大学に入った1966年ぐらいからです。写真集にも入れた階段の写真は始めた頃に撮ったものです。土門拳の『古寺巡礼』を見て、鎌倉に三脚を担いで行きました。
グループ展などには付き合いで参加しましたが、自分の写真で何かをしようとは思いませんでした。どうしようとも考えず、日々のことを折に触れ撮っていただけです。
古希を過ぎると、それまでとは心身ともに変わったのを感じました。折角、撮ったものがたくさんあるんだから、何か自分が生きてきた証を残したいと思い始めた。それが2~3年ほど前かな。これまで撮ったものはプリントとネガ、データは撮影カメラごとに年代順にまとめてあるので、それを見返しセレクトしました。
たくさんの写真や写真集を見てきた経験から言っても、自分の写真は客観的に判断するのは難しい。目利きの人に編集を頼むのが一番だと思っていました。
編集の村上仁一さん(PCT)からデザイナーの加藤勝也さんを紹介され、私を含めた三人で何度も話し合いを重ねました。最初、私が絞り込んだ約300点でまとめたいと思ったのですが、村上さんから、さらに絞って100点くらいがいいのでは、と言われてこの形になりました。最初の写真集としては、これで正解だったようですね(笑)
最初は子ども、樹木、昆虫など被写体別に分けて組んでいたんですけど、それでは説明的で事典風だと言われて、何度も組み直していきました。異なる3人の目、感覚が入ることで、どんどん密度が濃くなり、これしかないという方向に収まっていくのを感じました。それでも自分の思い入れがある写真を外されるのは悔しいものですけどね。
ちょうど2人の写真家から贈られてきた写真集がこのコデックス装で、ページがきれいに180度開き、ノドでけられない。この装丁にするならとカバーを付けました。
村上さんのアイデアで、写真集に入れなかったカットを表紙に使いました。人形町にある「喫茶去快生軒」の椅子に、ブラインド越しの光が当たった光景を撮ったものです。植田正治さんの写真集『音のない記憶』(1974年、日本カメラ社)のカバーも参考にさせていただきました。
いくつか候補があったんですけど、コストパフォーマンスが高いここに決めました。装丁にしても、印刷も、いろいろな情報を提示してくれた中から、こちらの要望に応えてくれたのがPCT(ピクト)でした。
期待以上でした。編集、デザイン、そして私の三者の力がうまく噛み合って良いものができたと思います。
入社してすぐ、東松照明さんの写真集『日本』(1967年)を買いました。出版社は写研で、東松さんの自費出版でした。予約を募って販売する方式で、今のクラウドファンディングの走り(笑)。ハードカバーですが、ほぼ真四角でシルバー色、小ぶりな凝った装幀でした。自費出版は基本的には自分の考え方に沿った本ができるということです。自分の表現を本にまとめたい想いはプロもアマチュアも一緒だし、カタチにしないと何も始まらないと思います。
誰もが良いと言ってくれますけど、基本的には個人の好みですから、半分はお世辞だと思っています。僕は14年前からコーラスを始めたんですが、舞台に立ってそれぞれの合唱団の個性や違いがよく分かるようになりました。写真も同じだと今回あらためて気づきましたね。
■河野和典 写真集『永遠のリズム Eternal Rhythm』
定価:6,000円(税別)
判型:128 頁/ 273 × 227mm /カラー/ハードカバー・函入り / 写真点数98点
※クロネコヤマト宅急便の60サイズでの発送となります。
ご購入はこちらから▶︎https://pctstore.base.shop/items/62144906
河野さんが出演した、MONO GRAPHYでのYouTube番組
前編▶︎ https://youtu.be/7_PaqyZhNzA
後編▶︎ https://youtu.be/bKOKIQ5NJHY
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