宮本隆司 「本気にすることができない渋谷」©Ryuji Miyamoto
東京六本木のタカ・イシイギャラリー フォトグラフィー / フィルムで宮本隆司 「本気にすることができない渋谷」が開催される。
- 渋谷川と宇田川が合流する谷底に位置する渋谷は、近年の再開発によりその機能と景観を一新しています。複数の路線が乗り入れる渋谷駅の改修を起点に渋谷スクランブルスクエアや渋谷ヒカリエなどの高層ビル群が開業し、オフィスや商業施設、文化施設が駅周辺に集積するとともに、新たに広場や公園も整備され、公共空間を充実させています。さらにはクリエイティブ産業の歴史的な中心地としてアートやファッションなどの拠点も増加し、若者文化の国際的な発信地として国内外から多くの人々が訪れています。
わたしには、いまの渋谷を表すことばが見つからない。そこで、このとらえどころのない渋谷を〈本気にすることが出来ない都会〉ということばにつなげてみた。スクランブル交差点を囲む建物から発する大音響と広告画像の氾濫。押しよせ流れくる群衆を刺激し現実離れした様相を露呈しつづける、本気にすることができない渋谷。渋谷の都市改造は、未知なる新たな都市の生成を実現するのだろうか。- 宮本隆司
『本気にすることができない渋谷』インスクリプト、2025年、p. 117
これまで建築空間を被写体に変貌する都市の姿を独自の視点で写真に記録している宮本は、変わりゆく渋谷の様相を2020年から25年にかけて写真に収めてきた。本シリーズでは、コンクリート躯体や鉄骨など改修工事が進められるなかで剥き出しとなった構造体をシャープに捉えた作品と、渋谷の街中を往来する多様な人々のポートレートを写したスナップ写真が対を成すように構成されている。
それらは、日々破壊されては新たに組み上げられる都市の構成物質、あるいはそれぞれの目的をもって溢れるように集い離散していく無数の通行者であり、かつてない規模と速度で絶え間なく動き続け流転する、現在の渋谷のありようが写し出されている。
シリーズおよび展覧会のタイトルにある「本気にすることができない」という表現は、T・S・エリオットの代表作として知られる長編詩『荒地』に登場する一句「Unreal City」を吉田健一が「本気にすることができない都会」と翻訳したことに由来する。群衆や大型広告、工事現場といった喧騒がもたらす「本気にすることができない」現実の渋谷は、宮本の写真において時が止められ、静止したイメージとして固定化している。それは現実の渋谷を実体験するのとは異なる次元を生み出し、新たな形で「real」と「unrseal」の狭間で揺れ動く。
- ■展覧会情報
宮本隆司「本気にすることができない渋谷」
会期:2025年11月1日(土)〜12月6日(土)
時間:12:00〜19:00
休廊日:日曜日、月曜日、祝日
会場:タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー / フィルム
住所:東京都港区六本木5-17-1 AXISビル 2F
■プロフィール
宮本隆司(みやもと・りゅうじ)
1947年東京都生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業後、建築雑誌の編集部員を経て写真家として独立。建築物を中心に、都市の変貌・崩壊と再生の光景を独自の視線で撮影。建築解体現場を撮影した「建築の黙示録」(1986年)や香港の高層スラムを撮った「九龍城砦」(1988年)など、その作品は国内外において高い評価を受けている。主な個展に「宮本隆司写真展」世田谷美術館(東京、2004年)、「Urban Apocalypse」Künstlerhaus Bethanien(ベルリン、1999年)、「KOBE 1995 After the Earthquake+」Museum für Moderne Kunst Frankfurt(フランクフルト、1999年)、「建築の黙示録」ヒルサイドギャラリー(東京、1986年)等。主な受賞に第55回芸術選奨文部科学大臣賞(世田谷美術館個展により、2005年)、第6回ヴェネツィア・ビエンナーレ建築展金獅子賞(「KOBE 1995 After the Earthquake」展示により、1996年)、第14回木村伊兵衛賞(作品集『建築の黙示録』『九龍城砦』及び「九龍城砦」展示により、1989年)など。作品の主な収蔵先にサンフランシスコ近代美術館、Deutschen Centrum für Photographie(ベルリン)、東京国立近代美術館など。
【関連リンク】
https://www.takaishiigallery.com/jp/archives/35576/?utm_source=BenchmarkEmail&utm_campaign=FP_2510_SNM_(J)&utm_medium=email#gallery-1
出展者 | 宮本隆司 |
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会期 | 2025年11月1日(土)〜12月6日(土) |
会場名 | タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー / フィルム |
※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。
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