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写真家など関係者約160名が参集。河口湖畔に移転しオープンする計画も。 「清里フォトアートミュージアム 開館30周年記念レセプション」レポート【後編】

2025/09/12
市井 康延

KMoPAガーデンでは10月13日まで屋外展示「写真の森」を開催中

 

 

2025年9月6日、清里フォトアートミュージアムで「開館30周年記念式典」が開かれた。当日は写真家など関係者約160名が参集した。


同館では「ヤング・ポートフォリオ」(YP)を海外に広めるために、1998年にアジア初の国際キュレータ—会議「オラクル」を誘致し、21ヵ国から117名を集めホスト館を務めている。ちなみに東京・恵比寿ガーデンプレイスに東京都写真美術館が総合開館した1995年に、清里フォトアートミュージアムもオープンしている。


98年以降、YPへ海外からの応募が急増したほか、2018年には台湾との交流展につながっていく。台湾美術館でKMoPAのコレクション展「原点を、永遠に。」を開き、清里フォトアートミュージアムでは「島の記憶 1970〜90年代の台湾写真」を催した。2021年にはサンディエゴにも展示を巡回している。

 


 YPのプロジェクトを語った学芸員の山地裕子さん

 


YPは初代館長である写真家の細江英公が発案し実現したプロジェクトだ。
「細江が若いころ、初めてアメリカの美術館に作品が収蔵された時、『世の中が変わるような気がした』と話しており、その体験がYP構想の根底にあります。また『美術館は作品を収蔵することで、作家たちを生涯にわたり支えることになる』とも言っていました」と、同館・学芸員の山地裕子は話す。
 
 


北野謙さん


北野謙は初期作の「溶游する都市」から、人々の肖像を1枚に重ねた「our face」など、61点が収蔵されている。1995年の第1回から2003年まで応募を続けた。


「これから写真を始めて行こうと思っていた時に認められて、とても励みになりました。特に僕は写真学校や美大にも行っていなかったので、写真の世界にいてもいいよと言われたような安堵感がありました」


第1回ヤング・ポートフォリオ展のオープニング・レセプションで、選考委員の一人だった森山大道が偶然、目の前に立っていた。"雲の上の人"と緊張しながら話した内容は今でもありありと記憶していると言う。


「『写真の仕事もやっているの?』と聞かれた。『今は自分のための写真と食べるための写真は全く違うので、時間をかけて近づけていきたい』と答えると、『そのぐらいがいいね。今の人は急ぐから』と言われました」


また館長の細江英公が話した「ここに来れば君の原点がある。だから時々、戻ってくればいい」との言葉も印象深く刻まれている。
「美術館に収蔵された作品は、自分が死んだ後も生き続ける。後世の人たちと作品を通してコミュニケーションができると気づいた時、これは凄いことだと実感しました。若いころにはそれに思い至りませんでした」
 
 


元田敬三さん


元田敬三は1999年から2006年までに4回、YPに収蔵されている。大阪と東京で撮ったモノクロームのスナップショットだ。
ビジュアルアーツ大阪を卒業した1997年に上京。東京校で非常勤講師になった。
「毎年、写真学生の合宿で山梨方面に来ていたので、この美術館にはちょくちょく寄っていました」と元田は話す。


35歳を過ぎた時、久しぶりに自分の収蔵品を目にする機会があった。


「構図やプリントなど、自分が思っていたよりきちんとできていたことに驚きました。過去の写真から、自分が何をやりたいかを改めて教えられた。今は、そのころの写真を追いかけている感じもあります」
 
 


写真家ラファル・ミラフさん(ポーランド)


会場にはYP収蔵作家で、マグナム・フォト正会員の写真家ラファル・ミラフ(ポーランド)も駆け付けた。氏は来年度のYP選考委員でもある。
「最初、地球の反対側で自分の写真が収蔵されたと知った時は、とても気分が良かった。今は応募する若手の写真家たちを見守る立場になり、挑戦することを勧めています」


 
 
移転計画を発表する真如苑・教務長の西川勢二さん
 
また清里フォトアートミュージアムは建物の老朽化にともない、新たに河口湖畔に移転し、数年後にオープンする計画だ。具体的なスケジュールは未定。清里の旧館は解体せず、活用していく方針という。
 
 
 


  • 清里フォトアートミュージアム(KMoPA)
  • ◉開館30周年記念展覧会
    後期 「写真と肖像 顔から風景へ」
    2025年7月5日(土)〜10月13日(月・祝)

  • 1 他者に触れる
    エドワード・S.カーティスブラッサイ森山大道山元彩香渡辺浩徳
     2 私とは誰か セルフポートレイトとジェンダー
    ジョー・アン・キャリスパトリシア・シュワルツアリョーナ・ランダーロワマリー・ヴェングラ−ルー・ユーファン
     3 共同体を生きる
    エメット・ゴーウィン奈良原一高瀬戸正人山本雅紀アダム・パンチュク
     4 ドキュメンタリー
    林 典子G.M.B.アカシュ桑原史成星 玄人/田代一倫
     5 人と風景
    植田正治ハンネ・ファン・デル・ワウデ桑島 生北島敬三ロバート・フランク
  • ………………………………………………………………
     開館時間:10:00〜17:00(入館は16:30まで)
    休館日:7月・8月無休 他毎週火曜日ただし、9/23(火・祝)は開館
    入館料:一般800円(600円)
    大学生以下無料()内は20名様以上の団体料金 家族割引1200円(2〜6名様まで)
    主催/清里フォトアートミュージアム委員会
    特別協賛/真如苑(社会貢献基金)
    〒407-0301
  • 山梨県北杜市高根町清里3545-1222
    電話0551-48-5599
    URL:www.kmopa.com

 

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