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丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で「大竹伸朗展 網膜」が開催

2025/08/20

大竹伸朗 《網膜/門の前》 1989-2024年 ©Shinro Ohtake Photo by Shimpei Yamagami

 

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で「大竹伸朗展 網膜」が開催される。
 
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)では、2013年の「大竹伸朗展 ニューニュー」に続いて12 年ぶりに大竹伸朗(1955-)の個展となる。
 
大竹は1970年代後半より作品発表を始め、ドクメンタ(ドイツ)やヴェネチア・ビエンナーレ(イタリア)など重要な国際展への参加を経て、近年では東京国立近代美術館を皮切りに愛媛、富山へと巡回した大規模な個展まで、国内外での幾多の展覧会を開催してきた。その半世紀におよぶ活動を通じ、圧倒的な熱量が生み出した膨大かつ多様な作品の数々から、本展は〈網膜〉にフォーカスすることにより大竹の作品世界をさらに掘り下げようとするものだ。
 
〈網膜〉シリーズは、1988年に制作の拠点を移した宇和島のアトリエで着想され、1990年代初頭まで集中的に制作されたあとも、他のシリーズへの展開を伴いながら制作が続けられてきた。網膜とはそもそも眼球の最奥にある、光を感受し視神経を介して脳に情報として伝える機能を担う薄い透明の膜ですが、大竹は、廃棄された露光テスト用のポラロイド・フィルムに残された光の痕跡を大きく引き伸ばし、その表面に透明の絵具としてウレタン樹脂を塗布する絵画作品のシリーズに、この名をつけた。
 
分離している「写真像の色面」と「透明の塗膜層」の2つが私たちの網膜を介して脳内で統合され、「時間」と「記憶」を内包した新たな像として立ち現れる。新作の〈網膜〉ではさらなる更新が試みられる一方で、長期間放置され変質した感光剤がそこに蓄積する時間を像として刻印し、透明の塗膜層はその像を幾重にも覆う。未だ見ぬ記憶として、〈網膜〉の発する情景は私たちを揺さぶり続ける。
 
こうして新たに創り出された渾身の新作〈網膜〉12点に加えて、〈網膜〉に音と光を組み込んだ、高さ約3mのレリーフ状の新作《網膜/六郷》(2025)、そして1990年代初頭に制作された未発表の大型〈網膜〉をはじめとした作品群が核となり、構想時のサイズに更新した大規模インスタレーション《網膜屋/ 記憶濾過小屋》(2014)、2010年代半ばから続くグアッシュの連作〈網膜景〉や油彩のシリーズ〈網膜/境〉といった、「時間」や「記憶」を介して〈網膜〉と絶えず往還し続ける作品が骨格となる。
 
本展では、さらに「眼」「フィルム」「写真」から〈網膜〉へと接続する膨大な数の作品をも取り込みながら拡がり続ける大竹の〈網膜〉世界を展観します。MIMOCAでは1991年の開館以来150本を超える企画展を実施してきたが、本展は当館の歴史においても最大規模と密度を有する展覧会となるだけでなく、大竹の現在地を示し、これからの展開を予感させる極めて重要な展覧会となることだろう。

 

新作の制作風景 Photo by Shimpei Yamagami

 

■本展にあわせて創り出された新作〈網膜〉シリーズ12点を展示
1988年、大竹は露光テスト用に使用された後、廃棄されたポラロイド・フィルムを入手したことがきっかけとなり、〈網膜〉シリーズの着想を得て、1989年から1990年代初頭にかけて、〈網膜〉シリーズの制作に集中的に取り組んだ。その後も断続的にこのシリーズの制作を続けてきたが、大竹はアトリエに30年以上保管してきたフィルムを用いて、本展のために新たな大型の〈網膜〉12点を制作した。
ここでは、2024年12月にMIMOCA 館内での制作を経て完成した、新作〈網膜〉の一部を紹介する。

大竹伸朗 《網膜/漠悸》

大竹伸朗 《網膜/碧放射》

大竹伸朗 《網膜/十五重塔》

大竹伸朗 《網膜/段滝》

大竹伸朗《網膜/幕間》

大竹伸朗《網膜/グリッチ・サーフ》

大竹伸朗《網膜/発光ウィルス》

大竹伸朗《網膜/闇港》


■総数300点以上の密度の高い圧巻の展示構成
▼1階エントランス
大竹は1988年に東京から宇和島に制作の拠点を移し、時期を同じくして着想されたのが〈網膜〉シリーズだ。本展で最初に鑑賞者を出迎えるのは、〈網膜〉シリーズの中でも、最初期であり高さ約3m もある平面作品《網膜火傷》(1990)である。

1階エントランス 大竹伸朗 《網膜火傷》1990年 ©Shinro Ohtake
 


▼3階展示室C
メインの展示室では、新旧の〈網膜〉シリーズを一堂に展示する。
まず最初に、本展のために新たに制作された12 点の〈網膜〉シリーズが展示されている。また、大型インスタレーション《網膜屋/記憶濾過小屋》(2014)は、さらに手が加えられ11年ぶりの公開が実現した。
そこから展示室を進むと、1990 年代初頭に制作された未発表の大型作品〈網膜〉や巨大なレリーフ状の最新作《網膜/六郷》(2025)、そして〈網膜〉シリーズから派生し、多様なメディアや形式へと展開した、〈網膜景〉や〈網膜/境〉などの作品が登場する。
平面、立体、インタレーション、音、光や映像に至るまで、大竹の〈網膜〉世界を体感できる。

大竹伸朗《網膜屋/記憶濾過小屋》 2014年( ヨコハマトリエンナーレ2014での展示風景) ©Shinro Ohtake Courtesy of Take Ninagawa, Tokyo / Photo by Kei Okano

