top コラム一人で行く、オールドレンズの散歩道第7話 世界らん展、花に囲まれる二時間コース

一人で行く、オールドレンズの散歩道

第7話 世界らん展、花に囲まれる二時間コース

2022/05/17
柊サナカ

本日のレンズ 

<コシナ・フォクトレンダー スーパーワイドヘリアー15mm f4.5 ASPHERICAL>

 

今回、このスーパーワイドヘリアー15ミリを使うことにしました。写真の大先輩から譲っていただいたこのレンズ、持っていたものの、日常で使うと広角過ぎて、使いどころがわからず、どうしたものかと思っていたのです。今回、会場が東京ドームシティ・プリズムホールということで、まあ広角の方が良いかなと、なんとなくチョイスしてみました。
結果、持っていって、とても良かったです。そうか、このスーパーワイドヘリアーは、こういうときにこそ使うのだなと、今更ながらわかり、良いレンズだなと改めて思いました。

 

α7IIに装着したところ。レンズの前玉が目玉のようにせり出しています。 

 

ところで花――中でも蘭は、皆さんお好きですか。わたくし、全く興味なかったんですが、今やベランダや窓際には、ぎっしり蘭がひしめくほどに蘭が好きになりました。夜な夜な、30分くらいかけて水をやったり、手入れするのが楽しくて仕方がありません。


園芸趣味なんて何が面白いの? という方もいらっしゃるでしょう。園芸は面白いですよ……。なにしろ、きちんと水をやったり、お世話をすればするほど、植物はすくすくと育ってくれるのです。手をかけたら、反発してグレてしまい、花の色が白から紫になったり、せっかくいろいろ手を尽くしたのに、へそを曲げて一ミリも成長しなかったりということはまずありません。なんと平和な世界でしょう。
努力すればするほど成果が目に見えるってほんと、いいですよね……。小説の世界も含め、創作の世界は、努力がそのまま目に見えて形になることは実に少ないです。努力したものの、残念ながら、花開かないこともあります。でも蘭はその点、手をかけた分、毎日の成果が目に見えるのです。心が癒されます。


そういうわけで、わたくしも、年に数回開かれる「らん展」に、ちょくちょく顔を出すようになりました。ふと見れば、らん展には、カメラを持っている人がわりに多くいます。それも、一眼レフに大砲のような望遠レンズなど。カメラ自体、数台提げている方もいるし、最新機種も見かけます。みなさんとても熱心に撮影していらっしゃる。どうやら、カメラ趣味沼と、蘭の趣味沼は近いところに位置しているのかもしれません。


らん展をご存じない方は、なんで望遠レンズと一眼レフのカメラなんて持っていくんだろうと思いますよね? らん展では、蘭の賞を受賞した、蘭の展示があるのです。テーブルのようなところに、賞を取った見事な蘭がずらりと並んでいて、とても見応えがあります。蘭は種類がとても多いので、巨大だったり、色が綺麗だったり、びっくりするような形のものもたくさんあります。それらは匂いも楽しめるようにか、柵やガラス張りの向こうではなく、手が触れることのできるくらい、近くに配置されています。つまりは撮影しやすい。

 

こんどこそ「らん展」にカメラを持って行こうと思っていたところに、ちょうど「世界らん展2022 ―花と緑の祭典―」が開催されました。
(HPはこちら→https://www.event-td.com/orchid/
このらん展は、日本のらん展の中でも、最大級の規模を誇る、盛大な蘭のお祭りなのです。らん展は入場無料のものも多いですが、こちらはチケット代が1700円ほどかかります。
わたしも予約チケットを購入して、行ってみることにしました。

 

「世界らん展2022 ―花と緑の祭典―」オーキッドゲート 

 

正面エントランスから入るなり、豪華絢爛なオーキッドゲートが目の前に広がります。色彩はすべて、びっしりと埋め尽くされた蘭によるものです。(ああ、これはカメラを持ってきて正解だった。15ミリを持ってきたわたしの判断は正解だった)と思いましたね。もうすでにその場にいる人が全員カメラ、もしくはスマホを出しています……。
ゲートの次には、スプリングバレー。高さ四メートルの壁一面に、色彩の奔流が。企画展示ゾーンを進むにつれ、本物の滝だって流れていますし、ここが都内だと忘れるくらいの眺めにうっとりです。α7IIとスーパーワイドヘリアーが休む間もないくらいに撮りつくしました。通常のらん展では見られなかった規模の巨大展示に大満足です。こんなにカメラ趣味が生かされる場というのもないでしょう。

