top コラム一人で行く、オールドレンズの散歩道第4話 押上 寫眞喫茶アウラ舎 暗室満喫六時間コース

一人で行く、オールドレンズの散歩道

第4話 押上 寫眞喫茶アウラ舎 暗室満喫六時間コース

2022/02/22
柊サナカ

Super Takumar 55mm F1.8。扱いやすく好きなレンズです。

 

本日のレンズ〈スーパータクマー55ミリf1.8〉

 

今回のレンズはスーパータクマー55ミリf1.8にしました。ペンタックスSPについていた、こちらのスーパータクマー55ミリf1.8の写りが気に入り、M42マウントのレンズ全般にはまるきっかけとなったレンズなので、感慨深いです。
普及して数が多いため、お安く売られていることも多く、入門用レンズみたいな位置づけで紹介されることも多くあります。でも、それだけ普及するのは理由があるもの。デジタルに付けたときの写りの雰囲気も好きですね。というわけで、今回はこのお気に入りのスーパータクマーをつけて押上のアウラ舎に行ってみることに。

https://www.facebook.com/アウラ舎-588904351284456/

 

ソニーα7IIにつけたところ。

 

ところでみなさん、筆まめな方ですか? 年賀状に暑中見舞い、近況報告に安否気遣い、手紙やハガキなど書いてますか。わたしは、手描きの年賀状とかそういった、いわるる手のかかるものが大嫌いで、できればそういうものと無縁に暮らしたい。ハガキ買うのすら面倒。SNSのメッセージやメールですむならそれで済ませたいと、ずっと思っていました。
ところがあるときから、お便りを出すのが大好きになったのです。
この印画紙、イルフォード・フォト製品の、マルチグレードⅣ RCポートフォリオ ポストカードという、ポストカード印画紙のおかげで。

https://www.cybergraphics.co.jp/ILF_PAPER.html


カメラ・写真好きのみなさまは、撮った写真、皆さんどうされているのでしょう。SNSに掲載したり、展示したり、額装して飾ったり、写真集やカレンダーを作ったり、いろんな楽しみ方があると思うのですが、年に数回、自分の作品を人様にじゃんじゃん送りつけていい日――それが年賀状であり、暑中見舞いだと考えると、なんだかこう、ハガキを作るのも楽しくなってきませんか。
今年は何の写真で行こうかなと考えるのも楽しいです。最初の年は写真を撮って印刷屋さんに発注していました。ここ三年くらいは暗室で手焼きしています。毎年、年末になると、楽しみで仕方がありません。写真が趣味で良かった。

 

イルフォード・フォト、マルチグレードⅣ RCポートフォリオ ポストカードという、ポストカード印画紙とはどんなものかというと、切手を貼り、宛名を書くためのスペースがある面と、暗室で、モノクロ写真を引きのばしてプリントできる面があります。わたしは一回で、大体百枚から二百枚焼くので、eBayで大量にまとめ買いしていますが、枚数が少なければ、イルフォード・フォト製品を扱う、THE BASE POINT でも取り扱っていますので、どんなものか興味を持たれた方は、ぜひお店を覗いてみてください。http://www.thebasepoint.jp/

年賀状に限らずとも、多めにポストカードをプリントしておくと、一筆箋の代わりに使えるし、何かに添えるメッセージカードにもなるし、あると何かと重宝するのでおすすめです。「ああ、これ? 暗室で焼いたんだー」とか自慢げに語っちゃってください。


わたしはつねづね、もしも推しの芸能人やアーティストがカメラ・写真好きだったら、この手焼きのポストカード印画紙のファンレターは、何よりも刺さると思っています。毎年、このポストカード印画紙よ、どうにかして流行れ流行れ、地に満ちよと思っていて、普及してあちこちで売られるようにと念じているのです。(過去には月光や、他のポストカード印画紙もたくさんあったようですが、このご時世、ポストカード印画紙は、イルフォード・フォト製品ただ一つとなってしまいました。このイルフォード・フォトの印画紙は、これからもずっと残っていて欲しいものです)

 

暗室デビューにも、このポストカード印画紙はぴったりじゃないかなと思います。
壁やどこかに飾る大作をと思うと、身構えてしまう部分がありますが、ポストカードを作る、というと、どこか気楽に考えられるような気がしませんか。実用的な上に、ポストカードサイズだと、額装に使う額も、安価で素敵なものがたくさんあります。

 

暗室は、入っていると、時間の流れが早くなったかと錯覚するくらいに楽しいです。じゃあ、暗室やってみようかと思ったとき、家で引き伸ばし機などを全部揃えてというと、いきなり大変になります。薬剤もそうですし、引き伸ばし機もそう。暗室というからには、安全灯以外の光が入ってはならないので、なんらかの遮光の工夫が必要になります。終わった後の後片付けもいろいろ大変……ということで、わたしはレンタル暗室を利用しています。わたしの行きつけ暗室、一番お世話になっているのが、押上の写真喫茶、アウラ舎です。

