top スペシャルインタビュー自費出版写真集の魅力 河野和典『永遠のリズム』インタビュー

自費出版写真集の魅力
河野和典『永遠のリズム』インタビュー

2022/08/17
市井 康延
河野和典さんは写真が好きで日本カメラ社に入社。『日本カメラ』の編集長を務めたほか、写真集、ムック本などの編集を手掛けた。仕事の傍ら、50年以上にわたり自分の写真を撮り続け、今回、初めての写真集を制作した。写真集を作ろうと思ったきっかけや制作の過程などを聞いた。
——写真はいつから撮り始めましたか?

 

大学に入った1966年ぐらいからです。写真集にも入れた階段の写真は始めた頃に撮ったものです。土門拳の『古寺巡礼』を見て、鎌倉に三脚を担いで行きました。

 

——これまでに発表の経験は?

 

グループ展などには付き合いで参加しましたが、自分の写真で何かをしようとは思いませんでした。どうしようとも考えず、日々のことを折に触れ撮っていただけです。

 

——写真集を作ろうと思ったきっかけは?

 

古希を過ぎると、それまでとは心身ともに変わったのを感じました。折角、撮ったものがたくさんあるんだから、何か自分が生きてきた証を残したいと思い始めた。それが2~3年ほど前かな。これまで撮ったものはプリントとネガ、データは撮影カメラごとに年代順にまとめてあるので、それを見返しセレクトしました。

 

——雑誌はもちろん、写真集の編集経験もあるので、ご自分で編集しようとは思いませんでしたか?

 

たくさんの写真や写真集を見てきた経験から言っても、自分の写真は客観的に判断するのは難しい。目利きの人に編集を頼むのが一番だと思っていました。

 

——どのように作業を進めましたか?

 

編集の村上仁一さん(PCT)からデザイナーの加藤勝也さんを紹介され、私を含めた三人で何度も話し合いを重ねました。最初、私が絞り込んだ約300点でまとめたいと思ったのですが、村上さんから、さらに絞って100点くらいがいいのでは、と言われてこの形になりました。最初の写真集としては、これで正解だったようですね(笑)

 

——最初は、どんな写真集をイメージしていましたか?

 

最初は子ども、樹木、昆虫など被写体別に分けて組んでいたんですけど、それでは説明的で事典風だと言われて、何度も組み直していきました。異なる3人の目、感覚が入ることで、どんどん密度が濃くなり、これしかないという方向に収まっていくのを感じました。それでも自分の思い入れがある写真を外されるのは悔しいものですけどね。

 

——装丁が凝っていますね。

 

ちょうど2人の写真家から贈られてきた写真集がこのコデックス装で、ページがきれいに180度開き、ノドでけられない。この装丁にするならとカバーを付けました。

 

——カバーも印象的です。

 

村上さんのアイデアで、写真集に入れなかったカットを表紙に使いました。人形町にある「喫茶去快生軒」の椅子に、ブラインド越しの光が当たった光景を撮ったものです。植田正治さんの写真集『音のない記憶』(1974年、日本カメラ社)のカバーも参考にさせていただきました。

 

——印刷所はサンエムカラーですね。

 

いくつか候補があったんですけど、コストパフォーマンスが高いここに決めました。装丁にしても、印刷も、いろいろな情報を提示してくれた中から、こちらの要望に応えてくれたのがPCT(ピクト)でした。

 

——写真集の出来栄えはいかがですか?

 

期待以上でした。編集、デザイン、そして私の三者の力がうまく噛み合って良いものができたと思います。

 

——初めて写真集を制作したその手ごたえは?

 

入社してすぐ、東松照明さんの写真集『日本』(1967年)を買いました。出版社は写研で、東松さんの自費出版でした。予約を募って販売する方式で、今のクラウドファンディングの走り(笑)。ハードカバーですが、ほぼ真四角でシルバー色、小ぶりな凝った装幀でした。自費出版は基本的には自分の考え方に沿った本ができるということです。自分の表現を本にまとめたい想いはプロもアマチュアも一緒だし、カタチにしないと何も始まらないと思います。

 

——評判はいかがですか?

 

誰もが良いと言ってくれますけど、基本的には個人の好みですから、半分はお世辞だと思っています。僕は14年前からコーラスを始めたんですが、舞台に立ってそれぞれの合唱団の個性や違いがよく分かるようになりました。写真も同じだと今回あらためて気づきましたね。

 

これまで多くの写真集を紹介し、実際の制作にも携わってきたが、自分の写真集を作ったことで初めて見えた、感じたことがあるという。写真集をきっかけに東京・小伝馬町のMONO GRAPHYではじめて個展を開くことができ、会場では写真集やポストカードも販売し、自分の写真を通じて人と会話する手応えも得た。見せたかった写真はまだまだあり、「それはまた次の機会に」と話す。
河野さんのように自費出版写真集を作ることで、充実感とともに、多くの広がりが出てくるはずだ。

 

 

■河野和典 写真集『永遠のリズム Eternal Rhythm』
定価:6,000円(税別)
判型:128 頁/ 273 × 227mm /カラー/ハードカバー・函入り / 写真点数98点
※クロネコヤマト宅急便の60サイズでの発送となります。

ご購入はこちらから▶︎https://pctstore.base.shop/items/62144906

 

河野さんが出演した、MONO GRAPHYでのYouTube番組

前編▶︎ https://youtu.be/7_PaqyZhNzA

後編▶︎ https://youtu.be/bKOKIQ5NJHY

 

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