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パリ、11月の熱狂 写真鑑賞レポート 「Policopies」など【後編】

2025/12/02
河島えみ

後編では、パリの街を歩き回って訪れた写真展についてレポートしたい。

 

【前編はこちら】

 
①ジュ・ド・ポーム国立美術館
 
まず、10時に向かったのはジュ・ド・ポーム国立美術館。フランスの写真家Luc Delahaye(ルック・ドラエ)の写真展が開催中だった。

 

美術館横の看板

 

パノラマのドキュメンタリー写真が特徴で、現実に少し手を加えて画面の情報量の強弱を調整しているのが面白い。

 

ルック・ドラエの写真展より

 

ジュ・ド・ポーム国立美術館の書店を覗くと、子ども向けの写真絵本コーナーが充実していた。東京都写真美術館には、ここまでたくさんの写真絵本はない。

 

ジュ・ド・ポーム国立美術館の書店の写真絵本コーナー

 

②approche(アプローシュ)
 
次に訪れたのは、ビッソン通りに位置するapprocheの会場。パリ・フォト開催中に国内外の新進作家を紹介する展覧会が行われている。2022年には横田大輔の作品が取り上げられた。

 

approche会場の外観

 

approcheの様子

 

③Policopies(ポリコピーズ)


写真に関わっている人であれば、一度は自分の写真集やZINEを販売してみたいイベントがPolicopiesだ。日本からはBOOK AND SONS、ギャラリー街道、Photobook as Object、ZEN FOTOが参加した(アルファベット順)。Tokyo Art Book Fairと雰囲気が似ていて、パリ・フォトに比べると手作りの温かみがある空間だ。

 

ゴミ箱の横に無造作に置かれた看板

 

ポスターのデザインがかっこいい

 

出展者と話し込む来場者たち

 

会場は船上とテントの2ヶ所に分かれている

 

④駅のホームの写真展


パリの数ヶ所の駅のホームでは、以下のように写真展示がされた。パリの街全体が写真一色になる。

 

駅のホームの両側の壁が展示スペースに

 

⑤パリ市庁舎


パリ市庁舎では、COP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で採択された「パリ協定」の10周年を記念してアメリカの現代アーティストShepard Fairey(シェパード・フェアリー・OBEYの創業者)の巨大ポスターが掲げられていた。写真イベントとは関係ないが、紹介したい。

 

シェパード・フェアリー「Earth’s future is our future」の巨大ポスター

 

⑥ショア記念館
 
2026年1月23日まで「ナチスはいかにして彼らの犯罪を写真に収めたのか。アウシュヴィッツ 1944年。」展が開催されている。なんと撮影しているのは、ナチスではなく雇われたユダヤ人だった。(フランス語が分からないので、もしかしたら一部を撮っていただけかもしれないが)
 
ショアとはヘブライ語で、「大惨事」を意味しフランスではホロコーストよりも「ショア」という言葉を使うそうだ。

 

当時の警察が利用したユダヤ人の名前、職業、住所を記録した資料

 

机に37インチほどのモニターが埋め込まれている。椅子に座ってヘッドフォンをすると、解説者が写真を取り出して状況を細かく説明してくれる映像が流れる。写真と鑑賞者の距離が近く、解説に合わせて視線を動かしながら見られるため、当時の状況が手に取るように理解できる。1人でキャプションを読むより効果的だ。

 

⑦アンリ・カルティエ=ブレッソン財団
 
朝から回っていると、日が暮れて18時前に到着した。2つの企画展が開催中だったが、ドイツの写真家Sibylle Bergemann(ズィビレ・ベルゲマン)の「The Monument」展が面白かった。1986年に東ドイツ政府の主導により建てられたマルクス=エンゲルス記念碑の建設過程を記録した女性がいたとは知らなかった。

 

アンリ・カルティエ=ブレッソン財団の建物の入り口

 

ズィビレ・ベルゲマン「The Monument」より

 

⑧MEP(ヨーロッパ写真美術館)
 
MEPでは4つの企画展が開催されていた。その中でも、「Edward Weston — Becoming Modern」と「Felipe Romero Beltrán — Dialect」の2つは興味深かった。
 
エドワード・ウェストンと言えば、ピーマン。だが、意外と犯罪者から風景写真まで幅広く撮っていた写真家だったことを改めて確認できた。これまで未公開だった写真も展示されていた。

 

エドワード・ウェストンのパートナーが被写体になっている

 

そして、今回のパリ滞在で最後に見たのはフェリペ・ロメロ・ベルトマンの「Dialect」だ。スペインのセビリアに不法滞在していたモロッコ人の青年たちが被写体だ。居住許可を取得する3年間、写真家は彼らと人間関係を構築し撮影した。また、「Recital」という19分の映像作品がとても面白かった。移民を規制・管理する移民法を3人の青年が読み、それが3つのテレビ画面に同時に流れた。

 

フェリペ・ロメロ・ベルトマンの「 Dialect」より

 

フェリペ・ロメロ・ベルトマンの「 Dialect」より

 

セーヌ川沿いで行われていたクリスマス・マーケット

 

私のレポートが見落としている写真展はたくさんあると思うが、少しでも雰囲気を共有できていたら嬉しい。

 

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