 


▼2階展示室A
展示室Cで〈網膜〉の世界を体感したあとは、展示室A で〈網膜〉シリーズの成り立ちや、本シリーズに関連する作品および資料を紹介する。
〈網膜〉と接続が可能な「眼」「フィルム」「写真」といった言葉を糸口に、大竹の幼少期や学生時代の記憶、幅広い制作活動の軌跡を辿る。

大竹伸朗 《網膜/十五重塔》 1989-2024年 ©Shinro Ohtake Photo by Shimpei Yamagami 

 

 

  • ■展覧会情報
    「大竹伸朗展 網膜」
    会期:2025年8月1日(金)~11月24日(月・休)
    時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで)
    休廊日:月曜日(ただし8月11日、9月15日、10月13日、11月3日、11月24日は開館)9月16 日(火)、10月14日(火)、11月4日(火)
    会場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
    住所:香川県丸亀市浜町80-1
    観覧料:一般1,500円(団体割引1,200円、市民割900円)/大学生1,000円(団体割引800円、市民割600円)/高校生以下または18歳未満・丸亀市内に在住の65歳以上・各種障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料
  • *同時開催常設展「猪熊弦一郎展 Since 1955」観覧料を含む。
  • *団体割引は20名以上の団体が対象。
  • *市民割は丸亀市民が対象。チケットご購入時に証明する書類(運転免許証、保険証など)の提示が必要。
  • 団体割引を含み、他の割引との併用は出来ない。

 

■本展オリジナルグッズを多数展開
本展にあわせてデザインされた限定オリジナルグッズが登場。本展タイトルのロゴタイプや大竹のドローイングを再構成したTシャツ、今回の核である〈網膜〉を大胆にカットアウトした靴下やトートバッグなど、〈網膜〉の世界を身につけて楽しめるアイテムが揃っている。さらに、大竹自身が描き下ろした当館オリジナルキャラクター「イノカメグマ」をあしらったタオルや、本展のビジュアルを広く手がけたデザイナー・町口覚によってアレンジが加えられた展覧会ポスターも用意している。〈網膜〉をもとに制作されたグッズを日常に取り入れることで、本展の記憶をより深く刻むことができる。
 
▼Tシャツ 《白目玉》
大竹のドローイングを再構成したTシャツ。
価格:4,400円(税込)
サイズ:M/L/XL(ユニセックス)
素材:綿100%
販売日:8月1日




▼Tシャツ 《黒RETINA》
本展のために作ったロゴタイプのTシャツ。
背面は「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」から、「亀猪熊
美」の4文字を抜き取り、組み合わせている。
価格:4,400円(税込)
サイズ:M/L/XL(ユニセックス)
素材:綿100%
販売日:8月1日

 
▼靴下 《網膜/漠悸》、《網膜上の青》、《網膜/十五重塔》*左から順に。
作品を大胆にカットアウトした靴下。
価格:2,200円(税込)
サイズ:23~ 27㎝
素材:ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン
販売日:8月1日


 
▼タオル《イノカメグマ》
大竹が当館オリジナルキャラクターをイメージして新たに描き下ろした「イノカメグマ」。タオルは特製の紙熨斗袋に入っている。当館1階ミュージアムショップ限定販売。
価格:770円(税込)
素材:綿100%
販売日:8月1日


 
▼ステッカー(6種類販売予定)
大竹の作品をステッカーでも楽しめる。
価格:440円(税込)
販売日:8月1日


 
■イベント
▼ナイト・ミュージアム〈夜間特別開館〉
通常18:00閉館のところ、20:00まで開館時間を延長する。(入館は19:30まで)
実施日:2025年8月2日(土)、8月23日(土)、10月4日(土)、11月8日(土)
 
▼キュレーター・トーク
本展担当キュレーター(中田耕市、古野華奈子、松村円)が展示室で見どころを説明する。
日時:2025年8月3日(日)、9月7日(日)、10月5日(日)、11月2日(日)
各日14:00〜
参加料:無料(別途、本展観覧券が必要)、申込不要
 
■プロフィール
大竹伸朗(おおたけ・しんろう)
1955年東京都生まれ。主な個展に東京国立近代美術館/愛媛県美術館/富山県美術館(2022-23)、熊本市現代美術館/水戸芸術館現代美術ギャラリー(2019)、パラソルユニット現代美術財団(2014)、高松市美術館(2013)、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(2013)、アートソンジェセンター(2012)、広島市現代美術館/福岡市美術館 (2007)、東京都現代美術館 (2006) など。また国立国際美術館(2018)、ニュー・ミュージアム・オブ・コンテンポラリー・アート(2016)、バービカン・センター2016) などの企画展に出展。ハワイ・トリエンナーレ(2022)、アジア・パシフィック・トリエンナーレ(2018)、横浜トリエンナーレ(2014)、ヴェネチア・ビエンナーレ(2013)、ドクメンタ(2012)、光州ビエンナーレ(2010)、瀬戸内国際芸術祭(2010、13、16、19、22) など多数の国際展に参加。また「アゲインスト・ネイチャー」(1989)、「キャビネット・オブ・サインズ」(1991)など歴史的に重要な展覧会にも多く参加している。なお香川県内では、直島、豊島、女木島(女木島は瀬戸内国際芸術祭会期中のみ)で作品を公開している。


  
【関連リンク】
https://www.mimoca.jp/exhibitions/otakeshinro0801/

展覧会概要

出展者 大竹伸朗
会期 2025年8月1日(金)~11月24日(月・休)
会場名 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。

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