top コラム一人で行く、オールドレンズの散歩道第5話 番外編 モノクロリバーサル自家現像
アドックススカーラ覚え書き

一人で行く、オールドレンズの散歩道

第5話 番外編 モノクロリバーサル自家現像
アドックススカーラ覚え書き

2022/03/22
柊サナカ

モノクロリバーサル、アドックススカーラ160BW。

 

この回ではいつも、カメラを持って、面白い場所に行ってみるということをやっていましたが、このコロナ禍で、計画していた場所がすべて臨時閉館となってしまったため、急遽、モノクロリバーサル自家現像について書き残しておこうと思います。

 

ご存じない方のために少し補足。いわゆる一般的なネガフィルムと、リバーサルフィルムというものが存在します。ネガフィルムは、そのままでは見ることが出来ず、プリントすることで始めて写真の形で見ることが出来るようになるフィルムです。
一方リバーサルフィルムは、もうフィルム自体が写真のようになっており、そのまま見てもとても美しいです。カラーが主ですが、モノクロのリバーサルフィルムもあります。 

 

ただ、このリバーサルフィルム、以前は広告媒体などで使われていたようですが、今やデジタルに取って代わられ、流通量はとても少ない様子。それゆえにフィルム自体も高いのですが、現像代もお高く、とくにモノクロリバーサルフィルムというと、普通の写真店では現像を受け付けておらず、特殊現像に対応できるプロラボのみとなっています。
あたりまえなのですが、けっこうなお値段がします。ケチなわたくし、なんとかこれを自分でできたらなあと思っていたら、シルバーソルトで、モノクロリバーサル自家現像キットがあるのを発見。ヤッタアと喜び勇んでこれを買いました。

http://www.silversalt.jp/index.php?main_page=product_info&cPath=6_7&products_id=732

 

アドックススカーラ現像キット。

 

なので、この話は主としてモノクロリバーサルフィルムを自家現像する人に向けて書いています。それ以外の人は、ケチなわたくしが自家現像に血の涙でのたうちまわる姿をお楽しみください。
まあ、わたしも変わった規格のフィルム(127フィルムなど)や、マニアックなカメラを使うときに、本も無いものですからネットが頼り、ある先人カメラオタク様のホームページにやっとたどり着き、その知識に何度も助けられたということがありました。なので、わたしのこの七転八倒の様子も、誰かの役に立つことを願っています。なんだかボトルに入れた手紙のようですね。

 

アドックススカーラ自家現像については、実は一度、某雑誌で書いたことがあり、アドックススカーラ自家現像キットの紹介もしておきながら、わたくし締め切り近くなってもまったく自家現像に成功せず、「筆者はこのキットで成功できませんでした」という結果が出てしまい、本当に悔いが残っていたのです。ここで雪辱が果たせて嬉しい。

 

 まずアドックスカーラ160BWが一本どのくらいかというと、大体1020円前後。
 アドックススカーラ リバーサル現像キットが6998円程度と思ってください。
 まずアドックスカーラ160BWを五本用意して、開始しました。


従来でのモノクロ自家現像は、現像液→停止液→定着液→水洗という手順です。
対してモノクロリバーサル現像は、第一現像→水洗→ブリーチ→水洗→クリアバス浴→水洗→第二露光→第二現像→水洗→定着液→水洗、と、手順だけでも一時間を超えるほど、たいへんなことになっています。

 

現像液。安全性の高いものになっているということですが、色はすごいですね。

 

現像風景。トロ箱で温度を保っています。

 

その上で、温度は二十四度を完璧に保ち、水洗の水の温度すらも二十度からプラスマイナス二度の範囲で温度を保つべし、とあります。難易度が高い……。
そのため、わたしはトロ箱と温水まで準備して、温度計で液温を細かくチェックしつつ、厳密にモノクロリバーサル現像を行うことにしました。
さあようやく一本目現像できた、いやしかし長かった……と思ったらわたくし、何かモヤモヤした、ただのわかめのようなモヤフィルムを生成してしまいました。
失敗! なぜ! こんなに真面目に温度を測ったことは無かったのに! と嘆き悲しみ、ケチゆえに失った金額と時間に具合も悪くなり、このお金があれば何が食べられただろうとじだんだも踏み、(もうこの現像液今すぐメ○カリに叩き売ろう……)とも思ったのですが、気を取り直してもう一回、挑戦してみることにしました。

 

どうやら、これは過現像のようなので、温度を二十度に下げ、現像時間も短く十分に。こんどこそうまく現像できただろう、よかった。今度こそわたしの努力が実った……と思いきや、できたのはできたのですが、なぜかポジフィルムではなく、仕上がりが白黒反転のネガフィルム。詳しい方に聞いてみると、ポジフィルム現像は、第一現像でまずネガ像を作る→第二露光でそのネガをもう一回感光させて、フィルムの上に反転したポジ像を作ることで、ポジフィルムの現像とするのだそう。つまりは第二露光あたりで失敗した模様。

 

もうこのあたりで気分的にグダグダになっています。こんな緻密な作業ができるなら作家なんてやっていません。

 

何これ……。

 

今度は何……。

 

さすがに凹んできました……。

 

できた、と思ったら、ポジではなくただのネガとして反転してしまった写真です。

 

ネガでも、一応写っていることは写っています。でもまだ完成ではありません。

 

続けて四本失敗したときには、貧乏性のわたくし、ほんとうに頭痛とめまいがして、もう無理……と半ベソで寝込みました。夢の中でも、わかめのようになった失敗フィルムが出てきたように思います。なぜわたしは一日手間暇かけてわかめを生成してしまったのでしょう。この行為に何の意味があったのでしょう、失われた時間とお金はもう戻っては来ません……。
気を取り直して後日、もう一度チャレンジ。ここでようやく成功を見ました。

 

ポジフィルムに挑戦する方向けに、ポジフィルム現像の失敗を重ねて得たコツのようなものを四点、ここに挙げておきます。

 

まず、温度。湯煎方式か、低温調理器等を利用して一定の温度に保つことが重要です。(低温調理器具そっくりの現像器具をネットで見かけました。それならきっと温度の問題は解決すると思います)

 

次に、水洗。通常の、水流を上から流すやり方ではなく、水を入れて三十秒攪拌、それから排出を八回繰り返すというフィル&ダンプ法、という方法で、各工程、できるだけしっかり水洗をすることが成功の鍵ではないかと思います。(これに気付かず、数回失敗しました)

 

その次に、薬液の攪拌。説明書には、ブリーチバイパスはゆっくり攪拌した方がいいとありましたが、ここは恐れずしっかり攪拌したほうが、うまくブリーチされたように思いました。(弱すぎるとブリーチが上手くいきません)

 

最後に、第二露光。第二露光で大事なのは、光源に向かって、現像タンクをほどよく傾けながら、ゆっくりと回すこと、傾けなかったり、傾きの角度が垂直に近ければ、光が上と下に集中することになって、仕上がりに上下でむらができます。(光の強さもチェックした方が良いです)
以上のことに気をつければ、失敗なくポジフィルム現像が完成すること間違いなしです。

 

でもまあ一番のポジフィルム現像のコツは、田村写真やシルバーソルトなどのプロに発注することじゃないですかね……

 

五本目にして、ようやくモノクロリバーサルとして完成したフィルム。長い道のりでした……。

 

やっと得られた画像。よい経験でしたがもうプロに頼みたい。

 

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