劉碧玲(Pi-Lin Liu) https://www.pilinliuart.com
2026年3月2日〜15日にかけて、新宿にあるギャラリー・プレイスMで写真展「時間紋理」を開催していた台湾人写真家・劉碧玲(Pi-Lin Liu)さんは、これまで世界60ヵ国以上を旅してきた。「歩くことで時間を理解し、見ることで存在を探求する」と話す。本展では時の経過の中で、今あるものの姿をとどめ伝える試みだ。撮影はデジタルカメラで行ない、すべてのプリントは自らプラチナプリントで焼き付けている。
「Photo One 2025」(台北市)のポートフォリオレビューで、プレイスMの瀬戸正人さんに誘われ、日本での初展示が決まったという。プレイスMの会場には、5つのシリーズを展示した。
劉碧玲「時間紋理」@プレイスM(2026年3月2日〜15日)会場風景

その一つが野鳥(コサギだろうか)の巣で、卵が孵化して雛が生まれるまでを捉えている。その場所は2017年に、台北の郊外にある坪林を散策している時、渓流の近くで見つけた。
「それから何度も通いました。卵が奪われたりして、きちんと撮れたのは3年目でした」

「見守る」©︎劉碧玲

「見守る」©︎劉碧玲
16点組のセットを3つ制作したが、すでに2セットは台湾のコレクターが2万ドル(315万円)で購入している。
劉さんにとって、北と南の極地を旅したことが大きな影響を与えた。2018年から数年越しで3度、アラスカを訪ねた。
「年々雪が減り、氷河が少なくなっていた。今在る姿を広く伝えるとともに、未来に残したいと思いました」

「溶けゆく」©︎劉碧玲

「消えゆく白」©︎劉碧玲
見た風景に反応して写真に収める。そしてその写真からもう一度、読み解いていく。
「インクジェットプリントはもちろん、銀塩プリントも学び、サイアノタイプやコロタイプなどさまざまな古典技法も体験しました」
プラチナプリントは2018年から取り組み、プロの暗室職人である曾啓峰さんのもとで学んだ。と同時に、デジタル画像処理技術も習得した。


「プラチナプリントは雲など、白から薄いグレーを描写するのが難しい。グラデーションがきちんと表現できるデジタルネガを作れるまで、2年以上かかりました」
感光体となる薬品をどう調合するか。塗布する技術も難しく、それにも5年ほどかかったそうだ。
「私の写真には静けさと内省的な雰囲気があると感じています。プラチナプリントが持つ質感がその世界観をより引き出してくれる。もちろん適切に保存すれば数百年もつ耐久性も魅力でした」
プリント時には紫外線光源を使うが、スタジオを設計した同伴が、最初の露光機を特注で製作してしたそうだ。

会場にはプラチナプリントによる手製本の写真集も展示されていた。

一つ一つの過程をゆるがせにせず、自ら徹底的に探求する。その姿勢は、劉さんのユニークなキャリアからきているのかもしれない。
学生時代は服装デザインを専攻し、中華民族舞踏の講師やファッションデザイナーとして活動した。結婚後、夫が経営する高級照明ブランドの輸入商社でバイヤーとして働いた。
「プライベートでは20年以上、油彩画を描いていて、欧州各地の美術館を回るのが好きでした。ドイツの美術館で、とても美しいプラチナプリント作品を見ました。5点の小品でしたが、この経験が後の学びにつながっているのかなとも思います」

小サイズのプラチナプリント

「氣候難民」©︎劉碧玲

「現在、未來」©︎劉碧玲
2012年に仕事を離れると、気ままに旅を楽しむようになり、写真を撮るようになった。その翌年から写真家の曾敏雄さんに師事する。
台湾は周囲に無人島を含めて多くの島がある。地球温暖化により今後、そうした島が水没の危機に見舞われないか。
「今、島々が上空からどう見えるのかを見たくてドローンで撮影しました」
ドローン撮影による作品

「人は天に勝てるのだろうか?」©︎劉碧玲
機械は7年前に入手し、台湾国内と、日本でも北海道で操縦法を学んだ。今使うドローンはハッセルブラッドのレンズを搭載したDJIの最新機種で、すでに4台目になる。
2019年からは4人のメンバーとともにプラチナプリントを制作するスタジオ(台北晗光行攝影工作室)を開設。2025年からWHITECROW GALLERYも始動させ、メンバーによる展示を始めた。
今は国内に目を向け、自国の文化や伝統、風景などを撮り始めている。川をたどりながら海へと歩いていく中で、何が見えてくるのか模索中だ。

「時間紋理」©︎劉碧玲
「未来へ目を向けて」©︎劉碧玲
■劉碧玲(Pi-Lin Liu)
ウェブサイト:https://www.pilinliuart.com
Instagram:PHOLENS Photography & Art
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