走ってちょこまか動きます。オートフォーカスのないわたくし、ピント合わせに苦戦、(わたしはなぜジュピター9縛りで来たのか)と思ったほどでした。やはり85ミリの限界か、象が檻の近くまで寄ったときに、檻がくっきりと入ってしまいます。子象が奥に走り去ったところを狙ってようやくピントを合わせ、手前の檻を消すことに成功しました。
しかし象、よく見ると表情も豊かだし、親に甘えたりもして可愛いですよね。女性男性問わず、一人で撮影しに来ている人もたくさん見かけましたが、その気持ちがわかるなあと思いました。象の良い表情を捉えるまで、じっと待ってみるのも面白い。

 

クモザル(ソニーα7Ⅱ、ジュピター9、f5.6、1/500、ISO100)

 

動きの速いクモザルの仲間、ジェフロイクモザルも、木の上をあっちへいきこっちへいき翻弄されます。85ミリでは柵ばかり撮れる。行動パターンで待ち構えておいて、柵を前ボケのようにして撮るのはなかなか難しいですね。上手く撮れたときには達成感があります。撮ってみてはじめて、そりゃみなさん望遠レンズで来るわな、と思いました。こうなったらオートフォーカスのレンズも欲しい。動物園でこんなに物欲を刺激されることになろうとは……。そのほかにも、サル山のニホンザルをじっくり眺めたり、シロクマと目が合うまで待ったり。アザラシの昼寝を眺めて和んだり。
鳥類などは特に柵が細かく、やはり手前の柵が気になって、もしかしてこれをフォトショップで消せやしないかと頑張ってみたのですが、柵の間隔が狭いせいもあって、全体が不自然になってしまい諦めました。トーンカーブで柵を目立たなくしてみようとあがいてみます。

 

猿山のニホンザル(ソニーα7Ⅱ、ジュピター9、f5.6、1/600、ISO100)

 

シロクマ(ソニーα7Ⅱ、ジュピター9、f5.6、1/1250、ISO100)

 

アザラシ・アシカの海では、アシカが勢いよく泳いでくるたびに見物人の子供も大喜びで、通るたびに歓声が上がります。アシカ自身もなんとなく人間の反応がわかるのか、何度も通ったりして、こちらを見ている様子でもありました。

 

ちょうど紅葉の時期で、動物園には動物以外にも美しい場所も多く、見所も多かったです。枯れた不忍池の蓮も、夏にはない趣がありました。動物園にカメラ持っていくのがこんなに楽しいとは……。
動物園の動物を、主な被写体として撮影している方がいる理由もわかりました。推しの動物をずっと眺めて撮るのもいいだろうし、平日の朝から夕方までじっと一カ所で観察して、餌やりの時間を待ったり、一瞬のいい表情を引き出すのも楽しそうです。どこを向いても被写体の宝庫。動物園にカメラを持っていくと、時間が何時間あっても足りないほど面白い。不忍池の蓮が満開のころを狙ったりしてみても良さそうですね。

 

笑うアシカ(ソニーα7Ⅱ、ジュピター9、f8、1/400、ISO100)

 

こどもたち(ソニーα7Ⅱ、ジュピター9、f2、1/1000、ISO100)


上野動物園は、カメラ好きの人にとって、どんな人がどんなカメラを持っているのかを眺めるカメラ見物園でもあります。

半日ではとても足りなかったので、今度はオートフォーカスの望遠レンズを調達して、ひとり心ゆくまで上野動物園を堪能してみたいものです。

 

クジャク(ソニーα7Ⅱ、ジュピター9、f5.6、1/60、ISO500)

 

ペンギンたち。(ソニーα7Ⅱ、ジュピター9、f5.6、1/200、ISO100)

 

フラミンゴ(ソニーα7Ⅱ、ジュピター9、f5.6、1/200、ISO100)

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