top スペシャルレビュー雑誌「写真 Sha Shin Magazine」第2号 発売記念!赤城耕一 ✕ TTArtisan 28mm f/5.6 Mマウント 実写「赤ズマロンをオマージュした小型レンズを味わう」

雑誌「写真 Sha Shin Magazine」第2号 発売記念!赤城耕一 ✕ TTArtisan 28mm f/5.6 Mマウント 実写「赤ズマロンをオマージュした小型レンズを味わう」

2022/07/20
赤城耕一

昨今の色気がまったく感じられないミラーレスカメラ用交換レンズと対極にあるのが、レンジファインダーのM型ライカシリーズのために用意された銘匠光学 TTArtisanのライカMマウント互換の交換レンズ群だ。
 
いずれのレンズもデザインと性能面の両立を目指しており、ライカに装着してもまったく引けをとらない高級感あるデザイン、材質、仕上げ、そして光学性能によって際立った個性と存在感をみせている。

 

ライカM10-P+TTArtisan 28mm f/5.6 Mマウント

 


たとえば、今回紹介する銘匠光学 TTArtisan 28mm f/5.6 Mマウント(以下、TTArtisan 28mm f/5.6)は全体のデザインはかつてのエルンスト・ライツから発売されていたライカスクリューマウントの広角レンズ、ズマロン2.8cm f/5.6によく似ている。ちなみにライツのこのレンズのニックネームは「赤ズマロン」という。
 
レンズ鏡胴の表記の一部に赤色が採用されていたこと、小型軽量、作り込みがとても良いこと、製造本数が少ないことで、後年になり人気になり、このニックネームがつけられたと思われる。

 

街角。28mm画角は肉眼でさらっと見たものを残さず拾うことのできる画角。画面にある要素を写真から検証してみるのも楽しい。コントラスト良好、歪曲収差の補正も完璧だ。絞り設定での性能変化も感じない。
ライカM10-P・絞りF8・AE(1/1000秒)・ISO400・RAW(DNG)

 

 
TTArtisan 28mm f/5.6も、材質は真鍮製で赤ズマロンと同じだ。フォーカシングレバー、絞りのローレットもさることながら、同梱された専用フードのデザインも赤ズマロンの純正フードからの影響を間違いなく受けていて、作り込みや仕上げもたいへん美しい。
 
ライカカメラ社からもこの赤ズマロンと同じ仕様のレンズが近年になり復刻されたが、いかに根強い人気があるレンズかがわかる出来事でもあった。ただしTTArtisan 28mm f/5.6は赤ズマロンの1/5程度の価格で入手することができるので、ライカユーザーなら特別な予算を用意することなく誰でも楽しむことができる。ここがすごい。

 

均質に光の当たる条件では実直な写りをすることがわかる。歪曲収差は皆無である。階調も豊富で、素直な描写が期待できる。28mm好きの人のために常用レンズとしても向いているのではないか。
ライカM10-P・絞りF5.6・AE(1/350秒)・ISO400・RAW(DNG)

 
35mm判カメラの黎明期、往時の技術では、明るい広角レンズの光学設計が難しかったようだ。このため開放F値が大きなものは珍しくなかった。
 
このTTArtisan 28mm f/5.6は現代のレンズなのだから明るいF値にすることも不可能ではないはずだが、あえてF値はそのままに抑えている。これも赤ズマロンへのオマージュなのだろう。ただし往時と異なり、デジタルカメラではISO感度の設定が自由自在になり、F値が大きくてもリスクにはならないので、微量光下の条件でも使いやすい。往時とはまったく異なる認識で扱うことができる。

 

スナップワークに向いたレンズである。ライカに装着すると、ボディキャップのような大きさで携行には苦にならない。コンパクトカメラ並みの機動力で撮影可能。コントラストの強い状況だが、シャドーからハイエストライトまで良い感じの再現である。
ライカM10-P・絞りF8・AE(1/1000秒)・−0.3EV補正・ISO400・RAW(DNG)

 

鏡筒のデザインは赤ズマロンに似ているが、レンズ構成は非なるものである。TTArtisan 28mm f/5.6は4群7枚、赤ズマロンは4群6枚のレンズ構成だ。
 
開放F値の大きなレンズは、設計に無理がないため、光学性能は優秀だろうとする一般の認識があるが、TTArtisan 28mm f/5.6は赤ズマロンよりもさらに光学性能を追求しており、LD異常低分散レンズや高屈折低分散レンズを採用、現代の高画素のデジタルカメラに十分に対応した光学設計となっている。つまり、ここだけは赤ズマロンにはない強いオリジナリティがあるのだ。外観はレトロだけど、光学性能は最新のトップクラスというこの背反した仕様になっているのが面白い。

 

トップライトの条件。屋根のディテール再現、シャドー部の再現まで文句はない。ヌケの良さは現代レンズである証拠。赤ズマロンではこうはいかない。
ライカM10-P・絞りF9.5・AE(1/1000秒)・−0.67EV補正・ISO400・RAW(DNG)

 

ライカに取り付けると、まるでレンズキャップくらいの大きさのレンズにすぎないため、収納性がよく、小さなバッグにも入ってしまう。いつでもどこでもライカと共にありたいという人のためには最高のアイテムだろう。

ライカM10-P・絞りF8・AE(1/1000秒)・ISO400・RAW(DNG)

 
描写性能は繊細さと力強さを併せ持つものだ。赤ズマロンは経年変化のためか、とくにオリジナルのものはコントラストが弱めの個体が多いが、本レンズは開放からしっかりしたコントラストとシャープネスの高い描写を得ることができる。
 
周辺光量は若干低下するが、まるで大切なイメージが四隅からこぼれ落ちてしまわないように、押さえ込んでいるような印象すら感じる。周辺光量の落ち方もどすんといきなり落ちるのではなく、なだらかで品がいいグラデーションを再現するのがいい。
 
ボディキャップと見紛うような薄いサイズ感で、この光学性能は正直驚きのすごいものを感じている。赤ズマロンをリスペクトしているからこそ出来上がったライカMマウント互換の28mmの誕生だ。

 

広角レンズは肉薄して撮るのが基本というけど、緻密な描写をするカメラやレンズを使うと逆に一歩引いた観察眼で物事を捉えたくなることがある。像の形成が強いからだろう。
ライカM10-P・絞りF8・AE(1/1000秒)・−0.67EV補正・ISO200・RAW(DNG)

 

 

 

TTArtisan(ティーティーアーティザン)28mm f/5.6 ライカMマウント シルバー

 


TTArtisan(ティーティーアーティザン)28mm f/5.6 ライカMマウント ブラックペイント

 

ブラックペイントモデルは、使い込むと地金の真鍮が現れる!エイジング加工をしたくなる…。

 

  • 銘匠光学 TTArtisan 28mm f/5.6 Mマウント SPECS
     
    ◉レンズ構成=4群7枚
    ◉最短撮影距離=約1.0m
    ◉絞り羽根=6枚
    ◉フィルター径=Φ37mm
    ◉大きさ・重さ=約Φ51×19mm・約150g
    ◉付属品=角型フード、精密ドライバー(M型ライカ距離計連動微調整用)
    ◉発売=シルバー:2022年2月8日(火)、ブラックペイント:2022年7月5日(火)
    ◉価格=シルバー:47,300円(税込)、ブラックペイント:66,000円(税込)
    ◉取り扱い=株式会社 焦点工房 http://www.stkb.jp ☎052-778-7975

 


 

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