東京駅八重洲に突如オープンしたK2+ Galleryに興味津々の方も少なくないはず。銀座も目と鼻の先の好立地でありながら、9月開催分は1週間3万円でギャラリーが借りられる。写真展を開こうと考えている人には願ってもない情報だ。
このギャラリーをプロデュースするのが、現在、ここで熊切圭介×熊切大輔 写真展「まぼろしのまち」を開催中の熊切大輔さんだ。
「この建物は八重洲の再開発で来年5月に取り壊しが決まっています。それまでの間、このスペースをギャラリーとして活用できないかとビルのオーナーから相談を持ち掛けられました」と大輔さんは話す。
元はオフィスであり、室内の照明は蛍光灯だ。敢えて何もギャラリー向けに改装することはせず、その代わり手ごろな価格で利用できるようにしようと考えた。
「僕もそうでしたが、コロナ禍中に写真展を企画した人は中止や期間短縮、来場者の数も伸びずフラストレーションを抱えています。まずは、そうした方に再展示のチャンスにしてもらえたらと思っています」
9月開催分の週3万円はキャンペーン価格で、通常は1日1万円を設定。1週間7万円だから、このエリアでなくとも破格の料金だ。
「学生にも使ってもらいたいので、彼らには週3万円で提供します」
もちろんこうしたレンタルだけでなく、ギャラリー独自の企画展やイベントも行なっていくという。
現在開催中の写真展「まぼろしのまち」(会期は8月31日まで)は父である圭介さんの写真をカラー、大輔さんはモノクロで展示した。コロナ禍にあった2020年、新宿区の施設で行なった初の親子展のリバイバルだ。
親子で東京をテーマにした2人展という依頼で、互いに近作から選んだら当たり前すぎると考えた。
「これまで父の写真に寄せられる感想には『古さを感じさせない』という声が多いんです。そこで父の写真は少し時代を遡ったところから選びカラーに、僕のは近年の浅草を撮ったモノクロのシリーズからチョイスしました」
例えば数十年前、首都高が建設中のカラー写真と、レトロ感が漂うモノクロの浅草を目にすると、自分の中にある時代感覚が歪んでいく。
「時間軸がねじれる感覚と、カラーとモノクロのコントラストなどが楽しめる空間を狙いました」
大輔さんは東京をテーマに据え、浅草、銀座、渋谷などの街を巡るように撮影している。浅草では古き良き東京を感じさせる風景に遭遇することが多く、それは以前からモノクロで収めてきた。
この1枚は最初、和服姿の2人の雰囲気に魅せられた。しばらく追いかけ、交差点を渡り始めた時、予想だにしなかったもう一人の登場人物が現れた。
父圭介さんから写真について直接教わったことはないが、ずっと写真を見てきて、「彼の目線は自然に入ってきているのかな」と話す。
「スナップシリーズの『刹那 東京で』では人の顔を写さないで撮ることが多い。その方が想像力が膨らんで面白いと思うから。今回、改めて父の写真を見ると、後ろ姿が多いことに改めて気づき、自分の中で答え合わせができたような気がしました(笑)」
場所は八重洲ブックセンターを越した一本目の小道を入ってすぐ。八重洲のこの街の佇まいが感じられるのも今だけだ。
【展示概要】
熊切圭介 × 熊切大輔 写真展「まぼろしのまち」
期間:2022年8月13日(土)〜8月31日(水)
時間:11時〜19時 無休
会場:K2+ギャラリー
住所:東京都中央区八重洲2-6-16北村ビル地下一階
最新情報と、展示の申込、問合せはhttps://www.facebook.com/thegallerytokyoへ。
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