 

企画展示の数々。

 

企画展示は毎回スケールが大きいそうです。

 

見渡す限り一面の花。豪華です。

 

突如現れた滝。


平日に来たのですが、やはり大人気の「世界らん展2022 ―花と緑の祭典―」、結構な人出でした。それでも動物園等と違う点は、とにかく視界を遮るものがないことと、蘭の展示数がとにかく多く、人がほどよくばらけるところ。被写体の蘭自体が近くにあることで、寄っても撮れるし、数歩退いて全体も撮れるのも楽しいです。蘭がよく見えるよう、ライトアップされているのもありがたい。
そう思えば今日は15ミリだけで来てしまったのですが、超望遠などで花の背景をぼかして撮ったりしても、とても楽しいだろうなと思います。蘭ばかりだけでなく、レンズに対しても物欲はつきませんね……。

 

石原産業株式会社が、15年以上の遺伝子研究開発の末、やっと完成した新品種の青い胡蝶蘭、ブルージーン(BLUE GENE)も、とても見応えがありましたし、ディサという見慣れない品種の展示も良かったです。ディサはあの南アフリカの秘境、テーブルマウンテンで発見された蘭だそうで、あまりに色鮮やかで、自然の神秘を思いました。

 

史上初、正真正銘の青い胡蝶蘭。神秘的です。

 

珍しい蘭「ディサ」。テーブルマウンテンに咲く花とあって、一年中低温+強光を保たないといけないらしく、一般で育てるのはとても難しい蘭のようです。


わたしも蘭を自分で育て出してから、わかるようになったのですが、植物は成長すると言っても、一足飛びに大きくなると言うことはなく、少しずつ、少しずつ大きくなっていきます。賞を取るような立派な蘭は、やはり目を引くような大きさであったり、密集具合であったりして、ああ、これを育てるのはどれほどに手間がかかったろう。毎日毎日、何年も大事に育てたんだろうなということがひしひしとわかって、胸が熱くなります。
蘭をご存じない方も、こんなにもいろんな種類の花の姿があるのだと楽しめると思います。


そして最後のお楽しみはお買い物コーナー。こちらは個性あるいろんなお店が出店しており、血湧き肉躍ります。覗いてみれば、蘭だけでなく食虫植物、アリ植物、サボテン、シダ植物など、ほんとうに豊富な種類が並んでいるので、どんな方も必ず何か気に入るものが見つかるだろうと思います。ずらっとお店と商品が並んでいるのは、カメラ市にも似ていますね。価格はカメラ市に比べて、比較的お財布にやさしいので、そちらも嬉しいところ。
ですが今日は、春休み中の子を連れていたので、いつも「無駄遣いはいけませんよ」と厳しく言っている手前、あれもこれも、それもどれも買おうというわけにも行かなくて、うむ。とベゴニアひと株を買って帰りました。

 

にぎわう買い物コーナー。 

 

わたくしの戦利品、花郷園さんのベゴニア、「マイスペシャルエンジェル」。天使の羽根のようで可愛いです。

 

「世界らん展」は毎年同じ時期に開催されていますし、他にもいろいろな規模のらん展があるので、次も探して行くつもりです。どんなレンズを持っていきましょう。
初日近くに行くと、展示された花も元気で、撮影にはよいようですよ。(お買い物は最終日には値下げもあるとか。それもカメラ市とちょっと似ていますよね)

 

 

さすがの日本大賞は、東京都の山本氏の手による、えびねの大株。

 

受賞した蘭を見る人々。みなさん熱心に鑑賞しておられました。

 

わたしが一番欲しかった胡蝶蘭の原種。素敵でした。

 

どうやって咲かせたのだろうと不思議なくらいの大株。

 

小さな蘭も素晴らしかったです。

 

あれ誰か立っているな、と思ってびっくり。

 

アレンジの賞もあって面白い。

 

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