 

アウラ舎の看板。看板までも可愛い。(SONY α7II,Super Takumar 55mm F1.8,f8,1/6400, ISO100)

 

アウラ舎外観。大きく取られた窓が開放的です。(SONY α7II,Super Takumar 55mm F1.8,f8,1/2000,ISO100)

 

こちらはリニューアルされて、2021年12月に、以前からあった二階暗室に加えて、新たに一階の暗室も増え、とても使いやすくなっています。バライタやカラー暗室にまで対応、仕上げに使うプレス機も完備、なによりアウラ舎の世界観、審美眼により、小物に至るまで、とても素敵な雰囲気で統一されているのも好きです。行かれる方はぜひお気に入りのカメラを。アウラ舎ではどこを切り取っても、目に心地よいものが写ります。

 

窓辺の椅子。(SONY α7II,Super Takumar 55mm F1.8,f5.6,1/5000, ISO100)

 

くつろげます。(SONY α7II,Super Takumar 55mm F1.8,f5.6,1/160, ISO800)

 

ライトも可愛い。(SONY α7II,Super Takumar 55mm F1.8,f5.6,1/160, ISO800)

 

アウラ舎の暗室は可愛いだけじゃなくて、バロイⅡ、フォコマートⅠc、Ⅱc、ダーストなどの機材もそろっています。これら引き伸ばし機の名前におおっ! となった読者の方はぜひぜひ訪れてほしいものです。田中長徳先生のエッセイを読んでいて、アウラ舎の名前がさらっと出てきたときも、びっくりしました。

 

一般的に、レンタル暗室には、引き伸ばし機がたくさん並んでいて、施設を数名で使うタイプと、個室の暗室のタイプがあります。一緒に焼いている人にアドバイスをもらえたりして、わいわいできるのは多人数のタイプですが、個室は自分のペースで黙々と焼けて、どちらのタイプにも良さがあります。アウラ舎は後者の、個室の暗室タイプです。今回わたしは、一階の新暗室に案内されました。こちらの暗室、コンパクトな分、すべて過不足なく手の届くところにあって、とても使いやすい。
今年のポストカード焼きは百枚、十時からスタートしましたが、新暗室があまりに使い勝手がよく、集中できたために、気がついたらお昼のランチにも行かず、ぶっ続けで午後三時までひたすら暗室作業を続けていました。
現像液の中で印画紙をゆらゆらさせていると、表面にふわっと像が浮かんでくる光景は、いつ見てもいいものですね。
百枚以上焼くと、乾燥自体にも一時間くらいかかるので、乾燥分の時間も見ておくと良いと思います。

 

暗室内も素敵ですよ。(SONY α7II,Super Takumar 55mm F1.8,f5.6,1/160, ISO6400)

 

引き延ばし機いろいろ。(SONY α7II,Super Takumar 55mm F1.8,f8,1/160, ISO6400)

 

眺めても楽しい。(SONY α7II,Super Takumar 55mm F1.8,f8,1/2000, ISO6400)

 

暗室作業中。(SONY α7II,Super Takumar 55mm F1.8,f5.4,1/8, ISO6400)

 

終わって水洗。(SONY α7II,Super Takumar 55mm F1.8,f8,1/100, ISO6400)

 

空腹でやりきったなあという疲労感の中で飲む、ハンドドリップのコーヒーの美味しいこと! アウラ舎ではコーヒーも本当に美味しいです。ギャラリー部は大きく自然光が入る造りになっていて、刻々と光が変化する様子も美しく。
アウラ舎は押上スカイツリーのすぐそばにあります。暗室の帰りはソラマチに寄って帰るのもきっと楽しいです。(アウラ舎と道を挟んで反対側の、ししまるうどんも、とても美味しいのでランチにオススメです)
アウラ舎では、押上で写真をいろいろ撮ってフィルムを現像し、暗室でプリントするという初心者向けワークショップも開催されていますし、変わったところではコーヒー現像の会などもありました。最新情報や料金等の詳細は、ぜひツイッターをチェックしてみてください。

https://twitter.com/AURA_sya

 

初心者からアマチュアの本格派、写真家の方まで、写真好きは誰もが楽しめる場所、アウラ舎。初回でレンタル暗室はちょっとハードルが高いなという方も、展示とカフェでくつろげますので、押上観光のコースにぜひどうぞ。
暗室に割烹着を着た猫背の女がいたらわたくしです。

 

押上アウラ舎はスカイツリーのすぐそば。(SONY α7II,Super Takumar 55mm F1.8,f8,1/2000,ISO100)

 

暗室作業後にカフェでまったり。(SONY α7II,Super Takumar 55mm F1.8,f1.8,1/160, ISO800)

 

暗室後に最高においしいコーヒー。(SONY α7II,Super Takumar 55mm F1.8,f1.8,1/160, ISO800)

 

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